たまらんカップル2
「ねぇ、手塚。」
日曜の昼下がり、かわいい恋人が甘い声で自分の名を呼ぶ。
「手塚ってば。」
二人だけの大切な時間。おれがこの一瞬をどんなに愛おしく思っているか、不二、お前は知らないだろう。
「ああ。」
言葉の足りないおれは結局そっけない返事しか返せない。
「ね、新しいシリーズなんだけどね。」
蕩けるような笑顔のお前、そうだ、この間も部室でそんな顔をして、本当に困ったやつだ。
いくらハリケンジャーが最終回だったからといって、無防備にもほどがある。
「なかなか面白くなりそうなんだ。でもねぇ…」
ほうっと憂いを含んだ眼差しが揺れる。
な、なんだ、その、恋煩いしているような目は。
「男の好みがちょっとねぇ。ああ、一甲と一鍬に会いたい…」
ちょっと待てっ、恋人はおれだぞ。なんだ、その…
「彼らがキッと前をみすえて、ゴ−ライジャ−変身って言ってくれないと、一週間が始まった気がしないんだ。」
不ッ不二っ、まさかお前、おれというものがありながらっ。
「ねぇ、手塚、さみしいよ…」
ああああっ、だから、そんなふうに目を潤ませるなっ。
おれは思わず不二を抱き寄せた。不二はぐすっと鼻を鳴らす。そしてまた、悲しげに呟いた。
「さみしい…」
おれはぎゅっと不二を抱きしめ、黙って髪に顔を埋めた。不二の匂いに目眩がする。ゴーライジャーへの嫉妬でおれは身を焼かれるような痛みを感じた。
「不二、不二、不二…」
「手塚…」
おれ達は互いの名を呼び合いながら、ただ抱き合っていた。
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翌日、青学テニス部の面々は、部活の帰りに恐ろしくも奇妙な光景に遭遇した。駅前の玩具屋の店先に、手塚部長が立っている。なにかをじっと睨み付けて動かない。その殺気立った空気に部員達はその場に立ちすくんだ。逃げる事も、声をかける事もできない。と、凍り付いている背後からふいに柔らかい声が降ってきた。呪縛が解かれたように振り向く。そこには不二が微笑んでいた。部員達は掠れた声で助けを求めた。
「不…不二先輩…」
不二はにっこり笑うと、手塚を見やった。そして口を開く。
「よく見ておくといいよ。これが俺達青学の部長、手塚国光だ。」
その不二の瞳から溢れる真摯な光に、再び部員達は動けなくなっていた。
玩具屋の店先には、「10%off、カブトライジャー、クワガライジャー、&バリサンダーセット」が展示してあった。手塚の目線の先を問う勇気のある者がいたかどうかは定かではない。
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あああ〜、ごめんなさいごめんなさい、手塚ファン、不二ファンにケンカうってるよーなこのシリーズ
だから、うちの塚不二はアホなんだってば…でもまだまだ続いている…
