じりじり残暑の太陽が照りつけてくる
見上げると晴れ渡った空と白い雲
金髪の子供がオレの手を引く
『カカシ兄ちゃん』
そう呼びながらオレの手を引く
『早く行くってば。サクモのおじちゃんが待ってるってばよ』
親父?オレの親父が?
「大丈夫でやすか?カカッさん」
ぺち、と頬を柔らかい肉球で叩かれてカカシは我に帰った。肩の上から子猫が心配そうに覗き込んでいる。
「あ…あぁ…」
カカシは軽く頭を振った。
「わかってーるよ。単にここは親父や先生が生きている世界だってだけのことなんでしょ」
そうだ。次元を超えて別な世界に飛ばされ続けた。この世界でもう四つ目だ。
「せいぜい一ヶ月もたったらまた別次元へ飛ばされるに決まってるよね。だからここもオレにとっちゃひと時の夢?みたいな」
ほんのひととき滞在するだけのかりそめの世界にたまたま父や先生が生きていた、それだけのこと。
「前の世界でも親父達は生きてたわけだし、こういう世界もありなんでしょ」
ははは、とカカシは余裕あるよと言いたげに小さな笑い声をあげる。
「ま、今回は親父達に会えそうだけどね。前の世界で会い損ねたからちょっとラッキーかな」
「カカッさん…」
子猫が気遣わしげに見つめてくる。カカシはことさら明るく言った。
「それにしてもいきなりでびっくりしたよ。先生がいるんだもんねぇ。そういえば先生、オビトって言ったけど、もしかしてもしかしなくてもオビトもリンも生きてる世界?」
心なしか声が上擦る。
「生きてるのかな、オビトが生きてる?じゃあここのオレは写輪眼のカカシじゃないわけだ。なんか妙な感じだぁね」
「カカッさん」
「あ、そしたらオレ、見た目からこっちのカカシじゃないってすぐバレるんじゃない?どうしようかね」
「カカッさん」
「最初っからバレバレ?ははは、どう挨拶したらいいやら…」
「カカッさん」
ぺち、と頬に肉球があてられた。ハッとカカシは目を瞬かせる。
「ホントに大丈夫でやすかい?」
「………あ…あぁ…」
カカシはフッと息をついた。
「大丈夫じゃないみたい…」
正直、心臓はバクバクだし血が上った頭はなんだかぼうっとしている。ふわふわとまるで雲の上を歩いているみたいだ。
「……ダメだ、全然大丈夫じゃない」
「そのようでやすねぇ…」
是清がぺちぺちと励ますように頬を叩いた。
「ま、カカッさん、パニクったらとりあえず黙っててくだせぇよ。あっしが…」
「カカシ兄ちゃん、さっきから猫と何しゃべってるんだってば?」
カカシの手を引くナルトが振り向いた。
「えっ」
「その猫、なんだってば?」
訝しげに首を傾げる。
「あ〜、その…」
なんだか頭が働かない。口ごもるカカシの肩にのる子猫をナルトはじっと見上げた。
「ちっちぇぇ雑巾みてぇ」
「なっ」
子猫のシッポがぶわりとふくらんだ。キシシ、とナルトが歯を見せた。
「その雑巾、新しい忍獣?兄ちゃん趣味わりぃってば」
「こんのガキィ」
全身の毛をふくらませる子猫の背中をカカシは慌てて押さえた。
「忍獣っていうか、えぇっと…」
カカシは曖昧に笑う。
「ひっ拾った?」
「なんでやすかソレッ」
「いってぇ」
八つ当たりの猫パンチが頬に炸裂した。
「だっせぇ、忍者が忍獣にぶたれてるってば」
ナルトがケラケラ笑う。
「でも兄ちゃんとこのおばちゃん、猫好きだから喜ぶんじゃねーの?」
言いながらナルトはまたカカシの手を引いた。
「え…」
「早く見せてやるってばよ。おばちゃん、この間もサクモおじちゃんに猫口寄せしろって騒いでたってば」
思わずカカシは足を止めた。引き戻されてナルトがたたらを踏む。
「カカシ兄ちゃん、あぶないってばよ」
「ナルト、お前、今何て?」
「へ?」
きょとん、とナルトは青い目を瞬かせた。
「オレの家には誰がいるんだ?」
ナルトはぽかんとしている。カカシは思わず詰め寄った。
「ナルト、誰がいる?親父以外に誰が」
「兄ちゃん?」
「そのおばちゃんってのは、ナルト、お前」
さらに言い募ろうとするカカシの口布を子猫がキュッと噛んだ。
「あ…」
「カカッさん、小僧が驚くじゃねぇですかい」
ナルトが小首を傾げたままカカシを見上げている。
「わっ悪い…」
口元を押さえカカシは力を抜いた。
「兄ちゃん?」
「あ…あぁ、悪かった…ナルト」
「カカッさんが変なのはいつものことでやすよ、それよりナルトの小僧」
カカシのかわりに子猫がきぃきぃと言った。ナルトがムッと口を尖らせる。
「小僧じゃないぞ、子猫のくせ生意気だってばよ」
「小僧は小僧でぃ」
カカシの肩の上で子猫は涼しい顔だ。
「お前さんがさっき言った、猫好きのおばちゃんってのは誰のことなんでい?」
「兄ちゃんとこのおばちゃんに決まってんだろ」
カカシの体が揺れた。
「ソイツぁカカッさんの母親ってぇ意味で言ってんのかい?小僧」
ナルトはむすっと口をへの字に曲げる。
「なんだよ、えっらそうな猫だってば。兄ちゃんの母ちゃんでなきゃ誰なんだってばよ」
それからンベ、と子猫に向って舌を出した。
「やっぱ猫はバカだってば」
「なっなぁにぃっ」
「バーカバーカバカ猫ー」
ぎゃはは、と笑い、それからカカシの手を引っ張る。
「早く行くってば。オビト兄ちゃんは大人のくせ食い意地張ってっから旨いもんからなくなっちまうってばよ」
駆け出すナルトに引きずられるようにしてカカシは足を動かした。だが膝がガクガクと震えて抜けそうだ。
「母さんが…」
考えもしなかった。父や先生、オビト達だけでなく、この世界にはカカシの母親もいるというのか。あまりに小さな時に死んでしまって、写真でしかみたことのない母親、カカシには母の記憶がない。だがここには存在するというのか、両親がそろって存在する世界だと。
カカシの手を引きながらナルトが何か話しかけてくる。だがカカシの頭は真っ白で、機械的に返事をするのが精一杯だった。
なつかしい道を自分は今、辿っている。
九尾の災厄の時に破壊されてとうに存在しないはずの家々や道がここにはあった。横切る大通りや路地、角の板塀、幼い頃の記憶と寸分違わぬ風景がカカシの目の前を流れていく。
そして見えてきた瓦葺きの平屋、カカシは目を見開いた。確かにカカシの生家だ。なくなってしまったはずの懐かしい家、金髪の子供に手を引かれ、今、自分はその家へ向っている。どこか現実感がかぽっと抜け落ちたような感じだ。足下が覚束ない。
石積みの塀をたどり門を入ると玄関までの飛び石がある。玄関脇に植えられた南天、庭へ続くところには夏椿、格子に磨りガラスの玄関引き戸、なにもかも思い出の中と同じだ。ガラガラとナルトが玄関の引き戸を開けた。
「サクモのおじちゃーん」
どきん、と心臓が跳ねる。玄関先で足が止まった。バクバクと心臓の音が五月蝿い。
「おじちゃーん、カカシ兄ちゃん,帰ってきたってば」
ぱたぱたとナルトは三和土にサンダルを脱ぎ捨てるとあがっていった。カカシも一歩、中へ踏み出す。ふっと記憶の底に眠っていた匂いがした。そうだ、この家の匂いだ。はっきり覚えている。
カカシは首を巡らした。右手に下駄箱、三代目からもらった和蘭の鉢植えが置いてある。上がり框の先の廊下は磨き込まれて艶のある焦げ茶色、左手の父の書斎のふすま絵は淡い遠山、なにもかも覚えている通りだ。
いや、少し違う。下駄箱の上の和蘭の横に花籠があった。薄紅色のムクゲが活けてある。母が飾ったのだろうか、そうなのだろう。幼い頃、家に花が飾られていた記憶はない。男所帯では花を活けるようなことはなかった。
「おぉ、ナルト君」
奥から声がした。また心臓が跳ねる。
「カカシ帰ってきたか」
忘れもしない、父の声だ。廊下の奥の居間にいるのだ。ナルトはすでに居間へ入っている。
「カカッさん」
子猫の声にハッとした。
「行きやしょう。ずっとここにいるわけにもいきやせんや」
「あ…あぁ…」
サンダルを脱ごうとしてカカシは手が震えているのに気付いた。手の平を見つめ、ぎゅっと拳を握る。
「写輪眼のカカシがなっさけないねぇ」
己に言い聞かせるよう呟く。子猫が黙ってしっぽを振った。
廊下にあがるとなにやら騒がしい。ナルトが居間に入った時に襖を開けっ放したままなので中の声が響いてくる。
「先に食うってずりーってばよ」
「なんだよナルトぉ、お前が遅いのが悪いんだろ」
「フツーは誕生日の主役を待つってば。オビト兄ちゃんは脇役じゃねーか」
「飯の前じゃ主役も脇役もねぇんだよ」
「まぁまぁ、ナルト君、まだたくさんあるから。ほれ、オビト君、一杯いこう」
「げっ、サクモのおじちゃん、もう酔っぱらいだってば」
大騒ぎだ。
カカシが幼い頃、居間がこんなにうるさかったことがあっただろうか。家の中はいつもシンと静かだった。物静かな父と同じに音も気配も薄い家だった。なのにこの騒々しさはどうだ。
「カカシー、何してる。もうはじめてるぞ」
父に呼ばれた。カカシは息を飲む。襖の開け放された所から暗い廊下に明るい光が射していた。そうだ、南向きの居間はいつも明るかった。だから幼い頃、カカシはいつも襖を開けっ放しにしていた。暗い廊下が嫌だったから、居間の光をいれたかったから。
「カカシー」
「兄ちゃん、何してるってばー」
ナルトとそれから知らない声、これがオビトなのだろうか。
「カカッさん」
子猫の声に押されるようにカカシは開け放ったところへ一歩踏み出した。さぁ、と庭からの風が通る。十畳敷きの居間は記憶のとおりで、庭に面した広縁から午後の明るい陽光が射し込んでいる。長い銀髪を後ろでひとくくりにした男がグラスをかかげた。
「お〜、遅かったなカカシ」
にこにこと銀髪の男が笑った。自分によく似た男、思い出よりも少し年をとった懐かしい面差し。
「座れ座れ、そら、一杯やるぞ」
「父さん…」
こんな風に笑う人だったか。上機嫌な父はグラスを差し出してくる。
「おじちゃん、すっかり出来上がってるってばよ」
ニシシ、と茶々入れるナルトの隣に見知らぬ黒髪の青年がいた。忍服のベストを脱いだ姿で、額当ては横に放ってある。
「お前手ぶらじゃん。ちゃんと頼まれもん買ってきたのかぁ」
青年は手に持った手羽元をカカシに向って振った。
「全然帰ってこねぇからおばちゃん、痺れきらして買い物いっちまったぞ」
ツンツンと尖った短い黒髪、意志の強そうな黒い大きな目、親友だった少年の姿が重なる。
「……オビト?」
「何だよ、っつかお前、なんだその額当て、斜めなってんぞ」
「あ、なーんか変だと思ったらそっかぁ。カカシ兄ちゃん、額当てがずれてるってば」
オビトに負けじと唐揚げに手を伸ばしながらナルトがだっせー、と叫んでギャハハ、と笑った。
「それにカカシ兄ちゃん、忍猫拾ったんだってば」
「あぁ〜?肩のソレか?お前、買い物行ったはずが何やってんの」
指差すオビトの肩をサクモが横からバシバシ叩いた。
「さぁさぁ、オビト君一杯一杯、そこのニャンちゃんも一杯いくかね?」
「だーから、サクモのおじちゃん、酔っぱらい」
「おっ、ナルト君もいってみるか」
「おっちゃん、ナルトは未成年っ」
父が、青年になったオビトが笑い合っている。目の前の光景にカカシはただ立ち尽くした。
「カカッさん」
子猫が心配そうにピトピト頬を叩いた。だがカカシは動けない。その時だ。ガバ、と後ろから肩を抱かれた。
「なーにポケッとしてんの〜?」
カーカシ、と顔を覗き込んでくる。四代目火影、波風ミナトだ。
「せ…先生…」
「ほら、三代目の酒蔵から失敬してきたコレ、極上だよ〜」
カカシの肩を抱いたまま酒瓶をかかげた波風ミナトはふと、動きを止めた。じっとカカシの顔を見つめる。だがすぐににこ、と笑うとカカシごと居間に入った。
「サクモさん、やってますね」
「おーおー、ミナト君、一献一献」
酔っぱらったサクモは四代目の敬称を忘れているらしい。
「はい、『大吟醸火の国美人』カカシ君への誕生日プレゼントでーす」
どん、とテーブルの上に一升瓶を置く。
「さ、カカシ、飲も飲も」
サクモとオビトの向い側に座らされた。波風ミナトは酒瓶の封を切りいそいそとカカシの分までグラスを用意する。こんなマメな人だったのか、なんだか感慨深くミナトを見つめるカカシの目の前にニュッと手が伸びてきた。
「カカシ〜、お前額当てくれぇちゃんとしろよ。それじゃ片目、見えねぇだろ」
オビトが斜めがけの額当てを引き上げようとしているのだ。カカシはギクリとなった。ここで左目が露になったら騒ぎになる。ここのカカシは写輪眼の移植などしていないのだ。思わず体を後ろに引こうとした時、肩から小さな毛玉が飛び出した。
「いってぇっ」
オビトの悲鳴があがる。とん、とテーブルの上に降りたのは子猫だ。どうやらオビトの手に噛み付いたらしい。
「なっ…ねっ猫っ」
あんぐり口を開けたオビトがふるふると子猫を指差した。
「おっおいカカシ、何だこの猫っ」
「凶暴だってばよ」
「あっこっこら、是清っ」
あたふたするカカシを尻目に子猫はしれっと言い放った。
「カカッさんは黙っててくだせぇ」
そしてオビトを下からジロ、と睨み上げる。
「やぃ小童」
「こっこわっぱ…」
唖然とするオビトを子猫は鼻で笑った。
「お前ぇみてぇなのは小童で十分でぇ」
つい、と顎をあげる。
「気安くカカッさんの額当てに手ぇ触れんじゃねぇや、このトンチキが」
「ととととんちきぃ?」
「こっ是清」
なだめようとするカカシにチラリと目をやり子猫はピシャリと言った。
「礼儀知らずの小童はこのあっしがきっちり躾やす。やいオビトの小僧」
「うっうわっ…」
いきなり呼ばれオビトは背をピンと伸ばす。子猫はぷわ、と毛を逆立てた。
「てやんでぃ、忍びが伊達や酔狂で片目隠すか。しかもカカッさんは手練の上忍、その上忍が片目隠してるっていやぁわけありだってぇ察するもんじゃねぇのかい。それを考えなしに手ぇ出しやがって、それでもテメェは忍びか、上忍が聞いて呆れらぁ」
「えっ、あっいやそのっ」
「上から目線の忍猫だってば」
ナルトがぼそ、と呟いた。たかだか手の平にのるサイズの子猫なのだが、プシャー、と威嚇する姿は妙に迫力がある。オビトはたじたじだ。
「カカシ、この猫何とかしてくれよ〜」
後ろにずり下がりながら悲鳴をあげるオビトの横では上機嫌のサクモがにこにことお猪口に酒を注いだ。
「勇ましい猫ちゃんだ。新しい忍猫君か?結構結構」
まぁ一杯、と子猫の前に猪口を置く。
「おっちゃん、猫は酒飲まねぇ」
「酔っぱらいはわけわかってねぇってば」
「「って飲んでるし」」
くはっと子猫は猪口から顔をあげた。
「やっぱカカッさんの親父さんだけあって気が利きやすねぇ。それにくらべてオビトとナルトの小僧ら、礼儀ってぇもんを知らねぇや」
「猫ちゃん、僕の杯も受けて受けて。三代目秘蔵の酒だよ?」
「や、こりゃありがてぇ四代目、いただきやす」
「「なんかオレ達と態度違くねっ?」」
わぁわぁと大騒ぎだ。カカシはただ呆然とその光景を眺めていた。
父はこんな風に明るく笑えたのか。青年になったオビトはこうやって自分にじゃれてくるのか。火影業務ほっぽって酒飲みに来ている先生は記憶の中よりずっと呑気そうだ。
もし自分の世界の彼らが生きていたら、ナルトも自分も日々、笑い合いながらこうやって過ごしていたのだろうか。
カカシの世界ではすでに亡くなって久しい人達、カカシは眩しそうに目を細めた。九尾の災厄で破壊されすでに存在しないはずの自宅の居間で、子猫を囲むなつかしい人達、どんなに願ってもかなえられるべくもなかった光景が現実となってカカシの前にある。ふっと父が顔をこちらに向けた。
「どうした、ぼうっとして」
グラスに酒を注いだ。
「ほら、カカシ」
父が自分に酒を注いでくれている。ぎゅっと胸が締め付けられた。
「父さ…」
ふいにカラカラと玄関の引き戸の開く音がした。
「おばちゃん、帰ってきた」
ナルトがぴょい、と跳ねて居間を飛び出した。
「おばちゃーん」
「あ、ナルト君、カカシ見つかった?」
柔らかい声、母の声なのか。カカシに母の記憶はない。赤ん坊の時に亡くなってしまった。カカシの知る母は写真の中で微笑んでいる姿だけだ。
「オレが連れて帰ってきたってば」
「そう、ありがとうね、ナルト君」
とんとんと足音が近づいてくる。カカシは思わず腰を浮かした。心臓が口から飛び出しそうだ。ここでは母が生きている。母に会える。
「カカシ、帰ったの?」
黒髪の女性が居間に入ってきた。細面にアーモンドのような形のいい大きな目、母だ、写真のとおりだ。いや、写真より年をとっていて、写真ではおろしたままの黒髪をふんわりとひとまとめにあげている。ただ微笑んでいる写真とは違い、黒い目がいきいきと輝いて生気にあふれていた。
生きている。母が生きている。
立ち上がったカカシは息を飲んだまま母を見つめた。
幼い頃、何故自分には母がいないのかと辛かった。母親に手を引かれる同い年の子供らを見る度に寂しくて、写真を眺めてはこっそり泣いた。もし母が生きていたらどんな風に自分を呼んでくれるのか、声を知らないことが悲しかった。その母が今、カカシの前にいるのだ。
「カカシ」
母がカカシの名を呼んだ。夢にまで見た母の声、柔らかくて少し低めの声だ。母はこんな声をしていたのか。
「カカシ」
こんな風に名前を呼んでくれるのか。
「お母…さん…」
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