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憧れの人
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「囲まれたっ。」 鬱蒼とした森の中に殺気が満ちる。 「くそっ、ここまでかっ。」 怪我をした友人を背後にかばい、クナイを構えたうみのイルカは悔しそうに唇を噛んだ。 先の中忍試験に合格した十六歳のイルカは、上忍一人に中忍三人のフォーマンセル任務についていた。イルカを含めた三人の中忍はいずれも合格したばかりの新米で、年の頃も同じ、書状受け渡しの任務は研修の意味合いが強く、さして危険なものではないはずだった。それがいつの間にかこんなことになっている。 隊長の上忍はイルカ達を逃がすために囮となって一人敵中に飛び込んでいった。彼がどうなったのかわからない。イルカ達は必死で里を目指すしかなかった。だが、仲間の一人は深手を負い、気がつくと敵の囲いの中へ誘い込まれていた。四方から殺気が迫ってきている。 「ちくしょう、もうだめだ。」 イルカと並んだ仲間が呻いた。 「オレを…置いて…」 背後にかばった仲間が荒い息の下で言うのをイルカは穏やかに遮った。 「安心しろよ、どっちみち、オレ達もダメらしい。」 悔しいけどなぁ、とイルカが笑うと、もう一人の仲間も諦め笑みを浮かべた。自決用の起爆札を取り出す。 「今までありがとな。」 「こっちこそ。」 息が詰まるような殺気とともに敵が襲い掛かってきた。どうせ死ぬなら一人でも多く道連れに、イルカ達は殺到する敵をにらみつける。そして起爆札を発動させようとしたその時、厳しい声が響いた。 「諦めるな。」 ハッとイルカは手をとめた。目の前に一人の忍が降り立つ。 「諦めるんじゃない。」 銀色の髪をしたその忍はもう一度言うと、敵の集団に相対した。それは鮮やかとしか言い様のない戦いぶりだった。流れるような動きで敵を屠る。あっというまに勝負はついた。累々と横たわる敵の屍の中で一人、銀髪を輝かせた忍が立っている。 「…暗部…」 木の葉の暗部だった。犬の面をしているので顔はわからない。だが、かなり若い男のようだった。銀髪の暗部はクナイの血を払うとゆっくりとした足取りでイルカ達のところへ近づいてくる。思わずイルカともう一人の仲間は後すざった。暗殺特殊部隊など、遠目にしか見たことがない。だが、その暗部は黙ったまま深手を負った中忍の脇に膝をつき手早く応急処置を施し始めた。 「あっあの…」 処置が終わって立ち上がった暗部にイルカは声をかけた。礼をいいたかったのだ。 「あの、ありがとうご…」 「あのね。」 銀色の暗部が口を開いた。 「教科書じゃ自決する場面かもしれないけどね。」 ちら、と暗部が肩越しにイルカ達を見る。 「死んじゃう瞬間まで諦めたらだめなの。生きなさいね。」 「…え?」 思いもかけない言葉にイルカ達は突っ立ったままだ。 「あんた達の隊長だって、自決させるために囮になったわけじゃないんだよ。」 「えっ、たっ隊長はっ…」 「ん、大丈夫。木の葉の上忍、ナメたらだめよ。」 ふっと銀髪の暗部が笑ったような気がした。瞬く間に敵を殲滅させるほどの腕を持ちながら、この忍の纏う空気は穏やかだ。 「じゃーね。」 すらりとした肢体をひるがえし、暗部は木立の上へ跳んだ。木の葉のしじまを縫ってサッと月光が射しこんだ。暗部の銀髪がきらっと光をはじく。その姿にイルカは見惚れた。 イルカ達三人が、助けてくれた暗部が、実は写輪眼のカカシと二つ名で呼ばれる有名な忍だと知ったのは、隊長の上忍と合流した時だった。 写輪眼のカカシ。 その日から彼はイルカの憧れの人となった。 |
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中忍になりたてのイルッちが憧れた暗部カカシさん、はたしてシリアスになるのかお笑いになるのか、乞うご期待っ(って何を期待じゃ…) |
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