その13
 
 
 

いったい何なんだ、はたけカカシ。




「おっしず〜、今日はイルカのお手伝いで山に行ってくるよ〜。」

珍しく朝飯の後、ゆっくりと茶をすすっていたカカシがそう言った。

「はへ?」

自分に山へ行く用などない。イルカは目が点になる。

「薬草取りにいかなきゃいけないっていってたでしょ、イルカ。」
「は?あっ…はいっ、はいそーです、その通りですっ。」

足を蹴飛ばされ、イルカは慌てて話を合わせた。お静が台所から手を拭きつつ出てくる。

「どうりで、今朝は家にいると思った。じゃあ、弁当作りましょうね。」
「あっ、静さん、おっおかまいなく。そのっ…」

イルカが慌てふためくと、静がくすくす笑った。

「ほんとに、イルカさん、いつまでたっても遠慮深いんですから。」
「そうだ〜よ、朝飯食った先から何遠慮しちゃってんの。」

茶々入れるカカシを静がペン、とはたいた。

「お前さんは慎みがなさすぎるんですよ、少しは弟様を見習いなさいな。」
「ひど〜、お静〜。」

カカシは静に甘える。端で見ていると、母親に甘える子供のようだ。

「すぐ出るから、お握りだけでいいよ。あ、中身は梅と昆布とおかかね。今朝の漬け物いれて。」
「はいはい。」
「水筒もね、麦茶がいいなぁ。」
「はいはい、わかりましたよ。もう、遠足にいく子供じゃないんですから。」

わっかんねぇなぁ、写輪眼のカカシ…


静にまとわりつくカカシを眺めながらイルカはぼんやり思う。
このカカシが、草としての冷徹な計算だけで女に相対しているとは思えない。だいたい、数ヶ月で姿を消す草ならば、もっと違うタイプの女を選ぶのではなかろうか。しっかりもので分をわきまえ、しかし情の深い、静のような女は選ばない。こういう女は姿を消した後も男を忘れないからだ。
短期の草はもっとふわふわとして都合のいい女を選ぶ。そして、ただ優しかった、くらいの印象しか残さないものなのに、このカカシのインパクトの強さは何だ。


しかも社会生活、しっかり成り立たせてるし…

賭場の元締めや子分ども、置屋に料亭の女将に大店の旦那や使用人達、おまけに団子屋のお光っちゃんと、たった数ヶ月でこの密な人間関係は何だ。いいのか、草がこんなに目立っていて。


まぁ、オレもカカシさんのこと、言えねぇけど…

本名で皆と親密になっている自分は、ある意味カカシよりヤバイ。

でも、オレがこうなったのは全部カカシさんの尻拭いしてたからだ。そうだ、オレは悪くねぇっ。

拳を握って自分に言い訳していると、ひょいとカカシが顔を覗き込んできた。

「イールカ、何一人でぶつぶつ言ってんの。さ、行くよ。」
「わぁっ、ははははいっ。」
「じゃ静、行ってくるね。床に飾る花、取ってきてあげるから。」

静の用意した弁当と水筒、それに薬草を入れる籠を持ってカカシは先に外へ出た。まだ朝早くだというのに、真夏の陽射しは白く街路を焼いている。

「あ、待ってくださいよ、兄上。」

その背を追いながら、写輪眼のカカシでもなく、草をやっているうみのカカシでもない、ただのはたけカカシを知りたいとイルカは思い始めていた。


 
 
 
あーあ、イルカ先生……。だんだんろくでなしカカッさんが気になりはじめちゃいましたね
ほっとけばいいのに、そんな男……こーゆーヤツを躓きの石と……