オレの恋したその人は、いつも背筋をピンと伸ばしている。黒い瞳は澄んでいて、まるでその人の心の鏡のよう。明るい笑顔と心地よい声、いつもオレは物陰からひっそりと彼を見つめる。だってオレは、彼の真っ直ぐな瞳の前に立つ勇気がないから、彼に疎まれたくないから…



忍なんてもんは、どこか壊れた連中だらけだ。

一見まともそうでも、皆それぞれ、歪みをどこかに抱えている。それは忍として階級があがればあがるほど大きくて、オレなんか写輪眼のカカシだの里を代表する忍だのともてはやされているが、中身はろくなもんじゃあない。そんなオレにも、上忍師なんてまともな役目が回ってきた。

アカデミーを出たばかりの子供達と接するのは新鮮だった。オレだって日の光の中で何かを育てることができるのだと嬉しかったし、なにより子供達が可愛くてたまらない。カカシ先生、と呼ばれるたびに、なんだかくすぐったいような気分になる。オレの先生、四代目もこんな気持ちだったのかなぁ、などとしんみりして、先生と同じポーズで写真を撮ってみたりもした。

受け持った子供達のうち、二人はずいぶん訳ありで、背伸びして虚勢をはったりひねくれてみたりと色々だが、どちらも心根が真っ直ぐで気持ちよかった。紅一点の女の子はおませだが優しい子で、これほど個性豊かな子供達を真っ直ぐに育てた教師とはどんな人だろうと興味が湧くのは自然だった。そしてオレはその人に会ったのだ。うみのイルカ、その人に。



うみのイルカはオレより一つ下の二十五歳、背丈もオレとほぼ同じくらいで、黒髪を頭のてっぺんで一括りにした好青年だ。いつもは穏やかで落ち着いた雰囲気だが、二カッと笑うと悪戯小僧のような表情になる。中忍だというのに気性は真っ直ぐで、相手が誰であろうと、たとえそれが里長であっても物怖じせず思った事をズバズバ言った。だからといって、けして礼儀知らずなわけではなく、普段は実に控えめだ。彼がはっきり物事を主張するのは、それが必要だと信じているからなのだろう。

初めて会ったときから、オレは彼に惹き付けられた。

そのきっぱりとした気性に、穏やかな空気に。気がつくとオレはいつも彼を目で追い、それが恋なのだと自覚する頃には、もう自分でも手がつけられないほど彼に溺れていた。

『イルカ先生』

オレの生徒達はそう彼を呼んだ。
イルカ先生…なんて甘美な響きだろう。

オレは口布の中で小さくその名を転がす。ゆっくりとその響きを味わう。

だけどオレは今まで、その人の名を呼んだことはない。邪な恋心を抱くオレに彼の名を呼ぶ資格はない。だから、下忍任務の報告書を出す時だけが、彼の側に寄る事の出来る唯一の時間だった。彼はオレの姿を認めるとにこ、と笑ってくれる。

オレは彼の大事な教え子達の担当上忍だから。報告書を出す時、あれこれと話しかけてくれる。大事な生徒が心配だから。だが、オレはそれでもよかった。彼とわずかでも話ができると、その日は天にも昇らんばかりに高揚した。それなのに、中忍試験で彼とぶつかった。ひどい言葉で彼を傷つけた。彼は純粋に生徒達を心配しただけだったのに。

試験の後、彼は自分が間違っていたと謝りにきた。オレの心ない態度や言葉を責める事もなく、彼はとても潔かった。だのに、オレときたら、緊張のあまり素っ気ない態度しかとれず、それ以来彼がオレに話しかけてくる事はなくなった。

もとより見込みのない不毛な恋だ。だけど、諦めるにはあまりにもオレは彼に執着していて、だからひたすら、オレは彼を見つめた。
気配を殺し、姿を隠して彼を見つめた。オレに気付かぬまま、彼は笑う。同僚や生徒達、上司や友人と笑い合う。顔をしかめてみたり、照れてみたり、本当に彼は表情豊かだ。そしてそのどれもがさっぱりとして男らしかった。

そんな人だから、イルカ先生はよくもてる。女はもちろん、男からも告白される。その度にオレの心臓はギュッと握りつぶされる。オレの目の前で平然と彼に告白する連中、くびり殺してやりたい衝動を必死で押さえ、暗い憎悪を込めてその様を見つめる。もちろん、気配は完全に殺しているから、イルカ先生にも彼に告白している男や女にも気付かれる事はない。ただ、それだけオレの身の内には、行き場のない暗い感情が淀んでいった。

一つ救いなのは、イルカ先生が告白にこたえたためしがないことだ。
相手がどんな美女でも、魅力的な男でも、イルカ先生は頷かない。いつもまず、困ったように眉を下げ、それから相手の目を真っ直ぐに見つめて断りの言葉を口にする。そして必ず『ありがとう』という。その態度は誠実そのもので、なのに有無を言わせぬ雰囲気があり、たいていの男女はそこで引き下がる。
『ずっと好きでいさせてください。』だの『ひっそりとこの気持ちを抱いています』だのぬかす輩が多いのにはムカツクが。不思議なことに、どんな乱暴者でも、イルカに告白するときにはしおらしかった。下位の者に無体を働くので有名な上忍ですら、イルカ先生に断られてすごすごと引き下がる。
これもイルカ先生の人徳なのだろう。流石オレの惚れた人だ、と内心誇らしかった。だが、そんな素晴らしい人なのだからますますオレなど近づく事なんかできない。

こうしてうじうじとストーカーまがいのことをやっているうちに七班は解散し、木の葉崩し以降、オレに回ってくる任務は受付を通さない高ランクのものばかり、イルカ先生と言葉を交わす機会もなく、オレの中の先生に対する想いは心の底に沈んで暗い炎となっていった。





今日はオレの誕生日だ。


今更誕生日もくそもないもんだが、子供の頃、親父や先生が大騒ぎして祝ってくれたせいで、こんなオレでも誕生日は特別な日なんだという認識が定着してしまっている。
なんというか、三つ子の魂百までっていうのもあながち間違いじゃないか。まぁ、特別な日、といっても自分がそう思っているだけで、何かあるわけではなし、まして誰かから祝われるなんてことはここ十数年皆無だ。そういうわけで、今年の誕生日もオレは火影勅命の暗部任務についていた。

木の葉の近辺に巣くう抜け忍集団の殲滅、それが今回の任務だ。
この抜け忍集団の頭が、何を血迷ったか五代目に喧嘩を売って、鉄火肌の里長は当然売られたもんは倍返しってわけで、オレに白羽の矢がたった。
写輪眼のカカシ一人で全滅させてこい、だと。木の葉にたてつく輩を粛正するなど上忍一人で充分、とアピールするのが大事なのだそうだ。そんなキツイ任務、しかも誕生日なのに皆殺し任務なんてやりたくないから、ガイかアスマに振ろうとしたら、すでに似たような任務にかり出された後だった。ホント、喧嘩っ早い里長を持つとオレ達上忍が苦労する。

任務は結構大変だった。
情報はぜんっぜんあてにならず、人数は倍以上いるわ、ビンゴブックに載ってるヤツまでいるわで、ホント大変だった。まぁ、こんなことはよくあるから慣れてるけど、今日はオレの誕生日なのに…

任務を終えて里へ帰り着いたのはまだ夜も早い時刻だった。奴らのアジトを襲ったのが早朝だったからなんだけど、だってね、普通忍ってのは夜活動するから、たまには朝から暴れてみようかなって思ったりしたわけだ。奴ら、結構慌てふためいていたから、単なる思いつきが功を奏したってことになる。
そのおかげかどうか、今回あんまり返り血も浴びなかった。五代目はまだ執務室で缶詰になっていたので報告にいくと、気分良さそうにカラカラと笑った。そして、これがホントの朝飯前だな、って上機嫌で、寒い冗談とばしてた。この人、色んな意味でとっても怖い。や、オレんとこの里長だけどさ。
外へ出ると、ぽかっとまぁるい月が浮かんでいた。あぁ、もうすぐ十五夜なんだっけ…オレはぼんやり空を眺める。オレの誕生日は夏の暑さと秋の気配が入り交じる頃で、昼間はツクツクホーシの声をきき、夜は涼しくなった夕風を受けながら丸くなってきた月を仰ぎ見るのだ。今日もたくさん敵を殺してきた。敵の忍という人達を。幼い頃から殺ってなんぼの世界で育ち、今更心が痛むわけじゃない。それはオレだけではなく、アスマやガイや紅や、つまり里の忍は皆そうなわけで、ただ、時折ひどくやるせない。

ふと目を落とすと、まぁるい月が白い暗部ベストに散った返り血を明るく照らしている。


イルカ先生…


無性に顔がみたくなった。
まだ七時過ぎ、アカデミーで残業しているだろうか。さっき覗いたら受付にはいなかった。それとももう帰宅しているか。


先生…


オレの足は自然とアカデミーに向いた。顔を見る事ができたらいい、いや、せめて、こんばんは、と挨拶くらい交わせないだろうか。今日くらいは声をかけるのを許して欲しい。だって誕生日なんだ…いつのまにかオレは走り出していた。


イルカ先生、イルカ先生、イルカせんせい…


もうずいぶんと挨拶すらしていない。いつもただ、オレが見つめるだけ。
あなたはオレの存在なんか全然気付いてもいなくて、あなたの中にオレなんか欠片も存在していなくて、たまらない。

苦しい。
本当はあなたの瞳に映してほしい。
気付いてよイルカ先生、オレを見て、オレに笑いかけてよ、ねぇ。







たどり着いたアカデミーは真っ暗で、もう誰も残ってはいなかった。しばし呆然とオレは校舎の前にたたずむ。
イルカ先生はいない。顔を見る事すらかなわない。

笑いがこみ上げてきた。
肩を揺らしてオレは低く声を漏らす。まったく、オレは何を期待していた?誕生日だから今日だけは特別だと?奇跡でも起こると思っていたのか。
目の前には明かりの消えた真っ暗な校舎、あぁ、オレにはこれがお似合いだ。期待の残骸みたいな黒々とした建物を仰ぎ、オレの笑いは止まらない。上忍はたけカカシ、どだいお前なんぞ、温かい光を求める資格はないのだ。分不相応と思い知れ。

ふと、人の気配を感じて、とっさにオレは身を潜めた。暗がりに目を凝らすと、校舎の裏口から誰かが出てくる。黄色い常夜灯がその人物の顔を照らした。

イルカ先生っ。

イルカ先生だ。
会いたくてたまらなかった人、オレの胸は歓喜に震えた。そうか、戸締まりと消灯を終え、帰るところだったのか。ドキドキと心臓が五月蝿くなる。イルカ先生は裏口に鍵をかけると、肩掛け鞄をひょいと抱え直してこっちに向かってきた。
どうしよう、挨拶するチャンスだ。近くにきたら声をかけてみようか。こんばんは、偶然ですね、今お帰りですか?もしかしたら、しばらく一緒に歩けるかもしれない。そう、オレもこっちなんですよ、じゃあそこまでご一緒に。イルカ先生はどんどん近づいてくる。わぁ、どうしようどうしようっ。口から心臓が飛び出しそうだ。カッカと頭に血が上る。がくがくする足を叱咤してオレは暗がりから一歩踏み出した。こんばんは、イルカ先生…

「こんばんは、イルカ先生。」


……え?


「あ、こんばんは。」

イルカ先生がにこやかに挨拶を返している。オレに、ではない。イルカ先生の前に立つ、小柄なくノ一にだ。

「今お帰りですか?お疲れさまです。」 「任務、ご苦労様です。確か明日も早いのではありませんか?」

顔見知りらしい。オレはイルカ先生に声をかけるタイミングを完全に失した。ただ、阿呆みたいに暗がりで突っ立ったている。

「あのイルカ先生、ちょっとよろしいでしょうか。」

小柄なくノ一は可愛らしい仕草でイルカ先生を見上げた。
これはアレだ、コイツもイルカ先生に告白するクチか。ふわふわとした金髪を月が照らす。目が大きく可愛らしい顔のくノ一は、己を一番魅力的にみせるであろう、不安げで無垢な表情をしている。

「あの…あの私…」

言いよどんでフッと俯く。百戦錬磨のくノ一が、いや、百戦錬磨だからこそか、頼りなげな風情だ。並の男なら肩の一つも抱いてやりたくなるだろう。くノ一はおずおずと顔をあげ、頬を染めて言った。

「イルカ先生のことが好きです。あの、今特別な方がいらっしゃらなければ、友達からでいいんです。おつきあいしていただけませんか。」


このアマっ。


憤怒が腹の底から噴き上げてきた。
なにがお友達からだ。そんなつもりはさらさらないくせに。どいつもこいつも、気安くイルカ先生に声をかける、いとも簡単に恋情をまき散らす。
オレはずっと見てきたのに。イルカ先生だけを見つめ続けて、ただ見つめるだけしかできないっていうのに。
イルカ先生が優しい顔で断りを入れている。涙を零すくノ一を案じて、ハンカチを渡している。そんなことをするな、なんだ、アンタも優しさの大安売りか。オレはただ突っ立って、アンタが他の奴に向ける笑顔を、指をくわえてみているだけだっていうのに、そのオレの目の前でアンタはそんな女の涙の心配をしてやるのか。

どす黒い感情が身の内に渦巻いた。
行き場のない淀んだ情念は、暗い破壊の衝動に変わる。くノ一が涙ながらに何か言い、どうせ好きでいさせてください、とかんとか陳腐な台詞に決まっている、頭をさげてからかき消えた。イルカ先生はしばらくくノ一の消えたところを眺めていたが、再び鞄を抱え直してオレの方へ歩いてきた。気配を消したオレの目の前を通り過ぎる。
暗がりに立つオレの前を、オレに気付きもせず。
オレの中の何かが壊れた。オレは手を伸ばし、ぐい、とイルカ先生の腕を引く。

「うわ…」

月明かりの中へオレはのっそりと歩みでた。

「こーんばんは。」
「カ…カカシさん…」

イルカ先生が驚いてオレを見る。はは、やっとオレを見た。こんなになんないとアンタはオレを見ないんだ。もうオレは自棄だった。

「今帰り?オレもねぇ、任務終えたとこ。」
「あ、おかえりなさい、カカシさん。任務ご苦労様です。」

にこ、とイルカ先生が笑う。受付用のにこやかな笑顔、オレは残酷な気分になってイルカ先生の腕を掴む手に力を込めた。イルカ先生が当惑の表情を浮かべる。

「何?さっきのくノ一、アンタに告ってたんでしょ。断ったの?遠慮せずヤッちまえばよかったのに。」
「カカシさん…?」

あぁ、もうどうにでもなれ。

「あ、それとも何?女よりアンタ、男が好きだったりする?そういや、結構告白されてんのにアンタ、全部断ってるよね。」

イルカ先生が信じられないものを見るように目を見開く。
そりゃそうだろう、オレはアンタと話すときは一応気を使ってたからね。だけどそれも終わり、これがオレだよ、はたけカカシはろくでもない奴なんだ。

「じゃあさぁ、オレがアンタを犯ってやるよ。な〜にびっくりしてんの。アンタみたいな清潔ですって顔した教師なんて、案外淫乱だったりするんだよねぇ。」

胸がギシギシと軋む。久しぶりに言葉を交わしたと思えばこの体たらく、だけど止められなかった。鬱屈が全て噴き出してくる。

「オレ巧いよ、アンタ、ひどくされたい方?縛ってアンアン言わせてやろうか。好きでしょ、そういうの。」

イルカ先生の目が見開かれたまま揺れる。
そりゃそうだよね、こんな下劣なこと言われて、あぁ、でもせんせ、アンタが悪いんだ。もうオレにもどうしようもない。

「オレの、しゃぶりたくてたまんないって顔。ふふ、いいよ、上手にできたらご褒美に、そうだね、オレのを顔にかけてあげるよ。嬉しいでしょ?」

イルカ先生が堪えきれないように俯く。
嫌だよね、軽蔑するよね、こんな男。だのにオレの口はますますエスカレートする。きっとオレはひどく下卑た顔をしているに違いない。

「アンタの後ろにぶちこんでやる。根元まできっちりハメて、擦ってさ、いっぱい突いて揺すってやるよ。アンタの腹ん中、オレの白いので一杯にしてやる。」

イルカ先生は俯いたままだ。こんなこと言って、もう彼はオレを許さない。

「顔、あげなよ、お綺麗なイルカ先生、一緒に楽しめばいいじゃない。どうせオレもアンタも本性はケダモノでしょ?」

おしまいだ。笑っちまう、誕生日だってのに、オレは自分の手で大事なもの、粉々にしてしまった。絶望したオレは、己にトドメを刺すように俯いたイルカ先生の耳元へ息を吹きかけた。

「オレのところまで引きずり下ろしてやる。」

いっそこのまま無理矢理抱いてしまおうか。どうせ彼の中からオレは抹消されてしまうのだ。ならば憎しみだけでも植え付けて、オレを忘れないようにしてしまおうか。

出来るはずがない…  

 

自嘲がこみあげた。そんなこと、出来るわけがないのだ。そこまでする勇気などない。なにより、オレにとってイルカ先生は大切すぎる。オレは彼の耳元に唇を寄せたまま、断罪されるのを待った。ひく、とイルカ先生が身じろぎする。    

   

「オ…オレに…」

俯いたまま彼は声を震わせた。

「そんなこと…ひどい言葉…はっはじめて…」

そうだろうね、誰からも好かれ、慕われるアンタにこんな下劣な真似をする奴なんかいない。
オレは掴んでいたイルカ先生の腕を放し、一歩彼から体を引いた。怒りと屈辱のせいだろう、イルカ先生の体が小刻みに震えている。オレはそれをどこか別次元のもののように眺めていた。人間、絶望するとなんだか感覚、麻痺するもんだなどとぼんやり考えながら。イルカ先生は小さく、絞り出すように言った。  

「こんな辱めにあうのは初めてだ…」

オレは黙って彼の審判を待った。自らドブに投げ捨てるような真似をしたオレの恋の無様さよ。せめてイルカ先生、最後にオレを見て、その瞳にオレを映して。あなたのくれるものなら怒りでも蔑みでもいいから。イルカ先生がグッと拳を握った。

「あっあなたはっ…」

そう、オレという人間は最低です。分不相応な恋にのたうつオレをあなたの言葉で殺してください。

「あなたという人は…」

彼の声に全身を切り裂かれる。痛みに耐えてオレはイルカ先生を見つめ続けた。

「まさかあなたが…」

俯いていたイルカ先生がキッと顔を上げた。あぁ、審判がくだる。黒い瞳がまっすぐにオレを射抜く。

「あなたがこんな人だったなんてっ」

真っ直ぐな黒い瞳がオレを断罪…………って、あれ?

「…カカシさん…」

…断罪…してる…んだよね…?
でっでもっ、でもっ、イルカ先生、なんか目、うるうるしてない?その、悔しさとか怒りとかそんなんじゃなくて、なんかこう…もっと別な意味でうるうる…

「オレ…オレ…」

え?どゆこと?せんせ、怒ってんじゃないの?

「こんなこと言ってくれたの、カカシさんが初めて…」

……はっはい?

「嬉しいです…」

………………はいーーーっ?
幻聴?いやっ、しかしっ、確かに今、嬉しいって、っつか、センセの目、うるうるユラユラっ、っつかセンセっ、頬、染めてないーっ?

固まったままのオレの胸元にイルカ先生がそっと寄り添ってきた。ぬぅおぉぉぉっ、なんだこの状況っ、おいしすぎる状況はぁっ。しなだれかかる体に手をまわしていいのかどうか判断がつかず、オレがなかば万歳の格好で両手をわきわきさせていると、イルカせんせは肩に頭をもたせかけてきた。耳元でうっとりと囁かれる。

「オレのこと、めちゃくちゃにして…」

オーーーーーケーーーーーっ!
なにがなんだかわかんないけど全部オケッ、はたけカカシ、全身全霊を持って奉仕させていただきますっ。もーー考えるのは後でいいっ。死線をくぐり抜けてきたオレのカンが頂いてしまえと叫んでいる。そうだ、これはオレへのプレゼントなんだ、だって誕生日なんだしーー。オレは腕の中の誕生日プレゼントをひょいと抱き上げ、瞬身で自宅のベッドの上に移動した。

「あっあっあっ…」

「こんなに感じちゃって、好き者だねぇ。」

耳元に息を吹きかけながらオレは囁く。

「いっいやっ。」

顔を赤らめ、イルカ先生はオレの下で身を捩った。
そのくせ、オレの腰に回した足にはぎゅっと力が入る。イルカ先生の中をぐい、とオレのモノで突き上げると、ひぃ、と悲鳴があがった。

「嫌じゃないでしょ、イイんでしょ。」
「あ…あぁ…」
「やらしい汁こぼして、ぷるぷるしてるじゃない。」
「いや、言わないで…」
「好きなくせ、淫乱教師のイルカせんせ。」
「あぁぁ…」

いや、なんつーか、めくるめくなんとかっての?言葉で苛めるとせんせ、イヤイヤ、とか言いながらぎゅううってオレに抱きついてくるし、するとイルカ先生の中にいるオレの暴れん坊もぎゅううって締め付けられてもうクラクラよ。

や、言葉責めって燃えるね、っつか、オレって結構こういうプレイ、好きだったんだ、知らなかった。
んでもってイルカ先生ってば、頬、紅潮させてすごい気持ち良さそう。ひどい事いうと潤んだ目でオレをみあげてうっとりとすんの。好きな人が感じてくれるのは本当に幸せ、オレは彼にもっと気持ちよくなってほしくて、奥の奥まで肉棒をねじ込みながら囁いてやる。

「ほら、言ってみな。オレは男にハメて貰うのが好きですって。」
「あぁ…いっいやです…」
「今は授業中なんだよ、せんせ。いつもガッコで言うみたいに、ほら、先生は男の太いものに擦ってもらって感じるって。」
「や…あっ…」
「嘘つきにはお仕置きするよ。」

ぐり、と腰をまわして抉ってやると、イルカ先生は身を捩ってポロポロ涙を零した。

「やだ…カカシさんのでなきゃヤ…」

うぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ

舌ったらずにおねだりされて、オレは夢中で腰を振った。イルカ先生はひんひん泣きながらしがみついてくる。頭の中が真っ白になって、イルカ先生と繋がっているところが熱くて、腰から先生の中に溶け込むような絶頂の中でオレはイッた。

ひたすら彼を揺すぶって何度目かわからない精を吐き出して、ようやくオレは我に帰った。気がつくとイルカ先生は朦朧としている。
オレは慌てて一物を抜いた。抜く時、イルカ先生が「あっ」って色っぽい声を出すもんだから、うっかりまた襲いかかりそうになって己を押さえるのが大変だった。サッとシャワーで体を流して濡れタオルを何本か用意すると、オレはイルカ先生の体を清める。

うわ、オレ達、こんなにドロドロだったわけ?

でもこのドロドロが幸せ、オレに感じてくれたってことじゃない。下半身を清めていると、せんせの秘部からこぷって音がしてオレのものが溢れてきた。うぅ、我慢だオレっ。タオルを替えて今度は先生の顔を拭いた。
とろん、と先生はオレを見上げている。その瞳に嫌悪や蔑みの色はない。まだぼんやりしているせいなのだろうけど、オレはホッと胸を撫で下ろす。

「ねぇ…せんせ…」

汗と涙で汚れた頬をタオルで拭きながら、オレは小さく呼びかける。
イルカ先生に聞こえているかどうかわからないけど、いや、先生がまだ朦朧としているから言えるのか、イルカ先生と抱き合えたのがオレの誕生日の甘い奇跡なら、まだ魔法がとけていない…まぁ…ヤりすぎて日付はとっくにかわっちゃったけど、とにかく誕生日の魔法がとけていない今しか、オレの本音は伝えられない。せんせ、聞いてくれるだけでいいから、想いを返してなんてだいそれた事はのぞまないから…

「イルカ先生が好き…」

なんだか胸が痛くて涙が出そうだ。

「あなたが好きです…」

小さく小さく、でも想いのたけを込めてオレは心の奥底に押し込めていた言葉を声にした。

「好きです。」

ぼんやりとしていたイルカ先生の瞳にふっと光が戻った。オレの心臓がどきり、と跳ねる。
意思の宿った真っ直ぐな瞳、イルカ先生のいつもの目だ。見つめられてオレは狼狽えた。心臓がばくばく音を立てている。と、先生は頬をオレの手に押し付けるように寄せた。柔らかい微笑みが先生の口元に浮かぶ。先生はオレを真っ直ぐに見上げて言った。

「オレもあなたが好きです…」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。呆然と突っ立つオレに、イルカ先生はもう一度、念を押すように言った。さっきよりもはっきりと。

「だからね、オレもあなたのことが好きです、カカシさん。」

何度も言わせないでくださいよ、と先生は真っ赤になって横を向く。
オレはただただ混乱して、でもすとん、と言葉が落ちてきた。


イルカ先生もオレのことが好きって…
諦めなくてもいいの?側にいてもいいの?こんなオレにも愛をくれるの?

視界がぼやけてきた。胸が一杯でもうなにも考えられなくて、あぁ、イルカ先生の顔がよく見えないよ。そうしたら先生、なんだかびっくりした顔で起き上がって、起き上がるときに「イテテテ」なんて色気のない台詞をはいて、それでも体をちゃんと起こしてオレの腕を引っ張った。

「なっ泣かないでくださいよ。」

困ったように眉を下げてオレの頬を拭いてくれる。よく見えないと思ったら、オレ、泣いてたのか、みっともねーー。それでも涙はとまらなくて、イルカ先生に抱き寄せられるまま、オレはせんせの首筋に顔を埋めた。




月明かりの中でオレはイルカ先生の黒髪を梳く。
穏やかな先生の寝顔にオレの胸は満たされていた。挨拶さえ交わせなかったイルカ先生と今、こうやって抱き合ってるのが信じられない。
情けなくもさんざん泣いたオレの顔を、イルカ先生を拭いてあげようと思っていたタオルで彼は綺麗にしてくれた。それから『お誕生日おめでとうございます。日付、かわっちゃいましたけど、延長ってことで。』だって。ウソ、オレの誕生日、知ってくれてたんだ。びっくりするやら感動するやらでぽけっとしていると、彼は照れくさそうに、そりゃオレだって好きな人の誕生日くらいチェックしますよ、って。うっそぉぉぉぉーっ。それからしばらく、ベッドの中でいちゃいちゃじゃれあって、そのうち眠ってしまった彼をオレは胸の中に抱いている。

あぁ、親父、先生、誕生日ってホント、特別だったんだね。もう十何年もなんにも特別なことなかったから、ひとりぼっちで自分の誕生日、お祝いしていたから、だからその分の特別がいっぺんにやってきたのかな。これ以上なくふわふわと幸せに包まれてオレも目を閉じた。







え〜っと、余談で悪いんだけど、っつかぶっちゃけノロケ、ノロケさせてお願い。

や、オレって恋人できたのはじめてだし、でもイルカ先生は最初で最後の恋人です〜、なんちってーーーっ。
え?最初のトーンとえらく違う?
壊れているだの資格がないだのって言ってなかったかって?
え〜?そうだっけ?でもほら、人間なんてみ〜んなどっか歪んでるもんなんだし、基準がオレってなったらオレが一番まともってことだしね。

とにかく、あれからオレはイルカ先生とラブラブだ。
もうね、せんせったら昼間は今までみたいにキリッとしてて男らしくって潔くってかっこよくって、なのに夜になるでしょ、ちょ〜っといい雰囲気になって、さぁこれからってなるでしょ、ぶっぶくくく…あ、いや、ごめん、思い出しちゃって…だーかーら、夜のお誘いってねぇ、たいていイルカ先生からなのよ。

これがまた目ぇ潤ませちゃって、一挙にM全開?オレが言葉で恥ずかしいこといってやると、すんごい感じちゃうのね、んでもってオレもこれは意外だったんだけど、ベッドでせんせを苛めるのがすごく楽しいっていうか、恥じらって涙こぼす先生にますます興奮しちゃうっていうか、先生もそれで楽しんでるみたいだから、オレ達、相性ぴったりってわけ。

たまには緩く縛ってみたりとかね、や〜、愛あるプレイはいいよぉ、燃えちゃうよ〜。

そんなこんなでオレはすごく幸せです。
今週末は二人で一緒にすむ家を探そうって言ってんの。え?もう同棲すんのかって?
や、ちょ〜っと苦情がね、だって夜は二人ともノリノリだから声我慢するなんてできなくって、わかんでしょーが、そのくらい。

それにねぇ、忍なんてやってると、いつ死んじゃうかわかんないわけだし、二人で話し合ったの。年取るまで生きられるかすぐ死んじゃうかわからないからこそ、今を大事に一緒に生きようって。二人で暮らす家を持って、しっかり生活していこうって。
あ?心変わりする可能性忘れてる?なーに言ってんだか。そんなのしなーいよ。イルカ先生はオレの最初で最後の人なの、もしイルカ先生が心変わりしたら閉じ込めるからいいの。え?それ犯罪?大丈夫だぁよ、あの人、Mだから監禁大好きだと思う。そうでしょって本人に確認とったら、顔あかくしてあの人頷いてたし。
あ、それからね、来年からはイルカ先生がオレの誕生日、お祝いしてくれるって。他の人におめでとうって言われちゃ駄目ですよって、ふふ、うらやましいか、うらやましいだろ。誕生日って大人になってもやっぱり特別な日だったんだって幸せ噛み締めている今日この頃です。







イルカ先生の事情

オレの恋したあの人は、銀色の髪の孤高の人で、猫背でゆったりとした仕草の奥に鋭い刃を秘めている、そんな一流の忍だった。
皆の憧れと羨望を一身に受けても飄々とした態度は変わらず、けぶるような銀の睫毛に縁取られた蒼い瞳は深く静かな湖のようだ。そのくせ担当した下忍の子供達に向ける眼差しは驚くほど温かく慈しみに満ちていて、オレはそんな彼の姿にいっぺんで恋に落ちた。その人の名ははたけカカシ、写輪眼のカカシの異名をとる、里随一の上忍、一介の中忍風情の手が届くわけもなく、芽生えたばかりの恋心をオレは胸の奥に封印するしか術がなかった。

サスケが里抜けし、ナルトが修行の旅にでて、あの人と顔をあわせる機会はめっきり減った。あの人が七班を率いていたときには、挨拶くらいはできたのに。
顔が見たくて、でも木の葉崩し以降、受付を通さない高ランク任務ばかりについているあの人を探す術はなく、オレは鬱々と日々を過ごした。
救いはあの人に浮いた噂の一つもない、というくらいか。任務任務で恋人を作る暇もないのだろう。高ランク続きということは常に死の危険に晒されているということだ。なのに、あの人が恋愛をする暇を持てないということが、オレをひどく安堵させる。無理矢理押さえ込んだオレの恋心は、いつしかエゴにまみれ、醜く歪んでいた。

今日はあの人の誕生日だ。
なのに単独任務に出ているという。
今日に限って受付任務が入っていない。まぁ、火影様直接の任務らしいから受付にいても会えないのだけれど、もしかしたら廊下を通りかかるかもしれないじゃないか。そうしたら挨拶できたのに。

お疲れさまです、カカシさん。そういえば今日は誕生日ではありませんでしたか?いえ、アイツらが騒いでいたのを覚えていたもんで、おめでとうございます。そういって挨拶したら、少しは笑ってくれるだろうか。そう、七班がいた頃、オレが挨拶するとあの人は決まって柔らかい笑みを向けてくれたんだ。あの人の笑い顔が好きだった。もう一度、オレに笑ってくれないかなぁ…そんなこと考えているうち、日はとっぷりくれてしまって、仕事もはかどらないので諦めて帰る事にした。

ふと、職員室の窓越しにみえる月を仰ぐ。今夜の月はまぁるくて、そういえばもうすぐ十五夜か。まぁるい月を眺めて、オレはまたあの人のことを考えた。


戸締まりをして外へ出ると、顔見知りのくノ一が話しかけてきた。なんだ、また告白か。何故かわからないが、オレはよく告白される。皆、オレに何を夢みてるんだろう。オレは周りが思うほど他人を思いやってなんかいないし、ましてや自己犠牲精神なんて持ち合わせていない。丁重に断りをいれて、オレはため息をついた。好きな人に愛をもらえなかったら、どんなにたくさんの人から好意を寄せられても虚しいだけだ。あぁ、あの人が欲しいなぁ…そんなことを考えながら帰宅しようとしたら、突然腕を引かれた。うわ、オレ、中忍失格?気配も何もわかんなかったよ。だけど、オレの腕を掴んだ人をみて、すべてふっとんだ。


カカシさんっ。


会いたくて恋しくてたまらなかった人が目の前にいる。でもなんだかいつもと雰囲気が違う、なんかこう、目が鋭いっつーか酷薄っつーか、あれ、今日は暗部服だ、かっかっけ〜。
あんまりびっくりして固まっているオレに、カカシさんはニッと口元を釣り上げた。いや、あの人、口布してるけど、なんかこう、わかるんだよな。うわ、普段の穏やかなカカシさんもかっこいいけど、冷ややかな雰囲気のカカシさんって色っぽい。オレは阿呆みたいにカカシさんに見とれていた。ぼうっとしてたらカカシさんが任務帰りとかなんとか言ったので自動的におかえりなさい、と笑顔を作ったような気がする。流石だオレ、受付は伊達じゃない。そしたらカカシさん、オレの腕を掴んでいる手に力をこめた。痛い、上忍の力だからかなり痛い。そしてオレは、それこそ腰を抜かさんばかりに驚いた。

『あのくノ一、遠慮せずに犯っちまえばよかったのに。』

えぇぇーー、カカシさんってそんなキャラでしたっけ。オレの中のカカシさんは穏やかで紳士で、格下にも驕らず、でも飄々として孤高で、なのに今、その口から飛び出す言葉は耳を覆いたくなるような下品な罵倒。いつもは静かな湖を思わせる蒼い瞳は冷たい炎を宿していて、うわ、右目も見えている。これが写輪眼か、綺麗だなぁ…じゃなくってっ。カカシさんはオレを辱める言葉を浴びせ続ける。酷薄な空気を纏い、ひどい言葉でオレを罵る。これまで前線にもいたし、ナルトのことで風当たりが強かったこともある。だけど、こんなに下劣な罵倒を受けた事はない。


………なんか…いいかも…


へっ変態じゃないぞ、オレは断じて変態でもMでもない。だけど考えてみてくれ、心底惚れて、どうしようもなく好きな人が、罵詈雑言とはいえオレに関わってくれているのだ。え?フツーそういうのって傷つく?でもな、カカシさんってこう、口布しててもすかっとした色男ってわかるだろ、きっと口の形だって上品で綺麗だ。その口でとてつもなく下品な言葉を吐くんだぞ。なんていうか、ぞくぞくしてこないか。こういうの、ギャップ萠?しかもあの美声だ。普段だってくらっとくるくらいいい声してるのに、それがなんだか押し殺したように掠れたりしたら…腰にクル。耳から下半身直撃だって。なんかもう、存分にいたぶって、って気になるじゃないか。


………えっと、やっぱ少しオレってMかも…


いや、違う違う、カカシさん限定で、しかも『少しだけM』ってただし書きが入るから。
あんまりカカシさんがオレの顔を見つめるもんだから、どぎまぎしてオレは顔を伏せた。そしたらどうだ、耳に息吹きかけられて………腰が抜けるかと思った。頭にかぁっと血が上ってぽうってしてくる。気がつくとオレはカカシさんの胸にしなだれかかって、あらぬ言葉を呟いていた。


『嬉しいです…めちゃくちゃにして…』


うぉぉぉっ、オレの馬鹿カバっ。ごついガタイのもっさい中忍が言うこっちゃないっての。
だけど一瞬後にはオレはカカシさんに抱えられてどこかの部屋に移動していた。ベッドに放られ、服をはぎ取られる。そしてオレ達は裸で絡み合った。最中のことは良く覚えていない。とにかく嵐に翻弄されるみたいな、銜えたり銜えられたり舐めたり舐められたり、こういうの、めくるめくっていうんだっけ。男とするのは初めてのオレに、カカシさんは随分優しかった。相変わらずひどい言葉でオレをいたぶるくせ、愛撫の手は泣きたくなるほど優しくて丁寧だ。もう、オレは気持ちよくてうっとりしちゃって、またあの形のいい口がヤらしい言葉吐いてると思うと、それがオレに向けられているのだとお思うと、背筋にジン、としびれが走った。カカシさんが中に入ってきた時は流石にひどい圧迫感と痛みがあって、でもオレの上で荒い息を吐いているカカシさんの上気した顔を見たら、痛みすら気持ちよく思えて、幸せで涙が出た。……
あ〜、やっぱオレ、Mっ気あるかも…
カカシさんに揺さぶられて中に出されて、オレもカカシさんの腹に擦られて気持ちよくて出して、何度イッたかわからない、最後は頭の中が白くなって、ただ気持ちいいってことしか感じてなかった。

カカシさんがオレの中から出て行ってしまうと、ひどく寂しくなった。あぁ、これで終わりなのかなぁって、寂しくて辛くて。カカシさんはベッドを降りるとシャワーを浴びにいったようだ。そりゃそうだよな、出すもん出したら男はすっきりする。恋人でもない、しかももっさい男の側なんかにいつまでもいたいはずがない。オレは辛いことを考えたくなくて、ただぼうっとベッドに横たわっていた。

少しうつらうつらしたかもしれない。ハッと気がつくと、カカシさんがオレの体を濡れたタオルで拭いてくれていた。あぁ、ホント、優しい人だなぁ。色違いの目が慈しむような色を浮かべているのはオレのきのせいか。酷薄な雰囲気のカカシさんもかっこいいけど、優しいカカシさんもイイ男だなぁ、などとぼんやり考えていたら、とんでもない告白を受けてしまった。


えぇぇーーーーっ、カカシさんがオレのこと、好きーーーーっ?


その後はまぁ、お互い告白合戦っていうか、うわ、なんだかオレ、すっごく幸せじゃねぇか。生きてりゃいいことあるっていうけど、本当なんだな、父ちゃん、母ちゃん。
そしてオレとカカシさんは晴れて恋人同士になったんだ。

オレとカカシさんが付き合い始めて三ヶ月、一緒に住む家を見つけて引っ越した。縁側と小さな庭つきの平屋だ。昼間、カカシさんはオレをべたべたに甘やかす。なのに夜は、もうわかるだろ、言葉責めのセックスだ。あの美声で罵られると、オレはもうメロメロで、カカシさんも楽しんでいるみたい。なんかオレ達、相性ぴったりだ。今夜はちょっと縛ってもらおう。彼は手ひどいことはしないけど、愛あるプレイって燃えるもんだ。……やっぱオレ、少しMっ気あるかも。とにもかくにも生涯の伴侶を得て、絶対に逃がすもんかと思っている今日この頃です


 
 
 

えーと、あのー、そのー……カカ誕です。
もう10月だけど。
そしてイルカ先生、マジおかしいです。
すいません、いつもと違うイルカ先生が書きたかっただけなのに……