本性3

 

 


上忍師達が里に常駐するようになって二ヶ月、彼ら暗部出身者によって上位の忍び達の『本性』があらわになって一ヶ月、万事において適応力の高い受付職員たちは日常を取り戻していた。

約一名を除いては。


「あ、上忍師達だ」
「あの三人、今日も弁当なのな」
「最近、ずっとだよな。食堂で弁当食うの」
「あぁ、あれな、はたけ上忍とガイ上忍のキャラ弁勝負なんだと」
「食堂で居合わせた連中にキャラ弁勝負の判定させてる」
「でもさ、食堂にいるのなんて中忍か下忍だろ?
そんなどっちが勝ちとか言えるか?」
「だからずっと引き分け続きなんだろ」
「じゃあなんで猿飛上忍まで弁当なんだ?」
「紅上忍がな、木の葉新聞のインタビューで好きなタイプは旨い弁当を作れる男って答えたんだ」
「あ、それでがんばってんだ」
「でもまだここにいるってことは」
「報われてないって証拠だ」

 

「また引き分けか。さすがだな、我がライヴァル!」
「いやいやー、お前もがんばるよね。って、あーっ、ヤッベー」
「どうした、カカシッ」
「お箸忘れた。誰かー、割り箸持ってない?割り箸貸してー、貸してといって返さないけーどねー」

 

「出たよ、上忍ギャグ」
「本性出たよ」
「あっ、あれはっ」
「どうした」
「あれあれ」
「イルカだ」
「イルカが動いた」
「はたけ上忍に割り箸渡してんぞ」
「楚々とした態度だ」
「あっ、はたけ上忍にお礼言われてる」
「恭しく後ずさったぞ」
「礼儀正しいな」
「礼儀正しい」
「あいつ、文法の授業準備で頭沸いてたんじゃないの?」
「もう文法、終わった?」
「結構普通だしな、そうかもしれん」

 

「なぁヒラマサ、アカデミーって文法授業、終わったわけ?」
「え、まだやってるぞ」
「うそ、イルカまだ頭沸いてる?」
「なんだよ」
「いや、実は昼間食堂でさ」
「あ〜、ちょっと失礼」
「うわ、はっはたけ上忍」
「おっお疲れ様です、はたけ上忍」
「あ、いや、報告書じゃなくてね、イルカ先生いない?」
「イルカですか?今日は午後からアカデミー研修で里外に出てるんです」
「研修後、直帰ですからもうこっちには来ないかと」
「そう、困ったな」
「あの、イルカに何か?」
「うん、これ返そうと思ったんだけど」
「あっ、それは」
「昼間の割り箸」
「っつか、おてもとって書いた袋に塗り箸入ってるっ」
「ソレ、こないだイルカが和の国から取り寄せた超高級塗り箸だぞ」
「ええっ、そんな超高級塗り箸がなんで「おてもと」の袋に?」
「やっぱり高級品んだったんだ」
「え、はたけ上忍、それはどういう…」
「いやね、オレ、返さないけどねー、とか言っちゃったじゃないの」
「あぁ、おっしゃってましたね」
「まぁ、普通は使った割り箸、返したりしませんもんね」
「割り箸ならね。でもコレ、すごいお箸でしょ?金銀蒔絵だもの」
「うわ、ホントだ。螺鈿細工までしてある」
「で、返そうと思ったんだけどここにね、ほら」
「あっ、おてもとの袋にメッセージがっ」
「絶対に洗わないでください…だって」
「高級品だから特殊な洗い方があるのかなぁって。で、汚れ落ちが悪くなるから今日中に返そうと思ったんだけど」
「…………」
「……………」
「……………」
「あ、一応ね、水洗いはしたよ?さすがにそのままってわけにはいかないから」
「………いや、はたけ上忍、それは洗わない方がイルカ、喜んだと思います」
「あ、やっぱり洗ったらマズかった?いいお箸だもんね。弁償したほうがいいかな」
「いえ、弁償とかではなく、気持ちの問題というか」
「お気になさらず。イルカがバカなだけですから」
「え?」
「オレ達で返しておきます。はたけ上忍は何もお気になさることはありませんから」
「え?え?」
「アイツ、古典文法の授業に突入したんです。お気になさらず」
「え?え?え?」

銀髪の上忍の心に黒髪の中忍の存在が引っかかるようになったとかならなかったとか。


 
古典文法授業に突入してイルカ先生、ストレス増したようです。ストレスで中忍の本性が現れ始めたことを同僚達は悟ったようです。web拍手お礼画面ss。