チョコレート戦争1
 







中忍になって五年、二十一歳の誕生日を迎えたオレは、なんと、あの写輪眼のカカシの下で任務につくって栄誉に恵まれた。ランクはA、オレ以外にベテランの中忍と幻術専門の特別上忍の4マンセルだ。

ぃやったーっ。

任務書を受け取った時、オレは思わず拳を握った。
だってあの写輪眼のカカシだぞ、次期火影の呼び声も高い里の誉れだぞ。大部隊の隊長とかでないかぎり、オレら一般の忍びなんか、絶対に任務一緒になったりできないお人だ。
普段の任務であの方が組むのは、上忍とか暗部とか、そういう実力者ばっかで、まぁ実力者のチームでなきゃこなせないような難しい任務ばっかなんだけどな、要するに、写輪眼のカカシの背中を預かれるくらいの実力者でないかぎり一緒に任務なんて普通回って来ない。例外はあの方の教え子達だけだ。
凄腕の忍びであるあの方は、なんでもえらく子煩悩らしくて、あの方の教え子や、教え子の同期達は、高ランクの任務の合間にマメに面倒みてもらっているそうだ。

うっうらやましい。一緒に任務に出て鍛えてもらえるなんて、なんて幸せな学年なんだ。
そりゃ、あの学年は突出して優秀なのが多いらしいけど、それにしても羨ましい。

でも今回、その他大勢なはずのオレにも幸運がまわってきた。あのはたけカカシと4マンセル、滅多にあることじゃない。オレは嬉しくて上忍師の先生に報告に行った。そしたら先生もびっくりして、それからバシバシ肩を叩いて喜んでくれた。

「よかったなぁ、こんな機会、滅多にあるもんじゃないから、しっかり学んでこい。なんたって写輪眼のカカシっていやぁ、オレ達上忍でも軽々しく声をかけられないお人だからな。」
「え、でも、上忍の皆さんは『カカシ』って呼び捨てになさってるんじゃないですか?」

きょとん、とするオレに先生は苦笑した。

「バカ、呼び捨てに出来んのはあの方のご友人とか直接の先輩、つまり、父君のご友人だった方達だけだ。オレら普通の上忍は「さん」付けしてるよ。権威を笠に着ない方だから、呼び捨てにされて怒るようなことはないけどな。」

そうだったんだ〜。

先生の話を聞いてオレは改めて凄い人と任務をするんだって気を引き締めた。





☆☆☆☆☆




「やぁ、君達が僕の下につく中忍?得意分野何?君だよ、君、あ、体術?若いもんねぇ、体力にものいわせられる人材、一人は欲しいところだったから丁度よかった。で、そっちの黒髪の君は?年は僕と一緒くらいかな。28、あぁ、ほらね、同じだ。じゃあ体術ってことはないよね。え?特にない?そんなはずないでしょ。一つくらい得意なものあるんじゃない?でなきゃこの任務、回ってくるはずないし。」

一緒に組む特別上忍はスッゲー嫌な奴だった。くるくる巻いた金髪を指で弄りながらペラペラしゃべりまくる。っつーか、オレらははたけ上忍の下につくんであって、お前の下につくわけじゃねーよコノヤロー。

「だってさぁ、この任務ってはたけカカシのサポートだよ?それなりにスペシャリストを選抜してるはずだから…え?アカデミーの教師?ふーん、補助要員ってとこか。まぁ、本来ならはたけ上忍のサポートに入るのは僕だけで十分なんだけど、念には念をいれてってとこなんだろうね。はたけカカシっていったら次期火影候補だし、やっぱり守らなきゃいけないじゃない。」

おいおい、誰が誰を守るんだって?まさかおめぇがはたけ上忍を守るとかじゃねーだろうな。

んっとにコイツ、髪もくるくるでオツムの中身もクルクルパーだ。あんまり呆れて、そういや補助要員よばわりされたアカデミー先生はどんな顔してんだろって横目でみたらバッチリ目が合った。先生は鼻の上を横切る大きな傷を指でかいて苦笑している。

「僕は幻術が認められて特別上忍になったんだけど、幻術だけだったら上忍レベルって言われててね、ま、当然っていったら当然なんだけど、朝野一族はいつも優れた幻術使いを輩出している名門じゃない。でもほら、上忍になるには二つ以上の性質のチャクラを扱えなきゃいけないから、あ、別に僕はそれでかまわないと思っているよ。なんていうか、向き不向き?一度はたけ上忍とも任務ご一緒したことがあるんだけどね、幻術だけだったらオレの写輪眼越えてるねってお褒めの言葉いただいちゃってさぁ、や〜、いくら事実でも、一応階級は下じゃない。ちょ〜っとリアクションとりようがないっていうか、はたけ上忍も率直すぎるから対応困っちゃうよね。だってそうです、なんて言えないでしょ?いくら事実で僕が名門の出でもさぁ。」


うぜぇ…


こんなことなら時間通りにくればよかった。写輪眼のカカシとの任務だからって張り切って早めに集合場所にきちまったんだよな。隣の先生もすっかり困り果てている。リアクションとりようがねぇのはこっちだっつーの。

「まぁ、サポートは僕に任してくれていいよ。はたけ上忍直々のご指名だし、君達も大船にのったつもりで安心したまえよ。特にアカデミーの先生、え〜っと、名前、なんていったっけ?」
「うみのイルカです。」

さらりと黒髪の先生が答えた。

「うみの君?うみの先生って呼んだ方がいいかな?君、Aランクなんて久しぶりすぎて不安だろうけど、僕がいるかぎり大丈夫だから。」

なんだコイツ、すっげ失礼な奴、アカデミーの教師になる試験ってめっちゃめちゃ難しいんだぞ。
思わずムッとしたら、ぽん、と肩に手をおかれた。見ると中忍先生が穏やかな顔で微笑んでいる。それからクルクルパーに笑顔を向けた。

「はい、よろしくお願いします。」

わ〜、この人、若いのに人間出来てる〜。さすがアカデミー勤めだけのことはあるよ。親とか里の上層部とかややこしいから、相当バランスとれてないと受からないって聞いてるもんな。
そういや、いつから教師になったんだろ。オレがいた頃はいなかったし、年齢からしたら入れ替わりくらい?下忍になった頃に教師になったのかな。オレは黒髪の先生にぴょこんと頭を下げた。

「あの、よろしくお願いします。」
「いや、こちらこそよろしく。」

年下のオレにもえらぶった態度なんかとらない。いい人みたいでよかった〜。

「うみの先生はアカデミーに入られてから何年になるんですか?」
「先生はつけなくていいよ。ここはアカデミーじゃないしな。」

うみの先生は眉をさげて鼻の上の傷を指でかいた。これって癖なんだ。照れたのかな。

「もう七年になるかな。」
「あ、じゃあ、オレが卒業した年くらいっすね。」
「そうか。もしかしてイワノリ先生のクラスだった?」
「はい、すごく怖かったけど、同じくらいすごくお世話になりました。」
「オレは新任研修でしごかれた。今も怖いぞ、あの人は。」
「うわ〜、そうなんだ〜。この任務終わったら先生に報告しにいこうかなぁ。」
「あぁ、そりゃあ喜ぶよ。いつでも職員室に…」

ごほんごほん、とざーとらしい咳払いが聞こえてうみの先生は口をつぐんだ。金髪クルクルパーはオレ達二人だけで盛り上がったのが気に入らなかったらしい。

「そろそろ時間だ。私語は慎むべきじゃないかな。」

おめぇが言うかっ。

ムッとしたオレを宥めるようにまたうみの先生がぽんぽんと肩をたたく。

「はい、申し訳ありません。」

にっこり笑ってくるくる野郎に謝罪するうみの先生はマジ人間出来てるよ。オレもアカデミー教師目指そうかなぁ、なんて考えてたら、ふっと目の前に銀髪の忍びが現れた。

「おまーたせ。早かったんだねぇ。」

逆立つような銀髪と黒い口布に斜めがけの額当て、わ〜〜〜、はたけカカシだ、本物だ〜〜〜っ。
挨拶するのも忘れてオレは目の前に立つ伝説の忍びをただ見つめた。
すげ〜、やっぱ存在感あるっていうか、雰囲気違う。気の抜けたふりしてるのがまたすげーっ。

「はっはたけ上忍、お久しぶりですっ。」

くるくる野郎がオレの視界を遮ってはたけ上忍の正面に立った。
お前、邪魔っ。

「再び任務ご一緒出来るなんて、光栄です。」
「ん?あぁ、こちらこそよろしくね。えっと…」
「朝野ヒカル、階級は特別上忍ですっ。私は幻術専門でありまして…」
「そう、幻術担当なの。頼りにしているよ。」

はたけ上忍が目を細めて柔らかく笑う。おい、特別上忍、これってゼッテー覚えられてねぇだろ。はたけ上忍、お前の事知らねーじゃん。金髪くるくる野郎がまだ何か言おうとする前に、はたけ上忍がオレ達に目を向けた。

「ダミーの巻物はどっちが持ってるの?」
「私です、はたけ上忍。」

うみの先生がポーチから巻物を取り出した。はたけ上忍の眉が僅かにひそめられる。

「アンタが?アンタ、体術苦手じゃない。一人、体術系を頼んでおいたでしょ。」

あれ?この二人、知り合い?

「彼が体術専門ですが、ダミーは私が持っていて彼は自由に動いた方がいいかと思いまして。」
「作戦を考えるのはアンタの仕事じゃないでしょ、うみの中忍。」

え?なんかトゲトゲしてない?尖った空気にびびってたら、うみの先生は巻物をはたけ上忍に差し出した。

「申し訳ありません、差し出がましい口をききました、はたけ上忍。」

丁寧に頭を下げる。ひゃ〜、はたけ上忍の眉間に皺がよった。っつか、穏やかな先生の声にもなんかトゲない?あるよね、なんか。

「失礼な奴だなぁ、うみの中忍。隊長であるはたけ上忍の命令も待たずに自分で判断するなんて、上官を侮辱するにもほどがあるよっ。」

ここぞとばかりに特別上忍が口をはさんできた。

「申し訳ありません、はたけ上忍。ここは上司である私にめんじて、うみののこと、ご容赦下さいっ。」

なんでお前にめんじるんだよ、くるくる野郎。っつか、マジうぜぇんですけど。

「うみの中忍、ちゃんとはたけ上忍に謝罪したまえっ。」

なんだコイツーっ。はたけ上忍も面食らったような顔になった。

「や、別にたいしたことじゃないから、君、そんなに…ね?」
「いえ、申し訳ありません。私が差し出たことをいたしました。」

うみの中忍が深々と頭を下げる。はたけ上忍は困り果てたって感じで、もういいから、と手を振った。それからオレの方をむくとにこ、と笑う。

「ごめーんね。たいしたことじゃないから。」

わ〜、直接話しかけられちゃった。しかも笑ってる〜。

「予定通り、うみの中忍がダミーを持つ。敵にはさりげなくそうとわからせて彼を狙わせるから、フォローお願いね。」
「はっはいっ。」

いい上官じゃねーかーーーっ。お願いねって、こちらこそお願いしますっ。
はたけ上忍はスッと顔を引き締めた。

「今回の任務はある意味やっかいだからね。目的は新術のコピー。偽の情報につられてその術者が火の国に侵入したのは確認してある。だからオレ達は「写輪眼のカカシが守っている巻物」を敵に狙わせ、術を使うようしむけなきゃいけない。長旅をしてもうすぐ木の葉の里だって気を抜いたところを襲われるって筋書きだから、オレはギリギリまでチャクラ切れのふりして動かない。後は君達の連携にかかっている。よろしく頼んだよ。」
「はいっ。」

オレ達全員、頷いた。
うぅ、かっけー、普通に指示してるだけなのにかっけーな、この人。
くるくる野郎がまた何かおべんちゃら言ってたけど、もうオレはやってやるぜって気合い入れるほうが大事で、アホのことは頭から消えていた。


去年のオンリーの時出したミニ冊子からの再録です。イルカてんてとカカっさん、妙にトゲトゲで若者に心配かけてます。