紺色のシーツに薄紅色の花弁が散っている。不二が甘く喘いだ。手塚は桜色のエプロンをたくしあげ、不二の胸の飾りを口にふくんでいた。固くなった突起を舌で転がすと不二の体がびくりと跳ねた。すかさずズボンごと全てを脱がせる。

「あっ。」

何か言いたそうに不二が口を開いたのを躯を伸ばして唇で塞ぐ。同時に両手で胸の突起を押しつぶすと不二がびくびく躯を痙攣させた。くちゅくちゅと音をさせて唇を貪りながら、手塚は片手で乳首を愛撫し、片手でシャツを脱がせはじめる。エプロンがはずれないように注意しながら袖をぬきとり、首尾よくエプロン一枚にしてしまった。

我ながらいい仕事だ。

唇を解放し、満足げに手塚は不二を見下ろす。そして、手塚の下半身は雷に撃たれたような衝撃を受けた。

上気した頬、潤んだ瞳で見上げてくる不二。紺色のシーツの上で桜色のエプロンからのぞく白い肌はほんのり色付き、ひどく扇情的だ。そして不二の下半身が押し上げたエプロンのその部分だけ、濡れて濃い桜色になっている。

「…てづか…」

うっとりと呟いた不二の頬をぽろっと涙が一雫、すべっていった。手塚の目の前が白くはじける。

「すまんっ。」

手塚は不二の両足首をつかむと、大きく割りさいた。ベッドの脇においてある潤滑油の瓶を手にとると、性急に不二の秘所にぬりこめる。我慢がきかなかった。慣らさなければ、とわかっていても止まらない。ズボンの前をくつろげただけで、手塚はいきりたったものを蕾に押し当て、ぐっと腰をすすめた。

「あああああっ。」

不二が悲鳴をあげる。だが、どうしようもない。

「い…いたい…手塚…」
「すまん。」

荒い息を吐きながら手塚はぐっぐっと奥へ進んだ。汗が流れて顎をつたい落ち、桜色のエプロンにシミをつくった。

「ひっあぁ…あぁ…」

苦しいのだろう、不二がイヤイヤをするように首を振る。ぱさぱさと茶色い髪がシーツを打った。

「不二、不二、不二…」

手塚は夢中だった。がつがつと腰を激しく打ちつける。奥を抉るように腰をまわすと不二が喉をさらしてのけぞった。いいところにあたったのだ。エプロンから覗く不二のものがフルフルと震えて透明なものを溢れさせている。皺になったエプロンの裾がじっとりと濡れた。手塚は不二の足を肩に抱え上げ、上から突き降ろした。

「あぁっ、いやぁ手塚ぁっ。」

ぽろぽろ不二が涙をこぼして声をあげた。堪らない、頭の中が沸騰する、とまらない、とめられない。手塚は我をわすれて腰をふった。激しい抽送に不二が身を捩らせ嬌声をあげる。ダラダラと溢れる不二のものが、桜色のエプロンに幾筋もシミをつくった。内壁が手塚にからみつき、奥に誘い込もうとする。気持ちがよすぎる。もっともっと、不二の中で感じていたい。しかし、限界が近かった。

「もう…もう…手塚ぁ…」

不二が手塚に向かって両腕を伸ばしてきた。

「不二っ。」

手塚は不二の躯を抱き起こしぐっと最奥へ突き入れた。

「ひぁあああっ…」
「くっ…」

体を震わせ手塚は不二の中に熱いものを吐き出す。同時に、桜色のエプロンに不二の白濁が散った。

白い花びらみたいだな…

それを見て、手塚はぼんやりそう思った。




はぁはぁと荒い息をついてベッドに沈んだ手塚は不二を抱きしめた。

「…その…すまん、乱暴にして…」

不二の腕が手塚の背にまわる。ほぅっ、と耳元で吐息が聞こえた。ずくり、と不二の中で手塚のものがうずきだす。

「…あ…」

感じたのだろう、不二が小さく声をあげた。手塚は不二の中に入ったまま上半身をおこすと、涙に濡れた不二の頬を指で拭った。

「…不二…今度は優しくするから…だから…」

そう、夢中になりすぎて、せっかくの裸エプロン状態を堪能する間もなくイッてしまった。それはもったいなさすぎる。

「だから…もう一回…」

ゆっくりとエプロンの上から手を這わせると、不二が微笑む。手塚はベッドサイドの桜をちぎって不二の上に散らした。

桜色のエプロンを濡らした姿はひどく淫らで、それなのに桜の花びらをまとってうっとりと目を閉じる様はかぎりなく清らかだ。

手塚はまた桜の花を散らした。紺色のシーツに無数の花が散る。夜桜の中で不二を抱いているようだ。桜を散らす、薄紅色の花弁が不二につもる。

「…綺麗だな…」

手塚の声は欲望で掠れた。手を伸ばし、ゆるゆると不二自身をさする。不二が微かに息を漏らした。

「不二…今度は後ろから…」

いいか、と囁いて、手塚は不二の中から己のものを引き抜く。名残惜しそうに絡み付いてくるのが堪らない。だが、お楽しみはこれからだ。

手塚は不二をうつぶせにした。桜色のエプロンひもが素肌になまめかしい。紺色と桜色の上で白く輝く形のいい尻。手塚は陶然とそれを撫でた。あん、と不二が可愛く鳴く。その声が下半身を直撃した。

まだ我慢だ…

手塚はぐっとそそりたったものを不二の背に擦り付けた。このままイクのはもったいない。片手で不二のなめらかな肌を堪能しつつ、桜の枝を壷から引き抜き、不二の上で振った。ちらちら花びらが散る。不二の上に、紺色のシーツの上に。満開の夜桜の中、裸エプロンの不二が艶やかな肢体を投げ出している。

夢のようだ…

手塚はまた壷から枝をとり、不二の上に桜を散らした。

「あ…手塚…」

見られていることに感じるのか、それとも手塚自身が背中を愛撫するのに感じたのか、不二が小さな喘ぎをもらした。ぐぐっと手塚自身がより大きくなる。もう辛抱できない。

「不二、不二…いいか…もう…」
「あ…てっ手塚…」
「不二、不二…」
「手塚っ、ちょっ、これっ、」

なにやら不二が急に焦った声を出した。あわあわと体を起こそうとする。しかし、いれることしか頭にない手塚は気付かない。

「不二…」
「うわっ、何、わぁああああっ。」

今まさに不二の中へ突入せんとした手塚は跳ね起きた不二の後頭部に顔をぶつけた。

「いやーーーーっ。」
「ぐぁっ。」
「手塚のバカーーーーっ。」

わけのわからぬまま、手塚は不二の平手をくらった。そして不二は手塚を突き飛ばし、凄まじい形相で寝室を飛び出して行く。手塚は呆然とその後ろ姿を見つめていた。

「な…なんだ、いったい…」

そそりたったまま放置されてしまった己自身、どうしよう…

何が悪かったのか見当もつかぬまま、がっくり肩をおとす手塚の目の端に、なにやら動くものがあった。

もぞもぞ、うぞうぞ.

「…?」

紺色のシーツの上にはおびただしい桜の花びら、そしてその間を縫うように動く小さな物体…

手塚は目をこらした。そして次の瞬間、ベッドから飛び退った。

「ーーーーーー!!!」

紺色のシーツの上、桜の花びらと同じくらいおびただしい毛虫がうぞうぞ這い回っていた。






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重厚なオークの扉が開いて、入ってきたのは手塚国光、二十五才、テニスのトッププロだ。モスグリーンのスプリングセーターをゆったりと着こなした男は友人達の姿を認めると軽く手をあげた。

「手塚。」
「やぁ、こっちだ。」

ワインレッドのソファに座っているのは、ブラックシャツにネクタイ姿の乾貞治とこちらはライトブルーのシルクシャツを身につけた大石秀一郎、いつものメンバーだ。手塚は二人の前の椅子に腰を降ろす。心なしか肩を落とし、力がなかった。二人はじっと手塚を見つめたあと、ぽつっと呟いた。

「そうか…」
「うむ。」

何も言わなくてもわかる。イヤというほどお互いの状況を理解しあっった。

「途中までは上手くいっていたんだけど…」
「おれもだ。」

手塚の頬には真っ赤にくっきり、不二の手形がついている。鼻の頭も赤くなっている。

「ひどくやられたな…手塚…」

そういう大石の顔には、額から顎にかけて十本の引っ掻き傷があった。

「まったく、あそこまで怒らなくてもいいのになぁ。」

二人はがっくり肩を落とした。乾が口惜しそうに呟く。

「計画にミスはなかった。」

意外そうに手塚が乾を見た。

「お前も失敗したのか?」
「『桜エプロンで桜H大作戦』に関してはね。」

乾は苦々しげに吐き捨てた。

「計画にはミスはなかった。あえていうなら…」

口元が歪む。

「今年の春は例年に比べ、急に暖かくなり過ぎたということだ。」

三人はうんうんと頷いた。そうだ、計画は完璧だったのだ。何が悪いって、暖かい春が悪かったのだ。

「まさかあんなに…」
「ああ、あんなに毛虫がわいていたとは…」

そう、今年の春は例年より暖かかったせいで、いつもなら葉桜の頃にわく毛虫が大量発生していたのだ。そうとも知らず、三人は恋人の上に花びらと一緒に毛虫をばらまいてしまった。

「…毛虫め…」

手塚は頬に手を当てた。

「見果てぬ夢…か…」

大石が引っ掻き傷を指でなぞりながら呟いた。自然とため息も出る。黙りこくった三人の後ろでは、静かなジャズピアノが流れていた。ふと、手塚が顔をあげた。瞳がこれ以上ないくらい真摯な光をたたえている。

「おれは諦めないぞ。」

途中で挫折したとはいえ、煌々と灯る明かりの下、桜色のエプロン一枚で乱れる不二はたとえようもなく艶やかでいやらしく、何よりも美しかった。あんな不二を拝めるのなら、どんなことでもやってやる。 手塚国光、伊達に何年も世界のトップランクに名を列ねているわけではない。不屈の精神こそ、手塚国光たる由縁なのだ。

「そうだ、そうだよ、手塚。その意気だ。諦めるなんてまだ早いなっ。」

大石の瞳にも力が戻った。力強く何度も頷く。大石と手塚が手をとりあわんばかりに頷きあい、決意を新たにしているところへ乾がノートパソコンを取り出した。

「で、提案なんだけどね。次はちょっと変わった攻め方でいってみたいんだ。」

のるかい?と尋ねる乾に二人の表情がぱっと明るくなった。

「さすがは乾だ。」
「うむ、頼りにしているぞ。」
「ちょっとシュミレートしてみたんだが。」

次なる作戦の説明がはじまった。急に元気を取り戻し、熱く語り合う三人の青年達を、店主と常連客達は生温い目で見守っていた。静かな熱気を孕みつつ、春の夜は更けていく。



ここはバ−「桜」、静かに酒を楽しみたい人間と、恋人の悩みを抱えた男達がかよう店、今夜も静かなジャズピアノが流れていた。




余談

「ちょっと失礼するよ。」

作戦会議が佳境に入った頃、乾はトイレにたった。用をたし、鏡の前で眼鏡を外す。乾の右目にはパンダのような青痣がついていた。

「まったく、海堂にも困ったものだ…」

誰にいうともなく乾は呟く。頑固な彼の恋人はやはりノーマルなセックス以外、受け付けてくれない。手塚と大石には余裕を見せてはいるが、その実自分も切羽詰まっている。「桜大戦」もさんざんだった。

「まぁ、あの二人とパターンは同じだから、じっくりデータをとればいいか…」

そしておれも見果てぬ夢をかなえるのだ…

乾はふっと笑みをもらし、眼鏡をかけた。しばらくあの二人で色々な作戦をためしてみよう。今回は我慢がきかず、二人と同時進行で実行したのがマズかった。じっくりゆっくり、確実に実現させなければ。

「良い酒は長い時間かけて熟成、だな。」

己に言い聞かせ、乾はゆったりとした足取りでレストルームを後にする。静かなジャズピアノと仲間の信頼に満ちた眼差しが彼を迎えた。

乾貞治、彼もまた、夢見る男であった。


おわり

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オヤジですね〜、みんな。もうっ、嗜好も思考回路もお・や・じっ。
第一話、終わりです。ってことは第二話があるかって?はい、あります。シリーズです、これ。こないなもん、シリーズにするってどーよ、って、わかってますよ。でも、でも、シリーズにするのっ。オヤジ思考の三人が男のロマン求めて奮闘するのです。
ところで、「オヤジ」な三人が許せちゃうあなた、もし「こういうプレイをためして」っていう御希望ありましたら、メールくださいませね。(さすがに掲示板では…)プレイしていただきます、彼らに。いや〜、イーヨは純情なもんで、はっはっは〜。御希望はお笑い仕様、オヤジテイストでこれからもいってみよ〜〜。