銀色暗部さん試し読み
     
     
 


はたけカカシ、元暗部、可愛い人をみつけましたっ!

長年暗部に身を置き過酷な任務ばかりこなしてきたせいか、オレのイメージは怖いとか近寄りがたいとか、そんなもんばっかりだが、ホントはごくごく普通の男だ。
いや、どっちかというと人見知りでおとなしい男だと思う。みんなとワイワイできない質だからだろうか、オレは一人で店をまわって可愛い小物とか食器を集めるのが好きだ。たまに幼なじみのガイが買い物に付き合ってくれるが、たいていは一人でショッピングに行く。
まぁ、そんなオレでも夢とかあって、いつか可愛い人と運命の出会いをして恋人になって、そんでもって一緒にショッピングしてみたい。二人の部屋を可愛いモノで飾ったりペアカップとか揃えちゃったり…
そう、二つ名を持つビンゴブック常連なオレだけどホントのとこは夢みる可愛いもの好きなただの男だ。



そ んなオレだから暗部に在籍していても里に帰ったら雑貨屋巡り、もちろん、気に入ったものがあれば即 購入。なんたってオレは売れっ子暗部で、いつ呼び出しがかかるかわからない身だ。手に入れられる時に手に入れておかないと後で買いにこようなんて思ってい たら任務が入って里に戻れるのは数ヶ月後なんてことになる。任務後、急いでみつけた品を買いに走っても売れてしまって手に入らないなんてことがよくあった。取り寄せできるものならいいけど、一点物で売り切り御免な時の衝撃と悲しみといったら!
だから気に入ったものはその場で買う。幸い稼ぎだけは良かったから、好きなシリーズは大人買い、なんてこともしばしばだった。

そんなオレにも上忍師としての声がかかるようになり、この春、ようやくオレの試験を突破した子供達に出会えた。
それだけでも嬉しいことなのに、なに!この素敵な出会い!なんなの、この可愛い生き物は!
出会っちゃったよ運命の人と!


はじめまして
アカデミーで担任をしておりましたうみのイルカと申します


そう挨拶してきたのは黒髪を頭のてっぺんで一つくくりにした青年だった。
年格好はオレとそう変わらない、いや、オレよりガッチリ型で男くさいと思う。
なのにとっても可愛い!
いやもう、射抜かれたっていうの?
おっきくてキラキラした黒い目、ぽってりおいしそうな唇、よくみたら整った顔立ちなのにどこかもっさり感の抜けない空気、まるまっちくて幅広な手、どこをとってもオレ好み!一目惚れ!フォーリンラブ!ディスティニー!要は恋しちゃったってこと!

あるんだねぇ、奇跡みたいな出会いって。イチャイチャシリーズの中だけかって思ってたよ。
でもそーじゃなかった。運命の輪が回り始めたって感じ?

うみのイルカ

名前もいいよねー。名は体を表すってね、かっわいいの。イルカだよイルカ。名前までオレ好みってホント、運命だぁよね?

下忍を育ててるオレは毎日受付所で任務書を受け取り報告書を出す。そこにね、オレのハニーがいるわけよ。アカデミーの先生だけど受付も兼任してるんだって。だから毎日!オレはハニーと言葉をかわす。ハニーは快活な声でお疲れ様って言ってくれるのね。腰くだけそうよ。
あぁ!もーそんなくるくるした目で見つめちゃダメでしょ。襲いたくなっちゃうじゃない!
こんな大人しくて草食忍者なオレが暴走しそうになるんだから罪な人だよねっ!キューキュー鳴かせたくなっちゃうよねっ。

ってわけでオレはこの可愛い人を手に入れるべくリサーチを始めたのだった。



うみのイルカ25才、現在恋人募集中、だそうだ

っしゃーっ!

募集されちゃおうじゃないのっ

お付き合いに向けての第一歩は何かっていうと、やっぱり相手の嗜好を調べて己を売り込むことだよね。

え、イルカ先生、それがお好きなんですか?奇遇ですね、オレもなんです、なーんて会話をとっかかりに付き合いを深めて、そして告白、オーケーでるでしょ?それからデートを重ねて、わぁ、カカシさんってオレのこと、何でもわかってるんですねーってますます惚れてもらえること請け合いよ。順調にお付き合いして一ヶ月後には初ちゅー、三ヶ月後にベロちゅー、半年後同棲で決まりだぁね。


「先輩、告白して断られるって選択肢はないんですか?」
「うぉっ」

突然隣から声がした。後輩のテンゾウだ。

「なんなのお前、やぶからぼうに」
「そのイルカ先生ですか?先輩の好きな相手って」
「ちょっ、なななんでイルカ先生ってっ」

きゃ〜、コイツなに?なんでオレの心の声を?特殊能力でも目覚めたわけっ?

「もしかして先輩、今までしゃべってたのって頭の中だけのつもりだったんですか?」
「えっ、オレ、口に出してたの?」
「そりゃもう、部屋全体に響く声で」
「うそっ」
「僕はてっきりしゃべりかけられてると思ってました。どうりで相槌うっても反応薄かったわけだ」
「えええっ」

オレは辺りを見回した。暗部の後輩やら同期やらがヒラヒラとオレに向かって手を振る。そう、暗部を抜けてはいるがオレはいまだに暇な時間はここ、暗部待機所でぐだぐだすることが多かった。だって上忍待機所って知らない人ばっかりなんだもん。知ってるのはアスマとかガイとか紅だけだし、だってね、なんかオレが待機所に入るとみんなの雰囲気変わるんだよ。オレって嫌われるタイプなのかなぁ。

「写輪眼のカカシが何言ってんスか」
「一般の上忍じゃ先輩に会ったら緊張しますって」

あれ、また声に出ていたみたい。ワラワラと部屋にいた連中が寄ってくる。

「カカシはこれで結構人見知りだからな」
「え〜、マジっすか?見えねぇ」
「あんなにふてぶてしいのに?」
「オレが先輩のとこに初めて配属された時なんかすげー怖かったのに」
「そーそー、寡黙で側に寄れない感じで、これが暗部かーって緊張しましたもん」
「君達、人見知りの先輩が最初っからペラペラしゃべると思う?」
「寡黙なんじゃなくて人見知りで緊張してたんだよなぁ、カカシ。だいたい、コイツが十歳だったか、入隊した時なんざな」
「わーわーわーわー」

オレは思わず古参の男の口を塞いだ。この男は入隊した時からの付き合いでオレの恥ずかしい話を一杯知っている。まぁ、それだけ面倒みてもらったわけなんだけど。

「オレのことはいいから、お前ら、話聞いたなら協力する気あんの?ないの?」
「「「もっちろん、協力させてくださーい」」」」

なんでお前ら、そんなキラキラして楽しそうなわけっ?

「そうか、あの小さかったカカシが恋をなぁ」

そこ涙拭かないっ、っつかオレもうすぐ二十七だからねっ

ともあれ暗部が協力してイルカ先生の嗜好調査してくれることになった。オレとしては結果オーライだからまぁ、いいんだけど。チキンなオレはイルカ先生のお住まいを覗く勇気がないので、部屋を調査して女の影がないかどうかの確認も頼んだ。


 
  銀色暗部さん、途中です。この辺りから日記に書いたのとガラリと変わります。これの前もかなり文章は直したんですが、展開は一緒。カカシさんの部分から全く別物になります。