たまらんカップル3

 

 

山に行こうと提案したのは大石だった。

皆で待ち合わせて、電車に乗って、山に登った。
空は曇っていた。朝日を見るのは無理じゃないかと、皆が思った。大石は祈るように東の空を見つめていた。

そして、雲は晴れた。朝日に照らされ、皆で笑いあった。

「朝日だ、朝日だよ〜。」

菊丸がはしゃいで大石に飛びついた。桃城もリョーマを抱え込んでいる。乾も、河村も、笑っていた。

その後ろで手塚と不二はそっと寄り添った。不二が手塚の手に自分の手を重ねた。手塚がきゅっと握り返す。朝日を見つめながら不二がそっと囁いた。

「ねぇ、手塚、まだイーヨの連中、新刊手付かずなんだって。」

手塚がふっと苦笑いする。

「オレ達が両思いになる話をだす予定だと聞いていたのだが、違うのか。」
「それがねぇ。」

不二が手塚の耳元に口を寄せる。吐息がかかり、手塚は思わずごくりと喉を鳴らした。手塚の反応にきづかないのか、不二はますます顔を寄せる。

「ビター&スィートの連載がイベントまでに終わらないから、予定変更でね、『菜の花』の続編をだすことになったんだ。」

はっと手塚が不二を見る。不二は切ない微笑みを浮かべた。

「うん、まだ君が僕の事、意識してなくて、僕だけ片思いしてた頃のお話。」
「不二…オレは…」

言い淀む手塚に不二はにっこり笑ってみせた。

「うん、いいんだ。結局君も僕の事、好きでいてくれたから。」

手塚はわずかに顔を赤くした。

「す…すまん、オレはその…疎くて…」
「君らしくていいよ。」

くすっと不二は笑うと楽しそうに続けた。

「でも、どうするつもりなのかなぁ。痛くて切ない、なんてことはないね。あの連中、基本がお笑いだから。まだ一行も書いてないらしいけど、あと一週間だよねぇ、イベントまで。」

はやく君とラブラブしたいのにな、と口を尖らせる不二を手塚は胸に抱き寄せた。

「手塚、皆がいるよ…」
「かまわん。皆、朝日に夢中だ。」
「…うん、そうだね…」

うっとりと不二は体を手塚に預ける。手塚は愛おしそうにその体を抱きしめた。
抱き合う二人の前方ではテニス部レギュラー陣が昇った朝日を見つめている。

「朝日が昇った、やったね、おーいし〜。」
「ああ、昇ったぞ。」
「昇りましたね、先輩。」
「で、後ろは離れたのか?」
「まだまだッス。」
「………朝日だ〜。」

全員再び、歓声をあげた。そろそろ声に疲れが滲む。

そして手塚と不二は二人の世界に入ってしまった。

「何時までオレら、お日さま見てなきゃいけないんッスかね…」

ぼそっとこぼすリョーマを海堂が睨んだ。

「うるせぇ。つべこべ言わずに太陽見てろ。」

陽は次第に高くなる。 さんさんと朝日に照らされながら、全員心に固く誓った。



これから先、どんなにカドがたつとしても、このたまらんカップルとだけはイベントの類い、参加すまい。



かなり高い位置にある太陽をレギュラー達は引きつる笑顔で眺め続けていた。


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はい〜っ、この時期、新刊に終われて切れてたんですね。ありありとわかります。苦しんでたんですね、かわいそうですね、え?だから、ほれ、こーゆーもんアップするか、フツーって突っ込みはなしってことで。