乱暴にアンダーを引き抜かれた。額あても一緒にはずれる。あっと言う間に下の衣類も取り払われた。全裸で横たわるイルカをカカシはじっと見つめる。
「あの時、アンタは綺麗な紺色の着物きてたんだ。夏祭りの明かりに映えて、トンボのかんざしがキラキラしてて…」
カカシはベストからトンボと夏草のかんざしをとりだした。そっとイルカの髪にさす。
「あぁ…」
カカシが蕩けるような笑みを浮かべた。
「アンタは何にも変わってない…」
「カカシ…」
カカシが変わっていないと言ってくれるならもうそれでいい。早く互いを感じたい。
「カカシ…はやく…」
カカシは手早く自分の忍服を脱ぎ捨てた。鍛えられた肢体はしなやかで美しい。射し込む西日に白い肌が朱に染められている。カカシが覆いかぶさってきた。イルカはその背に手をまわす。ひくり、とカカシの背中が大きく揺れた。
「どうしよ、わけわかんなくなりそう…」
神々しいまでに完成された男の口から間抜けな言葉が飛び出す。
「お前、あのときもそう言った。」
どうやら性に関してはあの頃のままらしい。イルカはふふ、と目を細めた。スッとカカシの中心に手を伸ばすと、そこはすでにはち切れんばかりになっている。柔らかく握り込むとカカシが苦しげに眉を寄せた。
「ダメだって、イルカ…」
「わかってる。最初はオレの中がいいんだろ?」
イルカは自分から大きく足を開いた。カカシがイルカの足の間に体を入れ込む。指で慣らすのはあの時教えた。ローションがなければ傷薬の軟膏でも使うだろう。だが、カカシはいきなりイルカの後口に舌を這わせた。
「うわっ…」
驚いて体を起こそうとするが、腰をがっちりと固定されて動けない。ぺちゃぺちゃとカカシは舌で丹念にほぐし始めた。
「やっやめっ…カカシっ。」
じんじんと強烈な快感が沸き起こる。イルカは喘いだ。
「オレ…そんなの教えてない…」
「本でね、」
襞に舌を這わせながらカカシが笑う気配がした。
「勉強したの。アンタを気持ちよくさせたくって。」
それだけ言うとカカシはまた熱心に後ろをほぐし始める。あぁ、とイルカは背をしならせた。舌を尖らせて中を抉ってきたかと思うと、ぺとり、と全体を舐めてくる。たまらなかった。濡れた音が恥ずかしい。
「カカシ、もう…」
体の芯が疼く。欲しい。あのたくましい剛直で貫かれたい。
「あぁ、あぁ、はやくっ…」
我慢できず己のものに手を伸ばすと、やんわりとカカシに遮られた。
「ダメ、オレがするの。」
舐めながらしゃべられると振動が伝わって疼きがひどくなる。あぁん、とイルカは感極まった声をあげた。突然、ガバリ、とカカシが体を起こし、太ももを抱え上げた。
「ごめん、我慢できない。」
言い様、ずぶり、と剛直を突き立ててきた。体を強ばらせたイルカにかまわず、カカシはずん、と奥まで腰を進める。
「あぁーーーっ。」
脳天まで突き抜けるような衝撃にイルカの口から悲鳴があがった。体を痙攣させてのけぞる。その時ひどくカカシを締め付けた。
「うわ…」
腹の奥に熱いものがじわり、と広がる。同時に体を貫いていたものが固さをなくしていった。はぁはぁと荒い呼吸が落ちてくる。衝撃がおさまり、イルカはうっすらと目を開けた。正面にイルカの太ももを抱え上げたまま、カカシが情けない顔をしている。その顔が可哀想で、イルカは両手を差し伸べた。カカシがその手をとり膝の上に抱き上げる。後ろはまだ繋がったままだ。まだ情けない表情の男にイルカは柔らかいキスをした。バツが悪そうにカカシが笑った。
「ごめん、最初の時よりダメだね。」
そういや最初は2回だったな、と思い出し、イルカはくすくす笑いながら男の首に腕を絡ませた。
「でもお前、すぐ復活するし、それに、9年分溜まってたんだろ。」
「なんかフォローになってない。」
啄むキスを交わしながら二人で笑う。くすくす笑いのキスが次第に深くなってきた。ずくり、とイルカの中のカカシが存在を主張しはじめる。
「あ…」
しならせたイルカの背を抱き、カカシが腰を突き上げはじめた。中の熱棒はどんどん固さと質量を増している。
「あっあぁ…」
カカシの動きにあわせてイルカも腰を揺らした。上下に腰を振る度にカカシの出したものが溢れて濡れた音が響く。
「あぁ…カカシ…カカシ…」
もっと激しく、もっと奥まで…
イルカはカカシの背にしがみつき尻をはずませた。抜けそうなぎりぎりまで腰を持ち上げ激しく打ち下ろす。カカシの口から呻きが漏れた。
「カカシィっ…」
限界だ。最奥までカカシを迎え入れたイルカは大きくのけぞり、悲鳴まじりに恋しい男の名を呼んだ。ぎゅっと抱きしめられる。カカシの体に擦り付けていたイルカのモノが快楽の証を噴き出した。同時に中にカカシの迸りを受ける。あぁ、と甘い喘ぎを漏らし、イルカはぐったりと力を抜く。耳元に熱い吐息がかかった。
「まだ足りないよ…」
耳をねろり、と舐められる。
「今からおさらいさせて。」
ゆっくりと体を横たえられた。熱い舌が耳の中を探り、耳たぶを口に含まれる。
「んぁ…」
達したばかりだからか、それともカカシの愛撫だからか、少しの刺激で背筋にじん、と痺れが走る。まだイルカの中におさめたままのものをカカシはゆっくりと動かした。柔らかく縮んだものがすぐに固さを取り戻す。耳をねぶりながらカカシはゆっくりと抜き差しした。じんわりとした快楽にイルカは陶然とした。ゆるゆると腰を回すように中を刺激しながらカカシは耳から頬、首筋に唇を這わす。イルカの肌を撫でさする手は乳首を掠めじらすように上下している。
こいつ、上手くなってるじゃねぇか。
ちょっと癪でイルカは後ろに力をいれてカカシを締めた。カカシが呻いて動きを止める。
「ギリギリでがんばってるんだから意地悪しないでよ。」
やりすごしたらしく、大きく息を吐いてカカシがぼやいた。
「もう、仕返し。」
ずん、といきなり奥を突く。はん、とのけぞるイルカの背を抱きとめ、カカシは腰を激しく突き入れ始めた。
「だめだ、余裕ない…」
一言もらすとがっちり腰を掴んでひたすら突き上げる。イルカは悲鳴をあげた。まるで嵐だ。ただ声をあげカカシに揺さぶられる。それからは愛撫も何もすっとばして、ただひたすらカカシはイルカの中を突き荒らした。快楽のうねりに身を任せイルカはカカシの背にしがみつく。何度も大きな波にのまれ、最奥にねじり込まれた衝撃に目の前が白くスパークして、そのままイルカは意識を手放した。
髪を梳く優しい指の感触にイルカの意識は浮上した。目を開けると見慣れた天井、あたりはもう真っ暗だ。
「目、覚めた?」
「カカシ…」
ぼんやりとイルカは白い顔を見上げる。カカシだ、カカシがいる。優しい顔で笑っている。
「あぁ、いつもの夢か…」
フッ、とイルカは自嘲した。
「夢でしかお前に会えねぇもんな…」
手を伸ばそうとするがだるくてなかなか持ち上がらない。夢なのだから当たり前か。窓から射し込む月明かりに銀髪がキラキラ煌めいている。
「なんか大人の顔になってねぇ?お前…あぁ、そっか、里でお前みかけたから、夢ん中まで大人になっちまったのか。」
オレも結構未練たらたらだなぁ、とイルカは笑う。目の前のカカシの顔が辛そうに歪んだ。あれ、とイルカは思う。
「笑っててくれよカカシ、夢ん中のお前はオレだけのもんだろ?なぁ、カカシ…」
ポタリ、と頬に温かいものが落ちた。え、とイルカは目を瞬かせる。涙だ。色違いの目からポロポロと涙が落ちてくる。ようやく頭がはっきりしてきた。夢じゃない。そうだ、今日カカシが受付にきて、それから部屋で…
「イルカ。」
頬を包まれる。温かい手、現実だ。泣きながらカカシがイルカの顔を撫でる。
「イルカ、アンタも苦しんでたんだね…」
上から覆いかぶさってきたカカシがイルカを抱きしめた。すり寄せた頬が涙に濡れている。
「ごめん、あの時、オレがもっと、ちゃんとつかまえてたらよかったんだ…」
「カカシ…」
震える肩に手をまわし、イルカもカカシを抱きしめた。
「ごめん、ごめんよ…空蝉…」
腕の中の確かな温もり、カカシはここにいるのだ。突然こみ上げてきた嗚咽をイルカは堪えられなかった。
「カカシ…」
ずっと一緒にいて、嗚咽まじりにそう訴えると、痛い程強く抱きしめられた。もう夢から覚めて泣かなくてもいいのだ、現実のカカシが側にいてくれる。
この人の側に居させてください…
カカシの腕の中でイルカは祈った。
もしも神様がいるのなら、いや、人智をこえた何かがあるとしたら、お願いです、もう二度とこの人と離れたくない、離さないでください。
互いを抱きしめながら泣く二人を、静かに月明かりが照らしていた。
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