「困りました、イビキ隊長。奴の言う事は本当です」
「本人が自らの意志で話さないかぎり、自爆するという術か。厄介だな」
「はい、拷問はもちろん、術をかけたり本人の中に入ったりしても爆発します。いのいちさんでもどうにもなりません。しかし、どうしても奴の持つ機密を聞き出さない事には都に向われた五代目が」
「………おい、うみの中忍は里にいるか」
「うみの中忍は水の国との教職員交流会出席のため里を出ています」
「うみのが出かけて何日目だ」
「丁度一週間になります」
「よし、カカシを呼ぶぞ」
「はっ」
「やぁやぁ、イビキがいってたのってアンタ?」
「ふん、写輪眼のカカシまででばってきたか。オレも出世したもんだな」
「あ、オレのこと知ってんだ。や〜、そりゃ話が早い」
「無駄だ。貴様の写輪眼を使ったところで、オレの中を覗いた途端にドカンだぞ」
「やだなぁ、中を覗くってアンタも好きモンだぁね〜。でもくノ一相手の覗きは命がけだよ〜。ここだけの話、木の葉の三忍の一人、自来也様だってうちの五代目に殺されかけたんだって。あ、コレ秘密ね秘密、里に帰ってもしゃべっちゃだめだぁよ?」
「笑止。それで誘導しているつもりか」
「誘導してどーすんの。っつか正直に聞きたいって言えばいいのに、もー、案外恥ずかしがりやさんなんだ〜」
「なっなんのことだ」
「でも確かに、覗きってドキドキするよね。あの独特の緊張感?あ、言っとくけどオレはイルカ先生しか覗く気ないから。っと、何の話だったっけ。あぁ覗きね覗きの醍醐味、オレの場合はイルカ先生限定覗き。恋人だろうって?そーよ、恋人同士なーのよ。でもやっぱ何年一緒に暮らしてもドキドキ感って大事だと思うわけ。だからってわけじゃないけどたまーにね、お風呂覗いちゃうのよ。こう、気付かれるか気付かれないかってギリギリの気配だして、だってねぇ、ほら、オレって写輪眼のカカシじゃない。完璧気配消したらさすがのイルカ先生も気付いてくれないから寂しいでしょ?」
「……なんの話をしている?」
「またまたー、照れなくっていいって。イビキから聞いたよ〜?アンタ、オレ達を参考にして恋人つくりたいんだーよね?遠慮しないで、他里の人だからって差別しないからだーいじょうぶ」
「なっなんだ?」
「どーぞどーぞ、どんどん聞いちゃって。それで、あぁ、覗きの醍醐味の話ね、もっちろんオレとしては毎日でも覗きはしたいよ?でもそれじゃイルカ先生がもたないじゃない。ほら、あの人って照れ屋さんだからさ、アンタと一緒だね、照・れ・屋vもうさぁ、センセったらオレが覗いてるのを発見するとまっ赤になっちゃうの。カカシさん、何をしてるんですかーって叫んじゃったりしてね、初心だよねー、ベッドじゃあーんな大胆なのに、風呂覗いただけでまっ赤よまっ赤、たっまんないでしょ」
「おいっ、だから何の話を」
「すぐ見つかるわけいかないよね。やっぱ入浴中のイルカ先生、堪能したいじゃない。お湯浴びてほんのり肌がね、こう、ピンクに色づいているわけよ。たいていオレ、浴室ドアの隙間から覗くんだけど、アレってテクいるよ?磨りガラスに影うつったらおしまいだしね、まぁ、困難が大きいほど燃える男だけどね、オレって男はさ」
「おいっ、写輪眼のカカシ、貴様…」
「イルカ先生ってね、ほら、男らしいでしょ?だから髪の毛洗うときもガシガシ豪快なの。こう、上腕二頭筋がグッグッてもりあがってさ、でもそれを覆う肌は薄ピンクよピンク!カハーッ、辛抱たまらんっ、あ、上半身もエロいけど何がイイってお風呂椅子とお尻の境目、オレがいつも可愛がるところが椅子の向こうに密やかに隠されてるって思ったらさぁ」
「よせ、貴様いったい…」
「境目ってえっちだよね、見えそで見えない究極って感じ?でね、だんだんお湯であったまってくるでしょ、そしたらね、あ、これ秘密だから、アンタだけに特別に教えたげる。里の最高機密だぁよ?あのね、イルカ先生のね」
「……………」
「イルカ先生の肌からはねぇ」
「………………」
「なんと!ミネラルウォーターが出て来るの」
「!」
「びっくりした?びっくりするよね。そうなの。センセは汗かかないんだよ。出て来るのはミネラルウォーター。最初はオレも我が目を疑ったね。その時は確認のため風呂場に突入したんだけどさ、舐めてみると確かにミネラルウォーターなのよ、でね、でね」
「イビキ隊長、落ちました」
「そうか。どの辺りで落ちた?」
「うみの中忍は肌からミネラルウォーターが出る、辺りからです」
「なんだ、大口叩いていたわりにはあっさりだったな」
「しかし不思議ですよね。はたけ上忍のノロケを聞かされた連中って全員、里への忠誠心とか任務とかどうでもよくなっちゃってペラペラ何でもしゃべりはじめますからね。あれも術の一つなんでしょうか?」
「いや、カカシはただノロケているだけだ。カカシのノロケがここまで破壊力を持っているとは意外だったが、我々には耐性がついているのだろうな」
「木の葉じゃ日常茶飯事ですからねぇ。でもはたけ上忍のノロケ、うみの中忍と会えない時間が長い程破壊力増しません?」
「そうだな、今度から厄介な尋問のある時にはうみのを隠すよう上に要請してみよう。上限一週間ってとこか」
「何故上限を?」
「ノロケの破壊力が大きすぎると相手が無気力になって使えん」
「あぁ、そうですね。うみの中忍不足すぎてはたけ上忍、目がどこかイッちゃいますもんね」
「あ、イビキ、今日はありがとねー」
「あぁ」
「なんかオレ、あの人とすっかり馬が合っちゃってさ、明日もおしゃべりしようって約束しちゃった。女子会ならぬ男子会?だから明日はお茶と軽食用意してよね」
「わかった。用意させよう」
「オレ、イルカ先生が出張しちゃってから寂しくって寂しくって任務にも気合い入んなかったんだけど、あの人とおしゃべりしてなんか元気でちゃった」
「そりゃよかったな」
「あの人もさ、もう自分の里とかすごいイヤんなったって、木の葉で暮らしたいっていってるし、イビキ何とかしてやってよ。やっぱ他里の人だからどうしても裏切り防止の術式を埋め込まなきゃいけないだろうけど、ソレ以外は普通に暮らせるようにさ、本人もガンガン裏切り防止策やって下さいって、むしろここで暮らせるなら本望って言ってるし」
「わかった。善処しよう」
「ありがとね。なんか最近オレ、気の合う友達増えたと思わない?これもイルカ先生のおかげだぁよね」
「あぁ」
「じゃね、イビキ、また明日ね」
「あぁ」
「やっぱり一週間ですね」
「一週間だな」
「え〜、統計によりますと、相手が嫌気さして投降してくるのが通常のノロケです」
「まぁ、こんなアホに殺されるのかって思うとな、死んでも死にきれんだろう」
「一週間以上うみの中忍と引き離したはたけ上忍のノロケを聞いた相手は完全に無気力状態になってしまいます」
「嫌気さしすぎて生きる気力まで奪われるんだろうな…」
「一週間前後が丁度いいですね。はたけ上忍の幸せオーラに引きずられるようで、この里で幸せに暮らしたいと願うようです。実際、そうやって投降した敵は皆、伴侶を得て勤勉に働いていますね。忍びはやめていますが、元々能力の高い者達ですから、里への貢献度は非常に高いです」
「……ほどんど『術』と呼んでもいいな、カカシのノロケは」
「それを成さしめるうみの中忍は本当に我が里に欠かせない人材ですねぇ」
「まったくだ。うみのの身辺警護、万全を期すように」
「承知しました。彼にかわる人材はいませんからね」
「実にうみのは我が木の葉にとって欠くべからざる男だ」
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