キャベツとセロリの混ぜたのが嫌い?
そんな話はきいていない。いや、はたけカカシの嗜好ファイルには、キャベツの千切りにマヨネーズと醤油をかけて食べるのが好きとまで書かれてあった。セロリもしかりだ。
「あ…いや…」
海鮮ドレッシングで食べたのがいけなかったのか。やっぱりマヨネーズ醤油でないと。
「そっそれは…」
イルカが不審げに見つめてくる。
「つっ疲れてるからですかね〜、ふっ普段オレ、キャベツやセロリはマヨネーズ醤油なんですけど、たまにはね、ちょっと違う食べ方もいいかな〜、なんて…」
「………最近はセロリ、鰹節かけて酢醤油ばっかりだったのに。」
えーーーっ、そっそうなのかっ、っつか、その情報、イルカどっからっ。
硬直するイズモの横で、イルカはフッと目を伏せた。そしてナスの揚げ浸しの器を押してくる。
「なんで食べないんです。アンタの大好物でしょうが。」
うそぉ、そーだったのっ?
イルカの後ろでは鳩が豆鉄砲くらったような表情の綱手が目を瞬かせている。
「いや…は…あの…」
そっそうですね、とイズモはナスの揚げ浸しを頬張り始めた。なんとか顔には出さないが背中は冷や汗でびっしょりだ。
「カッカカシ、食べてばかりじゃなくてちょっとは飲んだらどうだいっ。」
あたふたと綱手が焼酎の瓶を突き出してきた。
「どれ、コップ貸しな。お湯割りでよかったね。」
そうだ、はたけ上忍は焼酎ならお湯割りだとファイルにあった。ここでそれを強調しておいて損はない。
「ど〜も、すいませんねぇ。火影様に作っていただけるなんて光栄ですよ。」
イズモも必死だ。ここで見破られるわけにはいかない。救いはイルカがかなり酔っぱらっていることか。
「おや、お前も言うようになったじゃないか。」
「はは、そうですか?」
テーブルの上で綱手が焼酎とお湯をコップに注ぎお湯割りを作っていく。
「6:4でよかったね?」
「もちろん、その割合が一番旨いと思いますよ。」
ねぇ、イルカ先生、と言いかけてイズモはギクリとなった。ひどくびっくりした顔でイルカが自分を見ている。
「あっあの…」
「6:4…って…?」
「え…イッイルカ先生?」
今度は何〜〜
イズモはもう泣きそうだ。あの極秘ファイルはカカシの最新情報ではなかったのか。
「あなた、9:1じゃないと飲まないのに…」
知らね〜よ〜〜〜っ
しゃべればしゃべるほど墓穴を掘っている気分だ。というか、事実、掘っている。いったい何がどうなっているやら、綱手はとうに匙を投げたようで、一人で酒を飲み始めているし、イズモはもうどうしていいかわからない。イルカがずい、と膝をすすめてきた。
「どうしたんです、いったい。」
こっちが聞きたい。
「アンタ、変だ…」
酔っている。顔も赤いし目も潤んでいるからイルカが酔っぱらっているのは確かだ。なのにこの妙な突っ込み、このままでは偽物だとバレてしまう。
「う…」
「カカシさん。」
万事休すか、そうイズモが観念した時、黄色い声が降ってきた。
「はたけ上忍、ご一緒してもいいですかぁ?」
「お隣、失礼しまぁす。」
「珍しいじゃないカカシ、飲み会に出てくるなんて。」
「今夜は飲みましょうよ、カカシぃ。」
くノ一の一団がなだれこんできた。いずれも容姿にすぐれた女性達で、イズモはどぎまぎしてしまう。だが今はカカシなのだ。素顔を露にしたままにこり、と笑ってみると、きゃあ、と歓声があがった。
「どうぞ、はたけ上忍。」
巨乳の美女が酌をしてくる。余裕の態度を崩さないようイズモはそれを受け、そしてひらめいた。この女性達は案外助けの女神達になるかもしれない。イルカと一緒に彼女達と歓談すればいいのだ。女と飲みたくない男などいない。それにイルカは今、彼女募集中ではなかったか。
「イルカ先生、先生も一緒に。」
にこやかに声をかけ、イルカを美女達の間に押し込んだ。そして耳元でそっと囁く。
「結構イケてますよ。先生の好みってあの子あたりじゃない?」
巨乳で可愛いタイプをそっとさししめした。イルカの好みは普段の冗談口から熟知している。イズモは絶対の自信をもって言った。
「オレ、応援しますからがんばりましょ。」
バン、と頬が鳴った。
「……え?」
イルカに叩かれたのだ。会場中がシンとなった。
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