翌日、五月三日も何事もなく過ぎていった。不二はジャージ姿のままだった。願掛けというわけではないが、神様としての格好をしていようと思ったのだ。
眠っている国忠の横で、不二は「教育委員会監修・郷土の歴史と文化」を開いて読んでいた。何か役にたつことでもないかとあちこちに目を通す。

今、戦っているんだ…

大丈夫、と不二は自分言い聞かす。義秀も誉めていた。弓の腕は那須の与一以上だと。太刀で切り結んでも誰にも負けないと。
ぱらぱらとページをめくり、朝比奈義秀が討ち死にせずいずこかへ駆け去ったという記述をみつけ、少し気分が上向いた。

和田合戦でも生き延びた義秀が国光の強さを認めているんだ。絶対帰ってくる。

不二は本を閉じ、ポケットに入れた。一緒に入れている携帯が手に触れる。祈るように不二はそれを握りしめた。






その日、五月には珍しく、蒸し暑い夜だった。そよとも風が吹かない。早々に床についた不二だったが、寝苦しさに目が覚めた。
ふと、枕元で何かが青くチカチカ光っているのに気づく。部屋の片隅に一つ、平仄が置かれている以外、真っ暗な部屋で、その光りは異様に鮮やかだ。不二は顔だけ上げて光を見つめた。

メール…?

携帯のメール着信の光だ。ぎくりと不二は体を強ばらせた。枕元に置いた携帯が青い光を発している。ほの暗い灯りしかない館の中で、携帯の放つ青い光は異質だった。

メールだ。

不二の世界と今、繋がっているのか。まだ繋がっていたのか。不二は光を見つめた。チカチカと鮮烈な青が瞬いている。

僕の世界に繋がっている…?

不二は息を詰めて光を見つめた。どきどきと心臓が早鐘を打ちはじめる。不二が思わず身じろぎしたその時、ふっと光が消えた。部屋に再び、闇が降りてくる。暗闇の中で、不二は携帯を見つめ続けた。しん、と部屋は静けさに満ちている。もう携帯に変化はない。
不二はそろりと体を起こした。じっとりと嫌な汗が滲んでいる。、恐る恐る不二は携帯に手を伸ばした。この世界で生きようと、国光の側にいようと決意したあの夜、すべての繋がりは断たれたはずではなかったのか。確かめるのがなにか恐ろしい。それでも不二は携帯の画面を見た。何の表示もない。電源も切ったままだ。

何が起こったんだ…

得体のしれない不安かられ、不二は携帯を握りしめた。

確かにメール着信の光だった…

だが、携帯に何の変化もない。不二は混乱した。不二の世界に繋がったわけではないのか。

それともなにかが起こる前触れ…?

背筋を冷たい汗が流れる。風もないのに平仄の炎がゆらりと揺れた。闇が深い。

国光…

拭いきれない不安に戦きながら不二はまんじりともせず、夜を明かした。


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何がおこったんでしょーねぇ、いやはや、怖い怖い・三択問題。1・何かの前触れ。2・携帯はケロロ軍曹のペコポン侵略兵器だった。3・バー桜シリーズの手塚から励ましのメッセージ。正解した方には、イーヨの熱い抱擁を(だからいらんって。何度もすなっ)