ようやく金角が厳窟王15話を見れたんで、心おきなくネタバレ&感想文を書ける!
と言うことで第15幕「幸せの終わり、真実の始まり」



この回、実は3つの大きなエピソードで動いてます。
一つ目は「厳窟王」の真実に近づくフランツの物語。
二つ目はエデの告発劇
まずはこの二つの物語から…。



13話で、リュシアンの手を借りて、内務省のデータベース(国家機密の館ですって、うふっ)に不正アクセスし「厳窟王」の正体を探ろうとするも、機密漏洩の防衛システムにはじきとばされてしまうフランツ。
万策尽きたかにみえた彼にリュシアンは「ノワルティエ老人なら…」とアドバイス。
かつての婚約者の祖父であり、過去に内務省のトップであったノワルティエ氏ならば「厳窟王」に秘められた謎を知っているのではないか、と言うわけで、速攻、ヴォルフォール邸に向かうフランツ。


リュシアン、これで思いっきり男の株を(ワシの中で)上げてます。いいやつじゃん。
12話でアルベールにユージェニーとあえるように手引きしてやったり、ただの熟女好みのタラシ野郎かと思ったらなんて面倒見のいい兄貴でしょう。
ユージェニーの母親との不倫も「これも仕事のうち」とうそぶくあたり、さらりと「オレは汚い大人だけど、大人には大人の世界と都合があるのさ」って感じで、まだお子ちゃまなアルベールに男としての格の違いっつーか、経験の違いを見せつけてましたが、アルベールやフランツを「かわいい弟分」とみてる感じがいいですねぇ。


(ただね、凄く気になったのがデータベースに不正アクセス、まではともかくとして真実を明かそうとしないデータ群に対して次々と勅令を発動させるリュシアン。これって、彼が見た目以上に優秀で、国家機密の条令文を全部暗記してんのか、はたまた四六時中、不正アクセスを繰り返してんのかってコトっす。あんた特記事項まで発令してたじゃん。どうなってんのよ、それ?)


で、フランツ君。ヴァランティーヌやマクシミリアンの元にいるノワルティエ氏に会いにマルセイユへ。
が、生命維持装置につながれ、自分の意志で動かせるのは、眼球だけ、という老人からなにかを聞き出すなんてのはまあ、無理っぽいワケです。
「教えて下さい…厳窟王とはなんなのか」と、ノワルティエに語りかけながら小さくためいきをつくフランツ。
しかし、そのノワルティエの左腕がかすかに震え、はっ、と見守るフランツの目の前でグルグルと回転し、腕がボロっとはずれると、その中から1本の万年筆(!!!!)が!!


このレトロフューチャーな小道具がもう最高!!!


シャ!シャ!シャ!みたいな感じで義手の中から現れた万年筆を紙の上にのせると勝手に自動書記スタート。パスワードを知る者がこのペンを使うコトにより自分(ノワルティエ)にコンタクトをとれる、というメーッセージを残します。
フランツの旅の一番の見所はこの万年筆ですね、彼には悪いけど。


旅に出る前にフランツはアルベールと喧嘩(一方的にアルベールが、自分にかまってくれないフランツに拗ねて絶交宣言「俺たちもう終わりにしようぜ」発言)までしてるんですが、この万年筆デバイスのせいで彼の苦労がどうでもよくなっちゃった!いやーんCG最高!!!!


少しづつ、「厳窟王」の真実に近づくフランツ。



そして同じころ、今までの人生の総決算!みたいな覚悟でエデがアルベールの父、フェルナンの大統領選挙戦演説の会場に登場します。


実はこのエピソード、わずか14歳の少女が生きてきた人生の壮絶さを思うと胸が痛くなるお話なんですが、この回を見た直後、金角から「エデの声って「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんの声の人だよー」と衝撃の暴露があったもんで、もうだめ!!!!!
今となっては、覚悟を決めた表情で会場に現るエデがしんちゃんにしか見えない!後ろにひかえるアリがみさえじゃないかって思えちゃって笑いをかみ殺すので必死です。録画見ながら。


物語的にもこのフランツの旅と、エデの告発(フェルナンの軍人としての出世の基礎を築き美談として語られる辺境宇宙での功績が、実はフェルナンの策略によりエデの父を反逆者として惨殺、ねつ造したものである、という事実の大暴露)が凄く重要なお話なんですが、3つあるエピソードのうち、最後の一つがあまりにもあまりにも衝撃的だったもんでそんな大切なお話なのに、ちゅどーーーーん!!!って感じでブッ飛んでます、ワシの脳内から。








前回、伯爵に甘い言葉を囁かれて(としか、見えなかった)辺境宇宙への二人きりでの旅に出たアルベール君。


巨大な伯爵の宇宙船の、ウルトラ豪華なラウンジできらめく宇宙の星を望遠鏡でみつめながら「つれてきていただいてよかった……」なんてうっとりしちゃってます。



あんたねーーーーーー!!!!!なにやってんの???本当に!!!!
自分の親父と同じ年のおじさまに対して、なにうっとりしてんのよー!!!



しかもこのふたり、おそろいのローブ着てます。今時ペアルック!?

凄いなー、伯爵。だって体の大きさ全然違うモン。あらかじめアルベールの分、用意してたってワケでしょ?この婚前旅行の為に???




しかもこれがなんつーか、15歳の少年と共に過ごすにはあまりにも濃密で退廃的な雰囲気。はっきり言っていかがわしさ全開!!!
水煙草(阿片説もあり)をゆっくりとくゆらせながら、この未来社会ではありえない音響装置(蓄音機!!)で調子っぱずれの音楽を流し、恋の物語を語る伯爵。


………………だめ、完璧です!!!



子供相手にこのシチュエーション!
手抜かり、なんて言葉はこの男にはありえない!



本当を言うと、伯爵の心中は嵐が吹き荒れてたんじゃないか、と思うわけです。
「地球から25光年はなれたここにおいては目にしているその光も25年も前のもの」という伯爵の瞳は揺れています。

25年前、自分がまだ若く、希望に溢れ、美しい婚約者と親友の友情を信じていたあの時。その時の光が今、彼の目の前にある。

その後の絶望と孤独の日々を思うと彼の心がけして穏やかなものではなかったであろう事は容易に想像がつきます。

つきますが………、天然アルベール、ここでも又やらかします。

「宇宙からみれば僕の悩んでいることなんて、およそちっぽけな事の様に思えてきました」


………だってー。まったくもー。この坊やはーーー!


そりゃあんたの今の悩みは「ユージェニーに振られちゃったー」ってーのと「フランツが相手してくんないよー、ぐすん」、この二つだもん。
まあアルベールは伯爵の本心を知らないワケだから脳天気な事、言っててもいたしかたないワケだが隣で聞いてる伯爵の心中察するに余りありすぎです。









「あれを君に見せたかった」といいながら、巨大な船窓から天の川を見つめ、織り姫と彦星の恋の物語を語り始める伯爵。
「ロマンティックなお話ですね(うっとり)」みたいな感じで聞き入ってるアルベール。



だれかこいつらをなんとかしてくれ!!!
見てるこっちが恥ずかしい!!




このときのアルベールの心理状態を考えると、伯爵の口からどんな言葉が漏れようとうっとりになっちゃうんじゃないの?って感じ。



伯爵「ぼんそわ」
アル「(うっとり)」



…………冗談はさておき、もうそれくらい、ゆるゆるのめろめろな感じで伯爵の話を聞いているアルベール。
しかし、その天の川の話から25年前、「自分の友人の船乗り」が親友に恋人を奪われ、無実の罪で投獄され……、という話をアルベールに語りだしてから一変します。


うつむいて伯爵の話を聞きながら感極まってぽろぽろと泣き出すアルベール。
どうして泣くのか、と、訪ねる伯爵に泣きながら
「人の心なんて信じられない……そう思っていたはずなのに…なぜかあなたのお顔を見ていたら…そんな風に…考えてしまうことが…一番悲しい事のように思えて………」


その言葉に胸をつかれる伯爵。


…………これだよ、この純粋さが伯爵の心を揺さぶっちゃうんだよ。


アニメ的にはここらへん、わずか数十秒の場面なんです。
でもね凄い芝居なの。声優の芝居も凄いけど、アルベールの言葉に心を揺らす伯爵の表情とかも凄い。良質のアニメ作品としてぞくぞくしちゃう瞬間です!
アルベールの前では決して本心を表さず、優しくここちよい言葉だけを並べてアルベールを騙くらかしてる伯爵なのに、こういった瞬間、アルベールの純粋さにふれて心をざわめかせてしまう。
アルベールへの愛しさと、憎しみとが伯爵の中で葛藤として渦をまいてるのが見えるようです。(←妄想ですが)




普通はこれだけでも相当(腐女子には)お腹いっぱいです。
ですが・・・・!!!!!
たたみかけるようにネタドラマを作り上げるGONZOスタッフ!こっからが勝負だ!!!



泣きながら感極まってソファから立ち上がり「僕らの友情だけは例外であると信じましょう!」と叫ぶアルベールに応えず、静かに、遠からずパリを去る事を告げる伯爵。
伯爵の突然の別離の言葉に混乱し、どうかパリにいてくれと涙もひっこめて必死に懇願するアルベール。
「それが無理とおっしゃるなら…どうか!僕もお供させて下さい……!僕は貴方から…離れたくない!……」

ってー!!!!ひぇーーーーー!!言っちゃったよーーーー!アルベール!!

しかも伯爵、そんなアルベールに(伯爵的には相当)感情を高ぶらせた声で
「貴方は……そんなに私を想っていると……
「はい!」

即答!!!!即答だよ!!アルベール!!

そんなアルベールの姿を悲しげに見つめゆっくりと目を伏せる伯爵。そして
「情熱は……やがて冷めるものです……」
「そんなことはない……!僕は…僕はあなたが………」



ってあんた達、なに見つめ合ってやってんのよーーーーー!!!!





この時点で、見てるこっちは唖然呆然です!
15歳の少年は、親も友も捨ててこの男と二人生きていくことを熱望してるワケですから。
どこのメロドラマですか?これ??韓流??


初めて見た時は深夜、よくわからん笑い声が上がってました。自分の口から。



ユージェニーへの想いってなんだったの?アル。フランツとの友情って何だったの?アル、と聞いてみたくなりますが伯爵が僕の側からいなくなっちゃう、という事実に恐慌状態のアルベール。


もういろんな意味で濃すぎます!!!


伯爵の復讐心はアルベールの父フェルナンと、アルベール自身にも向けられてるワケです。それを知らないのはアルベールだけ。伯爵自身は無論、見てるこっちもそれは承知です。
伯爵がアルベールルに憎しみの刃を向け、彼を絶望のどん底に(それこそ遠からず)突き落とす事はすでに誰もが知っているワケです。


以前にも書いたけど、この旅がただ、エデの告発の場に彼がいないようにするためだけの旅だとはどうしても思えないのは、この時の伯爵があまりにも純粋なアルベールのその姿に、心を動かされているのが分かるからです。



この、自分に向けられた汚れのない瞳。
美しい信頼。
純粋な愛。



ぜんぶ、これを最後に伯爵が失うことになる、アルベールから与えられた全ての光り輝くものを慈しむように、又、失う悲しみを己の心に封じこめるように静かに伯爵はアルベールに語りかけます。
「いつか…いつか再び同じ質問をしましょう。はたしてその時もあなたは私を想って下さっているか………」




すげーや、完敗だわ。GONZO万歳!






とか思ってたらさーーーー、さらに止めの一撃かましてくれやんの。





太陽系にもどり、船窓から地球をながめながら不吉な予感に顔を曇らせるアルベール。
「なぜそんな不安な顔を?」という伯爵の問いかけに「深く恐ろしい闇の気配を感じる」と伝えるアルベール。
伯爵はすぐに地球に戻るよう勧めます。
地球にもどり、父親の側にいてやるようにと勧める伯爵に、さらに不安をつのらせるアルベール。
そのアルベールの手をきゅ、と握り、とまどうアルベールの心ごと、包み込むかのように自分の両手でそっと包み込む伯爵。そして

「あなたは、ついに全てを知る事になる………」
「これが…お別れになるかもしれません」
そして優しく微笑みながら
「さようなら………………アルベール……………」
と、別れの言葉を伝える伯爵。

「……なぜです…?……僕らだけは信じあおうって………」

振り向きもせずアルベールから離れてゆく伯爵。
伯爵の口から出た別れの言葉が、未だ信じられずにその背中を見つめ続けるアルベール。

だが次の瞬間、伯爵の名を叫び続けながら駆け寄ろうとするアルベール。

そのアルベールに背を向けたまま、アルベールの乗る小型艇と、自分の乗る宇宙船の切り離し装置に手をかざす伯爵。


「伯爵!!伯爵!!!!」
と狂ったように叫び続けるアルベールの前に無情な金属のシャッターがおりて行きます。


伯爵!!伯爵!!!伯爵!!








その叫びについに振り返る伯爵の顔には悲しみにゆがんだ瞳が………。

(凄くいいシーンです、純粋に。腐った脳みそで変換しなくても、二人の思いが切なく見てこっちの胸がしめつけられそうな……)









やがて、切り離された小型艇は、アルベール一人をのせ船を離脱します。

ラウンジの船窓から遠くはなれてゆく小型艇を見つめていた伯爵は、大きくその手を挙げ、うちつけるように自分の顔をおおうと、小さな嗚咽をもらしながらソファの上に崩れ落ちます。



両手で顔を覆い、絞り出すように嗚咽を漏らす伯爵。
肩をふるわせ、堪え忍ぶように声を殺して泣く伯爵………………。


見ている者全ての心が彼の悲しみに胸をふるわせていた…………


その時。







伯爵の声に、静かに、静かに笑いが混じります。













震える肩はそのままに、絶望と狂気の底からわき上がるような笑い声。




ついには耐えきれずに狂ったように笑い出す伯爵!!!
大声をあげ笑い続ける伯爵!
勝ち誇ったように笑い続ける伯爵!
ラウンジの中に彼の悪魔のような笑い声だけが響きわたります!!!





側にひかえ、全てを見つめていた家令のベルッチオですら怯えるようなその狂気の笑いの中、伯爵は叫びます。
戻るぞ!!悪徳の坂へ!!都へ!











……………………呆然……………………………………








この言葉しか出てきませんでした。


ついに、ついに伯爵の、アルベール本人への復讐劇が始まった瞬間です。



30分にも満たない時間で、この濃密なドラマ。
とりあえず夜中、興奮して寝付けませんでしたわ、ワシ。

 

このお話、とにかくまだまだ語りつくせないほどの物語りがつまってます。

いつか又、この物語りについては語ろうかと思います。