その日、部活で手塚が首の筋を違えて保健室に行った。大石の話だと、今日は妙に背筋を伸ばして、首を横に向けていたんだって。くす、ホントに手塚ってお茶目さん。明日はきっと首ギブスだね。彼の黒髪に白いギブスが映える様を思い浮かべながら、今日は眠ろう。愛しい手塚、君はなんて僕の人生に彩をあたえてくれる人なんだ。明日はどんな楽しいことがまっているのかな。
おやすみ、可愛い僕の手塚国光v
○月○日(曇り)
朝の部活を手塚が休んだ。やっぱり首ギブスかな、と思ったから、朝錬もそこそこに手塚のところへ行ってみた。
もう登校していた手塚が僕の顔をみて驚いている。
なんだ、がっかり。ギブスじゃないや。
でも、首筋から顎まで白い湿布におおわれているから、まぁよしとするか、
そんなこと考えていたら、手塚が目の前に来ていた。なんだか手を開いたり握ったりしている。僕は不思議だったから手塚の顔をしたから覗き込んだ。
あれ、手塚、顔、赤いよ。
そしたら手塚がこういった。
「その…不二、心配してくれたのか?」
あぁ、そっか。
僕、手塚がギブスじゃなかったのに結構がっかりしたから、それが顔に出てたんだ。でも、それが手塚には心配そうな顔にみえちゃったんだね。こういうとき、美形ってお得。
僕はすかさず微笑んだ。でも、ちょっと悲しげに眉を顰めるのだけは忘れない。
「だって、手塚が昨日、保健室にいったっていうから、僕は…」
声をつまらせてみちゃったりなんかする。
「不二…」
あれ、手塚、感動しちゃった?目が揺れてるよ?あ、僕を見ようとして首押さえた。そっか、首が痛くて下、向けないんだ。
そこで僕は、もう少し遊ぶことにした。
「朝錬も来ないし、そんなにひどかったのかって…」
手塚の湿布を貼った側に体を寄せる。手塚の体がぴくっとした。
「夕べだって、君の怪我、どんなだろうって思ったら…」
ウソは言ってない。どんなだろうってわくわくしてたもの。
「ベッドに入っても君のことが…」
手塚が息を飲むのがわかる。
僕の顔が見たけりゃこっち向くしかないよ。
湿布を貼った側の斜め下、一番痛いよねぇ、その角度が。
「ベッドの中でも君のことを…」
耳元に伸び上がって囁いてやる。
さぁ手塚、僕への愛と痛みへの恐怖、どっちが勝る?
「手塚…」
「不っ不二っ。」
手塚が首を押さえて崩れ落ちるのと、僕が飛びのくのと同時だった。床に転がった手塚は目を白黒させながら呻いている。
合格v
大きな満足感にみたされながら、僕は手塚の横に膝をついて髪を撫でてやった。
ご褒美だよ、手塚。
それから、おもむろに声をはりあげた。
「先生、手塚君が大変ですーっ。」
手塚が保健室に運ばれていくのを見送っていると、僕の横にエージが来た。僕と運ばれていく手塚をみくらべぽつっと呟いた。
「今度は何したのさ、不二…」
「ん〜、愛の試練ってやつ?」
会心の笑みを浮かべた僕にエージは何かを悟ったように首を振った。こういうのを以心伝心っていうのかな。周りで、僕の笑顔を直接見ちゃった何人かが「あ〜ん」とか「う〜ん」とか言って気を失っていたけど、気分がよかったから放っておいた。
授業がおわったら保健室にいってみよう。今日は楽しい一日になりそうだ、くすっ。
☆☆☆☆☆
パソが入院中に日記に書いた小話です。ストレスたまってたんだな、オレ…