ゴジラ・ファイナルウォーズ



「ゴジラ・思い出のアルバム」

この映画、一言でいうとこれにつきる。



いや〜、出るわ出るわ、思い出の人気怪獣、オンパレード。

ラドンにアンギラス、キングシーサーにカマキラス、クモンガにヘドラ、エビラ。
もう出るたびに拍手喝采。
しかもこの怪獣達、日本だけじゃなく今回、世界の大都市を破壊しつくすのだ。
ニューヨークにはラドンが飛来したし、パリ凱旋門の上にはどどーんとカマキラスがのっかるし、上海のレストラン街をアンギラスが走る走る。

しかも、国連総本部、どうやら設定上、やたら大型怪獣が出るもんで、人類はいったん戦争やめて対大型怪獣の特別部隊・地球防衛軍を創設したらしい。

地球防衛軍、

く〜、泣かせるネーミングじゃねぇか。

で、その地球防衛軍の司令室に、ある日、次々と異変が報告されるのだ。


「ニューヨークにラドン出現っ」
「沖縄にキングシーサーっ」
「アンギラスですっ、上海にアンギラス出現っ」

走る緊張。皆、顔強ばらせて、必死の形相で声張り上げて。

「パリにカマキラスですっ」



ずるっ



いや、カマキラス、君が悪いわけじゃない。当時の低予算で安直な怪獣映画が量産されていた時代に産まれた君が、「カマキラス」などとすっごくわかりやすい名前つけられたのは君のせいじゃあないよ。

しかし、しかしだな…


折しも、国連事務総長(宝田明・初代ゴジラの主演ですわ)の専用機が行方不明って大騒ぎになって、水野久美(前々作のメカゴジラでは首相の役やっていた。その前は南海の大決闘に出てたのだ)地球防衛軍司令官が真っ青に顔強ばらせているところにだよ、ものすごく緊迫した場面でだよ、

「カマキラスっ」

そう叫ばれてもなぁ。いや、いいけどね、カマキラス。


しかもこのカマキラス、ただ単にカマキリでかくしたような怪獣で、アンキロサウルスの変化したアンギラスだの、プテラノドンが変化したラドンだのみたいな、こう、怪獣です、っていうひねりもなにもない。もう、昆虫大決戦かよ、っつーくらい、昆虫しているカマキラス、

いや、いいけど、君のせいじゃないよ、カマキラス。


とにかく、世界中を怪獣達がドッカンドッカン破壊しまくる。なんと海外ロケやったんだと。金かけてきたなぁ、東宝。ロケとセットが上手くかみあって、いい壊しっぷりでした。

シドニーではゲイっぽい二人連れの片割れが転んで、もう片割れが駆け戻って助けようとしたけど、無情にもジラにやられちゃうし。このジラ、あれだね、ハリウッドが制作した駄作中の駄作、コズィラ〜、のパロディ。

この後、ジラはそれこそ本家ゴジラにもう、一撃でノックアウトされちゃって、侵略してきた宇宙人、x星人が地団駄踏みながら「やっぱりマグロ食ってるヤツじゃだめか〜」と嘆くんだけど、そうです、ハリウッドがつくったあのゴズィラ〜、は本家ゴジラに潰されて当然の代物なんです。

あ〜、すっきりした。


それにしても注目すべきは、怪獣達のフットワークの良さ。
かつてここまで身の軽かったアンギラスが、キングシーサーが、ラドンがいただろうか。

そして本家、ゴジラも身が軽い軽い。

ゴジラ対歴代人気怪獣は、完全にお笑いプロレスかよ、って感じで、昔の映画ではゴジラがロックンロール踊ったりスポーツしたり、ってことやってるからそのパロディなんだろうね。今回はサッカーやってました。

ボールはアンギラス、シュートうったのはキングシーサー、で、我らがゴジラはキーパーでね。身が軽いのなんの。後でパンフみたら、怪獣のスーツが改善されて、スーツアクターさんの体にかなりフィットするようになったので、色んな動きが出来るようになったんだそうです。

それ以外の戦闘シーンもお笑いとパロディ満載で、アンギラスガゴジラのお腹にドオーン、と体当たりしてのけぞったところに、後頭部をラドンがヒットするとか、チームプレイでゴジラを翻弄?してました。

それにしてもゴジラの強いこと。

最初東京でジラを一瞬のうちにノシたかと思うと、なぜか突然ニューギニアにいってクモンガをやっつけてるし、なんだかセットは当時の映画にわざと似せたの?っつーくらいすごいニューギニアだったけど、その次の瞬間にはもう日本にきて、舞鶴だったかな、アンギラスとキングシーサーとラドンをまとめてノシて、その後、エビラとヘドラがまとめてやっちゃって(しかも瞬殺)、

でもエビラ、あんたケインコスギに最初、やられてなかったかい、あ、トドメ刺される前に宇宙人が回収したんだった。だから出てきたのか。

人気怪獣ぶちのめしたゴジラが富士山バックに吠えるとこなんて、ファンを泣かせる映像でしたねぇ。


で、最終的にでてきたのが、ガイガンとカイザーギドラ、これ、キングギドラみたいなものね。進化してキングギドラみたいな格好になるの。最初のガイガンは南極であっさり倒しちゃうんだけど、バージョンアップガイガンにはてこずった。だってキングギドラ、じゃないカイザーギドラと二体で向かってくるんだもん。

そしてそして、 あわや、って時にかけつけたのが、なんとモスラ。

モスラ〜やっモスラ〜、アンタ、いつもはゴジラの敵だよね〜

まぁ、宇宙怪獣相手にはそうも言っとれんわな。はい、すっごいスピードでモスラ、やってきました。で、あっという間にやられました。バージョンアップガイガンを道連れにしたからあっぱれ、っていやあっぱれなんだけど、ホント、あっという間だったな…


まぁ、メインイベント、ゴジラ対カイザーギドラの時間を考えたらしょうがないか。これだけの怪獣バトル、よくまとめたもんだと、感心することしきりです。ヘタな監督だったら間延びしただろうに、スピード感あふれる演出で上手いことやってました。大変だっただろうなぁ…



ゴジラと平行してえがかれていたのが、人類に出現したミュータント達とその司令官の物語。監督、マトリックス、やってみたかったんだね。楽しそうでした、皆さん。

最初のX星人のボスはなんと、デスラー総統、伊武雅人だよ。頭、つるっつるに剃って、宇宙人ぽい服着て登場、もう、やんややんや、の拍手喝采。

そしてそのデスラーを撃ち殺してX星人の侵略部隊をのっとるのが、これまたエキセントリックで楽しそうな若造・北村一輝。メイクも派手です。まわりを固めている連中も濃いのなんの。黒い衣装がよくお似合いで。これだけ濃いことやってたら、すっごく不自然なストーリー展開もあまり気にならない。

もともと、特撮ファンっていうのは、ストーリー展開の不自然さや突っ込みどころ満載さ加減に慣れてるからね。これがシリアス映画しかみたことない人だったら、怒り出すこと間違いなし。


アクションはマトリックスやってたり、歌舞伎っぽく日本刀構えて映像美ねらってみたり、とにかくやりたいことやっちゃいました、って感じで、そら楽しい。
ケイン・コスギや松岡君がいかにダイコンでも気にならなくなるくらい、アクション満載でした。だから、半分が松岡君達のアクション、半分がゴジラのバトルって割り振りかな。
アクション楽しいから細かいこと、気にしない気にしないってストーリー展開です、一言でいえば。


それにしてもミュータント松岡、アンタが覚醒してエネルギー、ゴジラに分け与えられるとは思わんかったわ。いやびっくり。カイザーギドラが成体になったら流石に強くて、ゴジラ、やられそうになったのね。そこへ松岡君がエネルギーを乗ってる巨大マシンから放出するわけだ。そしたらゴジラ、いきなり強くなって、あっさりカイザーギドラ、やっつけました。
マジかよ、いや、特撮ですから。はい、納得。

そして恩を仇で返すゴジラは、エネルギーをくれた松岡君達を攻撃して、巨大マシン、轟天号は墜落しちまうわけだ。
せまるゴジラ、絶体絶命、生き残っていた松岡君、ボスのゴードン、この人、K-1ファンなら知らない人いないくらいの有名人なんだそうで、K-1みてないから知らなかったけど、ゴジラを監視する南極隊員もK-1の有名人なんだってね。パンフ読んで初めて知ったよ。
それはそうと、とにかく生き残っていた司令官水野久美、事務総長宝田明、ゴードンの副官(いい味のおじさんだった)、生物学者の菊川怜ちゃん、轟天号から這いだして、ゴジラとにらみ合う。

絶体絶命っ。いや、そう思ってるのは登場人物だけ

みんなもうわかってる。何故ミニラ、あのなつかしのミニラが泉谷しげるとその孫に助けられたか。

そしてやっぱり来たよ、ミニラ

そろそろ、っつーか、顔見た時から、ああ、コイツが最後飾るのね、とまるわかりのミニラ、

途中の山の中で巨大化しちゃってどうやって東京に来たんだろう、とか、道路ズタズタの状態でよく間にあったな、とか、細かいことは気にしない特撮ファン。

そのミニラ、ゴジラと人間達の間に立ちふさがり、両手を広げてみんなを守る。

で、泉谷しげるがゴジラに語りかける。
「もう、許してやれよ、ゴジラ」

もちろん、ゴジラはそんなに甘くないので、人間つぶしたろか、っと不穏な空気をかもしだしたもんだから、さすがに泉谷しげる、猟銃をかまえる。ゴードンは日本刀をかまえる

するとその孫、突然ゴジラの前に立って、つまりミニラの隣なんだけど、両手を広げてゴジラをかばうんだな。

坊ちゃん、日本刀や猟銃じゃゴジラの敵じゃないんだってば、

とか言わない。ここは感動的シーンなの。ガタガタ言わない。感動するのがお約束。


さすがにミニラには弱いゴジラ、なんたって子供だから。なんでゴジラに子供がいるのかとか、お母さんはどこ、とか、ミニラは本当に成長したらゴジラになるのかとか、深いつっこみはなしよ。

とにかく、ゴジラは皆に背を向けると海に向かって帰っていく。ミニラも嬉しそうについていく。一度ふりむいて、孫との別れを惜しんだ後、二体の怪獣は仲良く去っていく。

正面にはでっかい夕日。夕日に向かって帰っていく。どこへいくかは聞いたらダメ。とにかく、真っ赤な夕日とゴジラ、ミニラの後ろ姿が感動を呼ぶのだ。そして振り向いたゴジラ、夕日をバックに一声吠える。



おおおおおお〜っ。
それだけでゴジラファンは涙を絞るのだ。
いいぞ、ゴジラーーっ。




お気楽に楽しく見られるゴジラ映画でした。


ただ、ケイン・コスギの見せ場、作らなきゃいけないのはわかるけど、自爆させなきゃいけなかったのかなぁ。エンタメだろ。

ガンガン街を壊しても、死者やけが人が存在しない作り方したなら、やっぱそれを通さなきゃいかんと思うよ。

金子修介監督が撮ったような、リアルに人の死が迫るゴジラ映画じゃないんだから、やっぱケインを安易に殺しちゃいけないと思う。殺した後は誰も覚えてもいないしさ。松岡君とかぶっちゃうけど、見せ場は他にも作りようがあるだろう。

前回のメカゴジラで特自の隊長さん役やってた高杉亘さんが今回、戦艦火龍の艦長さん役で出ていたのだけど、彼もあんな殺し方していいのかね。

特自のときはストイックだった高杉さんが、今回中国人の艦長さん役で、派手に爆発した髪型がお似合いだったから嬉しかったんだけど、火龍がやられるところを撮る必要があったとしても、死ぬ場面をあんまり強調するのもどうかと思うよ。

だってね、人の死を全くリアルに描かなかった映画でしょ。ウルトラマンやレンジャーもののバトルシーンのように、逃げまどう人々はいても、破壊された建物に潰された人々だの戦闘で酷たらしく死ぬ人だの存在しない映画だったんだよ。

そりゃ、怪獣につぶされちゃったな、っていう演出や戦死した乗組員達もいたけど、そこにリアルな死はなくて、お飾りみたいな扱いだったんだよ。それなのに、ケインと高杉さんだけ、妙に「死」を強調するのは安易すぎるだろう。

まぁ、オタクはそんなこと考えないんだろうけど、子持ちの母親は拘るわけよ。

後々、さりげなくフォローしなきゃいけなんだぞ、こちとら。

「人の死」を軽く考えることのないように、絵空事とリアルの違いを認識させるために。ましてや、「簡単に自爆なんかしちゃいけない」って教えなきゃいけないのだ。

自爆する前に、何か出来ることを考えなきゃいかんのよ。

今回、ケイン・コスギが自爆したおかげで、宇宙人の要塞に入ることが出来たって設定だったけど、他にも絶対やりようがあっただろう。

ミュータント部隊が意味もなく全滅させられたシーンも違和感ありすぎ。

刀抱えてかえってきたゴードン、アンタ、足下で死んでいるのは自分の部下だろう。いくら宇宙人に操られていたとはいえ、部下だったんだよ。この間まで自分のために命かけてくれた部下達なんだよ。

様式美を追求するなら、ミュータント部隊を使うべきじゃなかった。徹底的に人間でないモノ、宇宙人の姿をしたものを使って、「死」として扱うべきではなかったんだよ。どうも、男共ってこの辺りの感覚、鈍いね。

「人」を殺してしまったら、その背景には悲しむ家族や友人達が存在するのだ。もし「人の死」を扱うなら、そこまできっちり感じさせるのが義務だなのだ。もしくは、あっけないほど散っていく命によせて、「死」というものを伝えようとする気概が必要なのだ。それをしないでアクションに始終するのなら「人の死」を扱ってはいけない。物語を盛り上げるためだけの道具にしちゃいけない。

金子修介、手塚昌明、両監督がすごいのは、ここらを十分にわかっているからなのだと思う。その上でエンタメが作れる。前三作が映画として優れているのは、人の生き死にについての描き方なんだと思う。

だから、今回のゴジラ映画は楽しくはあるけど、本質が「オタク映画」の域を脱していないのだ。

悲しいかな、優れた映画の方が観客動員数が多いってわけじゃないんだよね。運もあるだろうし。

細かい知識や、それによって楽しめるパロディの要素も重要だけど、本質的なところで特撮映画監督はもっと認識を改めないと、特撮がオタク受け、もしくは「イケメン好きなお母さん」受けだけを狙っていてはまた尻すぼみになってしまう。かつて、受け狙いに走りすぎて衰退した怪獣映画のように。


本当に楽しい「思い出アルバム」な映画だっただけに、これからの特撮のあり方、少し考えてしまった「ゴジラ・ファイナルウォーズ」

ちなみに全然ファイナルじゃないじゃん。もし、入りがよければまた作るんだろ。こーゆーせこい事、するなよな、東宝。

音楽がELPのキース・エマーソンだって。好きな人なので、結構嬉しかったり。オープニングも楽しかったし。細部まで凝っていたなぁ。それだけに、ちょ〜っとあの安易な流れが気になった。様式美あふれる歌舞伎なんか、「死」を描かせるとかえってどろっどろのねちっこさなんだからな、ちょっとは反省しろ。


ともあれ、ゴジラファンはやはり必見の映画でしょう。
ゴジラファンじゃない人…にはすすめない。あれがゴジラだと思われても、初代が泣くような気がする。

単にアクション映画が好きな人は、北村君のエキセントリックぶりが楽しいのですすめようっ。ケインのアクションもかっこいいしね。ミュータント部隊がエビラをぶったおすシーンなんか、楽しいぞ。動体視力が化け物並みにすごいミュータント達の戦いぶりといい、くっさいキメセリフを吐くケイン君といい。
あ〜、それから、セリフ回しはもう、不自然きわまりないところ、多すぎなので、ヒューマンドラマ好きは絶対みたらダメです。これだけは断言できる。いや、その前に見ないだろうけど。

なんか、けなしとるのか誉めとるのかわからん感想になってしまった。 ただ、次のゴジラ映画は、金子修介監督か、手塚昌明監督に帰ってきてほしいと切望する次第です。
「あずみ2」なんか撮ってないでさ、帰ってきてくれよ、金子監督〜。