元新米中忍の独白2新年編
     
     
 



里に帰り着いたのは大晦日の日付が変わって少しの時刻だった。里の中から除夜の鐘が聞こえてくる。

「正月に間に合いましたね、隊長」
「今年はさい先いいや」

ベテラン下忍二人が嬉しそうに言った。

「実はオレ、正月も任務だっていったら嫁に殺されそうになりましたから」

下忍の一人が言った。もう一人が眉間にしわをよせてうなずく。

「オレんちも。アレですよね、新婚の頃は無事に帰ってきて〜、なんて殊勝なこと言っててもね、数年たちゃ嫁なんてね」
「そうそう、隊長はまだ独り身っしょ?あんま結婚に夢みちゃいけませんよ夢みちゃ」

あまりに、あまりに現実的な言葉だ。

「ちょっと、勘弁してくれよ〜。オレ、彼女みつけるとこから始めなきゃいけないんだからさ、そんなムゴい現実突き付けるなよ〜」

そうだ、オレはまだ独り身なんだ。少しは甘い夢みたいじゃないか。オレは傍らを歩く新米中忍君の肩をぽんぽん叩いた。

「な、わかるだろ?中忍で指揮官になるってことはな、こんな煮ても焼いても食えないベテラン下忍と渡り合うってことなんだぞ」

新米君がこくこく素直にうなずくもんだから下忍二人は大笑いした。もちろんオレもだ。

新米中忍の指導官となって九ヶ月、今回は「下忍スリーマンセル」を率いた任務の実地指導だった。ベテランの下忍二人に下忍役としてオレが加わり、新米君がそれを指揮するのだ。
チームであたる任務では指揮官の力量で任務の成功率、そして生還率がガラリとかわる。実際、新人研修の行われていなかった時代の新人率いるチームでは部下の下忍の殉職率が他よりも高かった。下忍は戦闘力では劣るがチームとして動く時には非常に重要な戦力だ。特に目端がきいてなにかしら特技を持つベテラン下忍はそこらの中忍よりはよっぽど貴重な人材だと言っていい。そんな人材を新米のつたない指揮で失うわけにはいかない、それで始まったのが指揮官研修だ。中忍同士で組む任務よりもはるかに責任の増す指揮官任務には十分な研修期間が当てられていた。
そして今回も彼らのようなベテラン下忍についてもらっての研修任務だった。草花コバナさんと高原ノカゼさん、名前は可愛いけどすげぇガタイのいいこの二人は元々うみの先輩の部下だった人達だ。実はオレの指揮官任務の時にもついてもらった下忍なのでオレ自身ちょっと頭が上がらないっていうか、いや、実際凄い人達だとオレは密かに尊敬している。だから今回も無理いって指導任務のメンバーをお願いした。まぁ、オレ自身が新米指導中忍なんだし、新米二人ってのはやっぱ心もとないっていうか、いやいやいや、オレはもう一人前だけどな。
とにかく、あの阿吽の大門をくぐったら無事任務終了、正月はゆっくり休むことが出来る。足取り軽くオレ達は大門へ向かった。
と、コバナさんとノカゼさんがいぶかしげに大門を指差した。

「あれ、大門の前に立ってるの…」
「おかしいな、隊長、外へ出る任務なかったはずだけど」

ここで言う『隊長』とはもちろんうみの先輩のことだ。先輩を敬愛している彼らはいつも『隊長』と呼んでいる。っつか確かに立ってる、大門の前に二人立ってる。一人は大柄で熊みたいな黒髪黒ひげ、一人は長身の銀髪猫背…

「ちょっ、隊長、どこ行くんスかっ」
「大門あっちですよ?」

この場合の「隊長」はもちろんオレだ。

「うん、なんかオレ、任務つきたくなって、受付いって新しい任務、式で飛ばしてくんね?」
「たたた隊長、ダメっすよ」
「隊長〜」
「じゃ、このままオレ行くから」

大門に背をむけシュタ、と片手を上げオレは歩き出した、歩き出したつもりだった。

「おいおい、どこ向かってんだ。大門はこっちだろうが」
「可哀想に、方向感覚おかしくなるほど疲れてるんだねぇ」
「………」

気がつけばオレは大門の中にいた。当然両脇を黒ヒゲと銀髪にがっちり固められている。ふふ、わかってた、逃げられないってことくらいよぉっくわかってた、でもちょっとだけ抵抗してみたかったんだ、だって正月なんだもん…

「隊長、いつの間に…あ、はたけ上忍、猿飛上忍、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、はたけ上忍、猿飛上忍」
「あっあけましておめでとうございます」

門の外から駆け寄ってきたチームメンバー三人が深々と頭を下げた。

「あけましておめでとう、年末までご苦労だったね〜」
「おぅ、研修任務か。無事に終わったようだな」

にこにこと挨拶をかえす上忍ズはしかし、オレを拘束する手は緩めない。オレは観念した。こうなったらとっとと問題解決してお家に帰る。
もう説明するまでもないだろう。この二人がオレを待っているってことは、恋人とまたトラブルになったというか、一方的に恋人を怒らせて追い出されたというか、
しかし正月だぞ?恋人であるところのうみの先輩にしても夕日上忍にしても、任務調整きっちりやって年末年始を一緒に過ごすんだと気合い入ってたはずなのに、そのお二人から追い出されるってことは何やらかしたんだ、この上忍ズ。

「で、はたけ上忍、猿飛上忍」

こほん、とオレは咳払いした。

「新年早々何をやらかしたんですか?」
「やだ、人聞きわる〜い。今回は何もしてなーいよ」
「そうだそうだ、誓ってオレ達は悪くない」
「いっつもオレ達が悪いって決めつける先入観、よくないとおもーうよ」
「お前ぇもいっぱしの指揮官ならそのあたり、わかってっだろうが」

きゃんきゃんと吠える駄犬、じゃない里のトップ上忍ズにオレは鷹揚にうなずいてみせた。

「はい、わかります、わかっています。お二方に悪気などないってオレはよくわかっています。しかしですね、現にうみの先輩と夕日上忍をここまで怒らせたのですから原因を探りませんと」

二匹、じゃないお二方はうーん、と顎に手をあて考え込んだ。

「その原因ってのがねぇ」
「今回にかぎっちゃその原因って奴が皆目見当つかねぇ」
「そうなのよ、さっぱりなのよ」

いつもなら本人達も何がまずかったかくらいは自覚していてオレに仲立ちを頼んでくるんだけど、今回は本当に思いあたることがないらしい。

「うみの先輩や夕日上忍が怒りだしたのは何時頃だったんですか?」
「ん〜、0時すぎてすぐくらいかなぁ。テレビがあけましておめでとうございまーす、とか言ってたから」
「オレんとこもそうだ。『ゆく年来る年』ってのがはじまってちょっとしてからだからな」

ってことは日付がかわる時にやらかしたのか。

「まさか時計の針が十二時をすぎた途端、恋人に挑みかかったとかないですよね…」

おそるおそる言ってみる。いや、まさかとは思うがこの二人のことだ。常識だの礼節だのは通用しない。だが返ってきたのは轟々の非難だった。

「なに言ってんの、オレ、そこまでケダモノじゃないから」
「新年迎えるのにそんな外道な真似するわきゃねぇだろ」
「そういう発想自体、信じらんない」
「だよなだよな、非常識だよな、そういうの」

口角泡を飛ばして非常識非常識と騒ぎ立てる。
っつかアンタらだけには非常識呼ばわりされたくねぇわ。だが今は真冬の深夜、寒い、それに疲れている。チームの三人も早くなんとかしてくれと目で訴えてきている。

「わかりました、私が悪かったです」

早々にオレは白旗あげた。とにかくさっさと終わらせよう。

「ではどのような年越しだったか順をおって話してくださいませんか」

互いの恋人の家で過ごしていてもこの二人のことだ、似たようなもんだろう。うーん、と上忍ズが顎に手を当ててうなった。

「オレんとこは紅白みながら年越し蕎麦食べて…」
「おぅ、オレんとこもだ。珍しく紅の奴が作ってくれてよ」

うんうん、とうなずくヒゲ熊にボサボサの銀帚がニパッと笑った。あ、口布してるから正確には笑ったかどうかわからないんだけど、もうなんか、ここまできたら表情わかるっていうか

「お出汁、おいしかったでしょ。それね、イルカ先生のお裾分けなんだぁよ?あっためるだけにして紅んとこに届けてたから。そしたら紅がね、三つ巴屋の鰊の甘露煮、お礼ってくれたの。ほら、オレ天ぷらダメじゃない。だからね、年越しは鰊蕎麦」
「なんだ、お前ぇんとことお揃いかよ。新年早々、まったくよぉ」
「でもおいしかったでしょ?」
「あぁ、旨かったな」
「……蕎麦はわかりましたから、お二方」

限りなく話が逸れそうになる。ホント、やりにきぃなこの上忍ズ。

「で、おいしく蕎麦を召し上がってからはどうなんです?」
「そりゃあ除夜の鐘がごーんって」
「今年も終わりだなぁってちょいとしんみりしたな」
「そんで大切な人と無事に年越しできる幸せとか噛み締めて」
「新しい年も一緒にいような、なんて照れくさいこと言っちまったりしてよ」
「カウントダウン始まって」
「ペンライト振ったな」
「みんな広場に集まってきたーよね、花飛ばしてみんなごっきげん」
「カウントダウンパネルの後ろからでっかいクラッカー出てきたじゃねぇか」
「あれびっくりしたね。年あけた途端、パーンって」
「お前ぇ、ちゃんと写真撮れたか?」
「抜かりはなーいね。花火あがった時もさ、2ショットの写真撮りまくりよ」
「花火でよ、新しい年の数字が打ち上がるじゃねぇか。あれ綺麗に撮るの難しくなかったか?」
「あ、タイミングずれると最初の数字が消えちゃってるんだよね。なかなかあがんないから待ち構えてなきゃいけなかったし」
「あっあのっ」

オレは慌てて会話を止めた。なんか話の流れ、おかしいだろ。

「花火っていつあがったんですか?オレ…私達が帰還した時には除夜の鐘しか聞こえませんでしたが。それに広場にカウントダウンパネル設置するっていつ決まったんですか?クリスマスツリーなら毎年ですけどパネルは今年が初めてですよね?」
「は?」
「あ?」

なんでそんな怪訝な顔すんだ。だって花火の音とか全然しなかったぞ。オレ達が帰り着いたの0時まわってそんな時間たってなかったし、花火あがったんならいくらなんでも気づくだろ。だいたい、この任務に出る前まで花火だのパネルだのって話は聞いてない。ホント、いつ決まったんだよ。だけど上忍ズ、なんかやれやれって感じで首振ってやがる。

「季節イベントに広場のパネルは必須でしょ?」
「確かに巨大クラッカーはサプライズだったがな」
「花火があがるくらいは予測つくよねぇ」
「常識だじょーしき」

コイツらに言われっと激ムカつく。だが奴らは中身はどうあれ里を背負う看板上忍、大人になれオレ、やるべきことをやってしまうんだ。

「わかりました」

こめかみのひくつきを押さえながらオレは状況を整理をした。

「要はお二人、和やかに恋人と蕎麦を召し上がって後、広場へ出かけられてカウントダウンパネルのところでペンライトを振りながら花火をご覧になったと。そこで写真も撮られたんですね?2ショット写真と花火の撮影に成功したと」
「全員と成功したわけじゃないのよ」
「花火待ってる間にすぐ別んとこ歩いていっちまうからな」
「ほーんと、肝心なときにじっとしてないのよね」
「花火あがった途端、後ろむきやがったりしてな」

はい?

オレは思わず上忍ズの方へ首を突き出した。全員って恋人と写真とったんじゃないのか?2ショット写真なんだから…っつかじっとしてないって、子供じゃないんだし…

「あのう…」
「聞いて聞いて、ジェシカとの2ショット、どんだけ苦労したか」
「オレんちのオリビアもちょこちょこ動き回る奴でよ」
「そんで成功したの?」
「おぅ、オリビアのベストショット、ものにしたぜ」
「アスマって相変わらず濃い化粧の子、好きだーよね」
「クールビューティフェチに言われたかねぇぞ」

………ちょと待ていっ

コイツら、今話してる中身ってもしかしてコイツらっ

「あはは〜、前シリーズからお互い好み、変わんないね〜」
「わははははー」

唐突に真実が見えた。

っつかあはは、わはは、じゃねぇよっ

「…もしかしなくてもお二方、とび森やってたんですかっ」
「あ?」
「え?」

きょとん、とこっちをみた上忍ズはこっくりと大きくうなずいた。

「うん」
「おう」
「ーーーーー!!!」

がくり、と膝をつきそうになった。
とび森、それはこの上忍ズがはまっているニンテ◯ドー3◯Sの人気ソフトの略称だ。前作、「おいでよ、動◯の森」の時から延々、ゲーム内の村作りにいそしんでいる。
っつかオレがこの上忍ズの雑用、苦情処理係なんて厄介な立場に追いやられたのも、元はといえば「おいでよ〜」のせいなんだ。
いや、オレが一方的にゲームの話を現実と勘違いしたのがきっかけだったんだけど、それにしたって代償、デカすぎるだろ。勘違いくらい誰だってする。現にここにいる新米中忍君だって勘違いしてたじゃないか。なんでオレだけこんな理不尽な目に…
ちょっと涙が滲んできた。だが泣いている場合じゃない。このアホ上忍ズに己の非を悟らせ、恋人の元へ届けなければ。

でないとオレの正月が潰れてしまうっ

「なななんでゲームなんかやったんです、年がかわるって大事な時にっ。そりゃうみの先輩と夕日上忍、怒りますよ。あんなに任務調整してたじゃないですかっ」
「「え〜」」

上忍ズが口を尖らせる。

「だってカウントダウンは一年に一度っきりのイベントなんだよ〜」
「そうだぞ、同じカウントダウンは永遠にやってこないんだぞ?」
「それにゲームやったのって7、8分くらいだし」
「そうだそうだ、たったの7、8分だぞ?」

お前オウムか、ヒゲッ。
っつか幼稚園児みたくピーピー口尖らすな、アンタらの思考回路、もう理解とかの範疇越えすぎてオレの手には負えねぇよっ。

とは口に出せないオレはしょせんは中忍、中間管理職だ。

「はたけ上忍、猿飛上忍」

大きく深呼吸したオレは静かに語りかけた。

「考えてもみてください。うみの先輩も夕日上忍も、恋人と過ごす年越しの夜をどれほど楽しみにしていらっしゃったことでしょう。オレ…私は知っています。十二月に入ってからというもの、うみの先輩はアカデミーと受付の仕事を同僚の数倍引き受け、夕日上忍は難易度の高い任務を連日こなされて、ようやく年末年始の休みを確保なさいました。もちろん、はたけ上忍と猿飛上忍も同じでしょう」
「え?オレ達?オレ達は五代目の前でゴネ続けたら向こうが音をあげて休みくれたんだけど」
「おぅ、二人掛かりで毎日ゴネまくったからな」

ピキ、とこめかみがひきつったけどぐっとこらえる。
ホント、オレも大人になったよ、えらいよオレ。

「それでも、うみの先輩と夕日上忍が今日をとても楽しみにしていらっしゃったのは間違いないんです」

オレはことさら深くうなずいてみせた。

「もしかしたら日付がかわる瞬間、おめでとう、今年もよろしく、の言葉とともに甘いキスを期待していたんじゃないですか?」

ハッと上忍ズが目を見開いた。

「きっとそうです。二人きりの年越しスィートナイト、なのに愛しい人はゲームの中の住人と2ショット写真を撮っている。たとえゲームの中とはいえ、自分以外のものに年越の甘い時間を奪われてしまったんです」

オレはわざとらしく胸を押さえた。

「うみの先輩と夕日上忍の心中、察してあまりあります。お二人の悲しみ、悔しさを思えばオレの胸もえぐられるような痛みを感じますよ」
「イッイルカ先生…」
「……紅…」

プルプルと上忍ズが体を震わせた。もう一押しだ。

「今ならまだ間に合うんじゃないですか?悪かったと、ゲームなんかよりずっとお前が大切だと伝えに帰りましょう。ほら、まだ除夜の鐘は鳴り止んでいませんよ?」

にっこり笑って里の中を指し示す。

「わっわかった、すぐにそうする。ありがとね」
「おう、そうだな、急いで帰ろう。やっぱお前はたよりになるわ」

大慌てに慌てた様子で上忍ズはきびすをかえしダッと走り出す。腐っても里の看板忍者、あっというまに見えなくなった。はぁ、と知らず大きなため息が出る。パチパチパチ、と拍手が聞こえた。下忍の二人と新米君が手を叩いている。

「さすがっす、隊長」
「言葉にキレが増してきましたね」
「すごいです、隊長」

誉められたけどあんま嬉しくない。

「これもさ、中忍の仕事のうちだからな」

ぽん、と新米君の肩をたたく。そしてようやくオレ達は解散した。






さっとシャワーを浴びたオレは除夜の鐘を聞きながら寝酒をいっぱいひっかけていた。年の初めからとんでもなかったが、まぁ解決したことだし、明日は実家でおせち食ってのんびりしよう。初詣にいってもいいなとかなんとか、予定を頭の中で立てながらあったかい布団にもぞもぞ潜り込んだ時だ、どかーん、と破壊音がしてドアが吹っ飛んできた。

「うわぁぁぁん」
「うぉぉぉぉん」

同時に黒と銀の塊が転がり込んでくる。ひぇぇっ、化け物っ…じゃなくてはたけ上忍と猿飛上忍?なんでこの二人が、さっき確かに家へ帰したはずなのに。塊がベッドに取りすがってきた。思わず布団ごと後ずさるオレに向かって塊は悲痛な叫び声をあげた。

「イルカ先生に」
「紅に」
「「蹴り出されたぁぁぁ」」
「はぁ?」

なんでだ。謝ったんだろ?蹴り出されるなんて、また何をこの人らは…

「オレ、ちゃんと言ったのに」
「オレだってそうだ」
「なのに先生、鬼の形相でぇ」
「般若ってぇのオレぁ初めて見たぞー」
「あの、お二方、謝ったんですよね?」

上忍ズがうるっとした目で見上げてきた。ガタイのいい野郎にうるうるされてもぜんっぜん可愛くないけどな。

「なんておっしゃったんです?」
「「そりゃあ」」

上忍ズは同時に声をあげた。

「ジェシカよりセンセの方が百倍可愛いから安心して」
「オリビアの化粧よりお前の方がイケてるぜ」
「「この焼き餅焼き屋さんめぇ」」

…………なにソノ上から目線な謝罪、っつか謝罪になってないから、言われた相手、怒るから。

「「オレ達の何が悪いっていうんだぁ」」

誰かコイツらなんとかしてくれ…

もちろん、なんとかしてくれる誰かなんているはずもなく、オレはうみの先輩と夕日上忍の元を訪ねて宥めすかしそれぞれの恋人を引き取ってもらった。うみの先輩と夕日上忍はさすがに恐縮していたけど、そしてペソペソしている恋人の姿に怒りも収まったみたいだったけど、なんつーか、気がつけば東の空がしらじらと明るくなってきている。オレはそのまま木の葉神社にむかって、境内で初日の出を拝み、初詣もすませた。境内で奥さんつれたコバナさんとノカゼさんに会って新年の挨拶して、彼女つれた新米中忍君にも会って、アイツ、彼女いたんだ…でも結局オレの新年祈願は出会い運でも恋愛でもなかった。

今年こそ静かに暮らせますように

ただそれだけを真剣に祈る。祈っている背中ごしになにやら「いたいた」だの「おー、いだぞー」だのと聞き覚えのある声がしたから、結局はオレの願いはかなえられないんだなって悟った。
うん、まだ年あけたばっかなんだけどな。もういっそ清々しいよ。
オレに向かって突進してくる黒ヒゲと銀帚を遠くに眺めながら神社の参道を歩くオレの心は降り注ぐ朝陽のように澄み切っていた。


 

 
     
  毎度生活密着話で申し訳ないっていうか、もう諦めてくれっていうか、はい、とび森が日々の生活に欠かせなくなっているのは金角です。そしてゲームが続くかぎり新米君の話が増殖していくような…(誰も望んでないという声が聞こえる〜〜)下忍のコバナさんとノカゼさん、「うみの隊長総集編」の書下しで名前をつけたので使ってみました。このカカッさんとイルカてんては別人ですけど、てんての部下はコバナさんとノカゼさん、黒髪短髪四角顔の大男二人です、へへへ