最初に。
あー、金角。
ネタバレだからこれ読まんよーに。厳窟王18話、というか17話。
それでは.....
フランツーーーーー!(号泣)
そりゃ、先週から思いっきり伏線は張ってあったよ?
フランツの、アルベールへの愛は、先週のあの光の中の再会のシーンや、伯爵との決闘を決意したアルベールを、(ほとんど叫ぶように)声を荒げて止めようとするフランツの悲痛な表情から、痛いほど感じてはいたよ?
もういちいち、フランツの覚悟が見え隠れするお話がぎっしり詰まりすぎて、見てて胸が痛くなるエピソード満載だった前回の厳窟王17話。
大体ねー、アルベール、君、泣きながら男に縋りすぎ!!!
以前、伯爵の胸にためらいなく飛び込んだアル君。17話では喧嘩中で「俺たち、もうおわりにしようぜ」と、一方的に絶交宣言してたフランツの姿を、光り溢れるセーヌの川辺で見つけたとたん、これまた泣きながら胸の中にどーーーーーん、と......。
あんたって子は.....!
なんでそう天然かね!!
このシーン、フランツの気持ちを思うと切なすぎます。
鼻水までたらしながら泣きじゃくって、フランツの胸に飛び込んで、「ごめんな、お前いっつも俺の事を見ててくれたのに」と声をつまらせながらながらぼろぼろ泣いてるアル君を、フランツ、嗚呼!フランツ、君はなぜ抱きしめる事が出来ない!?
ここがもう、凄い演出で、泣きじゃくるアルを抱きしめようか、どうしようか、と、とまどう左手がかえってフランツの愛の深さを感じます。抱きしめてやりたい、胸の中に閉じこめてしまいたい(←妄想)、でも傷ついたお前をおびえさせたくない.....。ああ、アルベール、俺のアルベール,,,,,,!!!!(腐)
みたいな感じで、結局、そっとその肩に手を乗せて穏やかな微笑みで「鼻水ふけよ」なんて優しい言葉をかけるだけのフランツ。
男や!
あんた男の中の男や!!!
弱り切ったアルの心の隙間につけ込むようなマネはまったくせず、いつも通りの包容力でアルを包み込んであげるフランツ。
男にだまされて傷ついた主人公を慰める、幼なじみの優しい彼。という、メロドラマの定番みたいなのを全部、男だけでやってるって所がまあ、あれなんですが、とにかくついに真実を知った二人がようやく再会。
アル君が知った真実とは、伯爵が自分に見せた信頼と愛情の全てが、偽りのものであった、という事実。
フランツが知った真実とは、伯爵が、愛しい恋人を親友に奪われ、無実の罪をきせられて牢獄につながれた復讐鬼だという事実。
しかしその真実ゆえに、アル君の、伯爵への思いがフランツを苦しめます。
伯爵に決闘を申し込んだ、というアル君(←負けは見えてる試合)に驚き、みすみす殺されに行くようなもんだ!と怒鳴りつけるフランツ。天然おぼっちゃっまアル君、ここでもフランツの思いも知らず、ざっくざっくと彼の心を傷つけるような発言連発。
「親父たちとの間になにがあったかなんて関係ないんだ(←僕だけの伯爵だったのに!)」
「これは俺と伯爵の問題なんだ(←お前はすっこんでろ!)」
そして止めの一撃は
「俺の心を.....弄びやがって.......!」
って、ちょっとあんた!!!
なんですかーーーー???その発言。弄ばれた????弄ばれたと思ってるわけーーー???
しかも絞り出すような声で、頬を紅潮させて.....。
ここらへんがもう天然アル君の真骨頂。
アルにとってもっとも重要なのは「伯爵が僕を裏切った」という自分自身にとっての真実だけなわけです。
そもそも、伯爵がそんな残酷な手段で自分を追いつめる発端となった、25年前の事件や、その後の伯爵の絶望と孤独。愛しい者を奪われる悲しみ、なんかには思いが至ってません。
愛してたのに(僕を裏切った!)、信じてたのに(僕を裏切った!)、僕たちの愛は永遠だって言ってたのに!(僕を...以下略)というわけで、伯爵に心酔しきってたアル君は自分と伯爵の関係がまやかしだったという事実にだけ、心を奪われてます。
強い愛情が、深い憎しみに変わったものの、アルの心を占めているのはモンテ・クリスト伯と呼ばれるその男、ただ一人。
聡いフランツはそれが何を意味するのか痛いほど分かってます。
自分がどんなにアルベールに尽くしても、アルの心を捕まえる事などできはしないのです。
自分の(強烈な伯爵への)思いをフランツにぶつけるだけぶつけて、部屋を飛び出してゆくアルベール。
「待て、行くな!!!行かないでくれ!!!!!」と叫び続けるフランツ。
そして虚脱したまま、部屋の片隅にぺたん、と座り込み、膝を抱えて悲しみを必死にこらえた表情で一人つぶやくフランツ.......
「それでも行くのか.....あいつの所へ.....!!」
もう切なすぎます、フランツの純愛!!!!!
その後のフランツの行動が、全て18話への伏線なのだが、これが又、見ていて辛い。
この段階で、「あーこれ、フランツ、アルベールの代わりに決闘に行っちゃうなー、絶対」ってのが見えるワケです。しかも死を覚悟して。
ユージェニーにアルベールに渡してくれるよう、手紙を託したり、決闘前夜だってのにアルベールと酒飲んだり(まちがいなく泥酔させて、決闘に行かせない魂胆が見え見え。でも気づかずに酔っぱらっちゃってるアル君。天然,,,,.)
さらに18話で明らかになった事実では、一服盛ってまんがな、フランツ。念には念を入れて。
この決闘、ある意味アルベールの自殺を意味します。
明らかに実力に差があるだけでなく、アルベールを殺すことにためらいのない(というか、むしろ自分の手で殺したい)伯爵と、自分を「弄んだ」男への憎しみだけで戦おうとする、自暴自棄なアル君とでは戦う前から決着ついてるようなもんです。
ここで伯爵について、ちょっと考えてみると、これがもうアンビバレンツな感情に本人自身がふりまわされっぱなし、という感じでなかなか大変そうです。
そもそもこの話、有能で将来に夢も希望もあり、人もうらやむ美しい婚約者をもった男が友と信じてきた者に裏切られ、絶望の果てに厳窟王と成り、25年の歳月を経て始まった復讐劇なわけです。
アルベールという存在は自分を裏切った男と、自分を信じかなった女の間に生まれたもっとも忌むべき存在として伯爵の目には映っています。
だからこそ、彼はアルに甘言を吹き込み自分に骨の髄まで溺れさせてから裏切る、という残酷な方法でアルベールを追いつめてゆきます。
が、しかし。なんつーか、ここらへんがアンビバレンツな所なのだが、伯爵のアルベールへの感情がどうも憎しみだけではないように思えてならんのよ。
アルベールの天然振りは、そりゃもう随所で、見てるこっちがこめかみを押さえたくなる位、純粋なわけだが、これは彼が全てにおいて満たされた存在であったからこそです。
裕福な貴族の子弟として生まれる、という経済的な豊かさは無論、(少なくともアルにとっては)強く、真っ正直で誠実な父と、社交界の花と謳われながら家庭では家族への深い愛情を注ぐ、優しい母に全身全霊で愛されて育ってきてるわけです。
さらに自分を支えてくれる大親友(あくまでもアルにとって)と、愛らしくまっすぐな性格の幼なじみでもある婚約者という友にも恵まれ、「逃げ出したいほど退屈な日常」を営んでいた15歳の少年、というのがアルベールの立場です。
彼の世界には憎しみや、絶望や、欺瞞はありません。
そんなものが入り込む余地などないくらい、満たされた光輝く世界の中に生きてきた少年。
そりゃ、天然にもならーな。
そんな少年に近づき、傾倒させてゆく伯爵の手管は結婚詐欺師さながらなわけですが伯爵、自分に向けられる愛情を単純に「愚かな少年」としてほくそ笑みながら受けていたワケでもなさそうなんですな。
この人、根は善人です。
疑う事を知らず、それゆえに裏切りの果ての絶望は、海より深く、山より高くなっちゃったワケで、だからこそ25年も復讐心を燃やし続けてきたとも言えるのだが、純粋に自分に愛情を向けてくるアルベールに愛しさと、そしてやがては彼を傷つけ、裏切る事に悲しみを覚えていたとしか思えんのよ。
だってねー、この人、言ってる事とやってる事がちぐはぐすぎるよ。
アルベールを「裏切りの果実」と呼び、真実を知ってもなお、自分への疑いを持てずにいるアルを「愚かな少年よ」と揶揄する伯爵の行動は、その言葉とはあまりにも裏腹。
なぜヴォルフォールがアルに銃口を向けたとき、自らが銃弾をおってまで、助けようとしたのでしょう?
しかも貫いた弾は心臓にまで達し、伯爵、死にかけてます。
そしてアルを救うために飛び出した伯爵の行動は、ほとんど衝動的というか、まったく無自覚のままアルを助けようとしたとしか思えない行動です。
この時点で、アルベールの役目、というか利用価値はとっくに終わってるはずなのに、です。
さらにアルの父、モルセールの選挙戦出馬の演説会当日、なぜ伯爵はアルと二人きりで旅に出たのでしょう?
アルがその場にいようがいまいが、エデがモルセールの晴れの舞台で、大告発劇をやらかす事にかわりはないわけで(エデのモルセールへの憎しみは、たとえ好意を持っているアルベールがその場にいてもゆらぐものではなかったはずです)わざわざ、彼を地球から引き離さなければならない理由が分かりません。
やがてアルベールが知る事となる真実。
自分をとりまく光に溢れた美しい世界が、虚栄と欺瞞、さらに伯爵やエデの絶望の上に築かれたものであるという事。
そして、自分が復讐鬼として彼の前に姿を現し、彼を謀っていたのだという現実を前に、アルベールが変わらぬ愛を捧げてくれるとは伯爵は思ってはいないはずです。
だからこそ、まだ純真な瞳で自分を見つめるアルベールとの最初で最後の旅をしたんじゃないだろうか。
(いや、相当、夢見がちな解釈だってのは、突っ込まれなくてもワシが一番自覚してますって)
アルベールを見つめる、悲しむ様な、いたわる様なまなざしの全てが、伯爵の策略であったとは思えないのです。
なによりも伯爵がただの冷徹な復讐鬼ではない、と思わせる存在がエデです。
確かにエデには利用価値があります。
モルセールの不正を知る生き証人であるところのエデを彼が手元に置き続けたのは、それが切り札となりモルセールを失脚させるためにもっとも強力な武器となる、と分かっていたからです。
でもねー、そんな理由で手元に置いていた子供が、あんなにもたおやかで心根の優しい少女に育ちますか?
4歳の時に父を殺され、母に目の前で自害され、絶望の果てにあったエデを、伯爵は大切に、大切に育てたはずです。今はその地位を持たずとも、本来であれば彼女があった立場であるはずの「小国の姫君」として愛情を注いで育てたにちがいないんです。
ただ「利用価値」というだけでエデを育てたのであれば、エデにモルセールへの憎しみを植え付け、悲しみをあおるように育てていたはずです。
しかし、エデはその告発が正当なものであったにもかかわらず、深い自責の念に泣き伏します。
それほどまでに優しい彼女の清らかな魂が、憎しみと狂気だけで生きる復讐鬼によって育てられた。とは思えないんですよねー。
伯爵はそのエデの信頼すらも裏切るような言葉を発し、アルベールを挑発します。
しかし、伯爵がどんなに残酷で冷たい言葉を吐いても、エデやアルベールに対しての、彼の行動がその言葉をいちいち裏切ってます。
凄まじいまでの憎悪と、深く強い愛情。その両方を伯爵はアルベールに対して抱いているとしか思えません。そして伯爵を見つめるアルベールの無垢なまなざしは、彼が失った全てをもって生まれた彼だからこその純粋さ、なのです。
全てをアルベールに伝えたのち、一人静かに伯爵が流していた涙の意味が知りたいです。
アルベールの愛も、憎しみも全て奪い尽くして伯爵はアルベールとの決闘に挑みます。
そして、ここに、伯爵よりも深くアルベールを愛するフランツの存在があります。
姿の見えぬ鎧をまとい、伯爵と戦うフランツ。彼の目的は伯爵の死、のみです。
それが愛情であれ、憎しみであれ、アルベールの心の全てをつかみ取ってしまった伯爵。
その伯爵の手によって、今、最愛の人が自殺行為のような決闘に挑もうとしている。
フランツにとってはあまりにも耐えられない現実です。
こっから先はもうあんまり書きたくないんだ。
思い出すだけで胸が痛い。
自分の命を投げ出してでもアルベールを守り抜こうとするフランツ。
またさー、CGがかっこいーんだわ、腹立つけど!
ここ(GONZO)の小道具の使い方ってのが、なんてーの?80年代サイバーパンク直系の系譜でさー、脳にアクセスする万年筆(の型のデバイス)とか、身体機能の拡張装置として外部装甲(ロボ鎧)、とかいちいちワシのツボ!そのギミックをフルに活用して、残酷な殺戮劇が展開されるわけです。
アルベールが装着してる、と、信じてる伯爵は、鎧をズタズタに切り裂いてゆきます。アルベールへの憎しみと愛の全てを込めて彼に対峙してる伯爵。
もはや決闘なんてお上品なもんじゃありません。ただの虐殺です。
フランツは、無論、アルベールに死なれたくない、という気持ちもあるだろうけど、それよりもなによりも、この愛憎渦巻く魂のぶつかり合い、ってのが許せなかったんじゃないかなー。
許せないって言葉はちょっと変なんだけどね。
だってさー、蚊帳の外っすよ、フランツ。あんなにアルベールの身近な存在として彼の側にあったってのに。
何度もいうけど、それが憎しみでも愛情でも、強い感情で相手を思う、という事は相当のエネルギーが必要です。他の事は、目に入らなくなっちゃうくらいにね。
それがフランツには許せなかったんじゃないだろうか。
たとえ自分が死んでも、伯爵を道連れにできるんなら本望。アルベールの心はお前には渡さない!!
そこまでの覚悟でフランツは伯爵と戦ってます。
そして実際、その実力の差と、呵責なき殺意によってフランツは命を落とします。
さらっと、「フランツは命を落とします」なんて書いてるけどそんな簡単な言葉では表せない物語があの数分の間に詰め込まれてたんですが、あーやっぱ、ちょっと冷静な気持ちであのシーンを回想できません。
凄まじい展開をみせるこの物語。
キャッチコピーの「救いなんていらない.....」という言葉が、最終回のキーワードになりそうで怖いです。
来週....アルベールどうなっちゃうんだろう.....。
そして伯爵は?エデは?
もう少し冷静な気持ちになれる時がきたら、ギロロ伯爵としんちゃんエデの話でも書こうかと思います。