なんだかねぇ、青い空とか眺めてると、泣きたかったりするわけ。


理由はない。


だって、僕にはちゃんと家族がいて、あたたかい家があって、友達がいて。

食べ物に困るわけでなし
眠る場所に困るわけでなし

服だって好きなものを買えるし
欲しいものだって、無制限じゃないけど手に入るし
テレビだってゲームだってパソコンだってあるし

要するに、僕はとっても恵まれているわけで
幸せであるわけで


僕の仲良しの友達、エージやタカさんや大石や乾や
可愛い後輩たち、桃や海堂や越前やなんかだって
大いに幸せであるわけで


悩みといったら、テニスのこと、勉強のこと、好きな人のことってなもの
いってみりゃ生きるか死ぬかなんてハードなとこからは程遠い悩みで

とっても贅沢で暢気な悩みしか持ちえない僕たちであるわけで


なのに、そんな幸せな僕であるにもかかわらず
青い空を眺めていたら、胸が痛くて泣きたくなったりなんかするんです。




そうしてひたっていたら、僕の好きな人が大慌てで飛んできました。

「どうした、不二、何かあったのか。」

きょとんとする僕の頬を指で拭ってくれたりする。

「何故泣いているんだ、何があった。」

表情が固いことで有名な僕の恋人がおろおろするので、僕は笑いました。

「どうしたの?手塚。」
「それはこっちのセリフだ。泣いているじゃないか。」

そうか、泣きたくなったついでに、僕、泣いていたんだ。
体って結構正直。

「大丈夫、ちょっと思春期してただけ。」

手塚がぽかんとしながら黙って疑問符とばしてる。


そう、ちょっと思春期なだけ。


幸せな自分を知っていて、それでもどうしようもない一人ぽっちに浸ってみて、浸ってるってわかってるんだけど涙を零してみたりなんかする。


あはは、思春期だね。


でも、思春期は一人じゃないと浸れないので、
せっかく目の前に恋人がやってきたことだし、
今から恋にうつつをぬかそうかと思ったりするわけで。



所詮、なやめる中学生なんてこんなもん。



☆☆☆☆☆
手塚は本気で心配して胃を痛くしていたりする…