すたすたとクラピカは歩いていく。ようやく追い付いたレオリオはクラピカに並んでちらと伺い見た。涼しい顔をしている。未練たらたらでレオリオがぼやいた。

「なぁ、せめてあの紫のサマーウールだけでもよぉ。」
「馬鹿を言うな。あんな贅沢な品、学生には分不相応というものだ。」
「あのくらい、夏休みにハンターカードでちょいとバイトすりゃすぐ…」

くるりとクラピカが向き直った。ずいっと指を突き出す。

「学生の本分は勉学にある。バイトする暇があったら、さっさと医者になれ。」

正論なだけにぐうの音もでない。それでも、もったいねぇ、可愛かったのによぉ、とぼやき続けるレオリオに、クラピカは苦笑いをむけた。

「ならば、もう少し手ごろな店に行こう。」



☆☆☆☆☆☆



レオリオご推薦の手ごろで洒落た店というのは大学へ続く坂の途中にあった。
結構安くていいもんあるんだぜ、と中へ入る。

「ハイ。」

ブロンドの長い巻き毛をかきあげながら女の店員がでてきた。

「よお。」

顔なじみなのだろう。レオリオが口の端をにっとあげて挨拶する。
ゆさゆさと乳房を揺らしながら女はレオリオの側へ寄ってきた。へその上までしかない大きな花柄のタンクトップの下には何もつけていないらしい。

「いいシャツ、はいってるわ。たくましい胸板のあなたならとってもセクシー…」

うふっと艶のある赤い唇が笑みを作る。

「きっと似合ってよ。」

ハスキーな声が舐めるようにからみついた。マニキュアの爪がつつっとレオリオのサマーセーターの前を滑り降りる。思わず口元が弛んだレオリオは背後に視線を感じて慌てて顔を引き締めた。じろっとクラピカが睨んでいる。取り繕うように咳払いをすると、クラピカの肩をぽんぽん叩いて言った。

「今日はこいつの服を選びにきたんだ。なにかいいの、はいってねぇか。」

しなをつくって女はクラピカを見た。色っぽい眼差しでクラピカに笑いかける。

「あらん、とっても可愛くて素敵。弟さん?」
「い…いや、弟じゃねぇんだが…」

クラピカが上目遣いに睨むのでレオリオはしどろもどろだ。

「そぉねぇ、いいのあるわよ。待ってて。」

レオリオに向かって指をひらひらさせると、腰を振りながら店員は奥へ向かった。ぴっちりしたサブリナパンツの腰にまいた銀のチェーンが歩く度にチャリチャリ鳴った。揺れる胸とチェーンについレオリオはへらりと手を振りかえす。クラピカがぼそっと聞いた。

「サイズ、いくらだ。」
「93・60・98ってとこ…」

言いかけてレオリオは慌てて口を押さえた。クラピカから明らかに怒りのオーラが立ち上ってる。無表情なだけよけいに恐い。

「よく御存じだな。お兄様。」
「お兄…え?あ?おっおれ?」
「なるほど、お前がかようわけだ。」
「なっなに誤解してんだよ。」

レオリオが誤解を解こうと焦っているところに店員が戻ってきた。

「ねぇ、これなんかどぉお?あなた、シンプルなもののほうが素敵。」

クラピカにシャツをあてると、指でレオリオをつん、とつついた。

「サイズ違いであなたのぶんもあるわ。どぉ?」


クラピカとのお揃いかぁ…


うっかり状況を忘れて鼻の下がのびた。気付いた時にはもう遅い。店員に鼻の下を伸ばしていると思ったクラピカは、レオリオを一睨みするとにっこり店員に微笑んだ。

「兄のぶんだけお願いします。私はまた今度。」

そしてレオリオの耳元に一言、「何もいらんっ。」と言い捨てるとプリプリしながら店を出てしまった。また来るわ、と店員に声をかけ、レオリオはうろたえながらクラピカを追いかける。

計画は狂いっぱなしだった。本当なら、今頃洋服にかこつけて甘い言葉でメロメロにしてやっているはずなのに。


口説きは粘りと根性だっ。


レオリオは午後のティータイムにすべてをかけることにした。


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み…みじかいっ。いや、なんのこたぁない、ちょっと眠くて力つきただけ。後一回で終わらせよう…ははは〜、今日はもう眠らせてくれ…がくり(力つきた)